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ビデオ会議 & 非同期ミーティングツール 2026 — Zoom / Google Meet / Teams / Loom / Granola / Read.ai / Fathom / Jitsi 徹底比較

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プロローグ —「会議室」という言葉が意味を半分失った年

2020年初頭、全員が突然 Zoom をインストールした。それ以前は会議室に集まっていた。2026年5月の今、「会議室」という言葉は半分死んでいる。

その代わりに置かれたのは4種類のツール群だ。

  • リアルタイム動画: Zoom、Google Meet、Microsoft Teams、Webex
  • カジュアル音声 / 短い通話: Slack Huddles、Discord、Around
  • 非同期動画メッセージ: Loom(Atlassian が $975M で買収)、Tella
  • AIノート / 文字起こし: Granola、Read.ai、Otter.ai、Fathom、MeetGeek、Krisp Notes

そしてこの4種類の上に、さらに 営業コール・インテリジェンス(Gong、Avoma、Chorus.ai)、オープンソース / ブラウザ系(Jitsi、BigBlueButton、Whereby、Wire)、ハードウェア(Plaud Note)、日本・韓国ローカルツール(V-CUBE、カカオワーク Meet、NAVER Works Meet)が積み重なっている。

本稿はこの地図を一度に見せる。どのチームがどのツールを選ぶべきか、何が消えて何が伸びているか、そして2026年のミーティング文化がどう再編されたか。


第1章 · 2026年ミーティングツール地図 — 4 + 3 分類

ミーティングツールを一括りにするのは難しい。まずカテゴリを整理しよう。

[リアルタイム・ビデオ会議]
   Zoom · Google Meet · Microsoft Teams · Webex · GoToMeeting
   |
   +-- エンタープライズ(Teams/Webex)、SMB(Zoom)、消費者・教育(Meet)

[カジュアル音声 / 短い通話]
   Slack Huddles · Discord Stage · Around · Huddle系
   |
   +--「会議を予約せず、5分だけつなぐ」

[非同期ビデオメッセージ]
   Loom · Tella · Vidyard · Bubbles
   |
   +--「これは会議じゃなくて動画メモ」

[AIノート / 文字起こし]
   Granola · Read.ai · Otter.ai · Fathom · MeetGeek · Krisp Notes
   |
   +-- 別途ボット vs ノートPCローカル取得

[営業コール・インテリジェンス]
   Gong · Chorus.ai (ZoomInfo) · Avoma
   |
   +--「この通話には売上が懸かっている」級

[オープンソース / ブラウザ / セキュリティ]
   Jitsi Meet (8x8) · BigBlueButton · Whereby · Wire Meet
   |
   +-- セルフホスト、教育、セキュリティ重視

[ハードウェア / ローカル]
   Plaud Note · V-CUBE · カカオワーク Meet · NAVER Works Meet

1つの会議が複数のカテゴリを同時に通過するのが普通だ。Zoom で入って、Granola がメモを書いて、Slack Huddle で素早く繋いで、結果を Loom 動画で不参加者に共有する — これが2026年の平均だ。


第2章 · Zoom + AI Companion — 依然としてリーダー

Zoom は2025年も第1位だったし、2026年現在も第1位だ。ただし1位の意味は変わった。

Zoom AI Companion(2023年9月リリース、当初は「Zoom IQ」)が有料プランに無料同梱されたことで、Zoom は「ビデオ会議アプリ」から「会議OS」へとポジションを移した。

項目内容
リリース2023年9月(AI Companion)
価格戦略有料 Zoom Workplace に無料同梱 — 追加料金なし
機能リアルタイム要約 · 議事録 · アクションアイテム · チャット要約 · メール下書き · ホワイトボード生成
企業Zoom Video Communications, Inc.(NASDAQ: ZM)
市場シェアグローバル・ビデオ会議で約55%(Gartner 推定)

なぜ依然リーダーか

  • 品質の一貫性: ネットワークが揺れても Zoom が最も安定している。ビデオコーデック(H.264、AV1 対応)、パケット損失復旧、適応ビットレートが最も成熟。
  • AI Companion の「同梱」戦略: Otter や Fathom のように別途課金する必要がない。会議開始と同時に「Summarize the meeting so far」の一言で終わる。
  • Zoom Phone: Zoom はもはや会議アプリではない。Zoom Phone(VoIP)、Zoom Team Chat(Slack 競合)、Zoom Whiteboard、Zoom Mail まで — Workplace 一束にまとめた。
  • Zoom Rooms: ハイブリッド会議室ハードウェア市場も押さえた。

短所 / 変化

  • Workplace リブランドの混乱: 2024年に「Zoom Workplace」へ名称変更したことで既存ユーザーが混乱。
  • AI Companion 2.0(2024年末発表) — 他の会議を検索して答える機能が増えたが、「自分の会議映像が学習に使われるのか」という懸念がついて回る(Zoom は「顧客データは学習に使わない」と明記)。
  • エンタープライズでは Teams に押される事例が増加。

誰が選ぶべきか

  • 外部ミーティングが多い会社(クライアントコール)
  • 速く安定した会議が最優先の SMB
  • AIノートを別途課金せずに使いたいチーム

第3章 · Google Meet(Workspace + Gemini)

Google Meet は2020年に Hangouts Meet からリブランドされて以来、Google Workspace の標準会議ツールとして定着した。

項目内容
企業Google LLC(Alphabet)
ネイティブ統合Workspace 全体 — Calendar、Gmail、Drive、Docs
AI機能Gemini ベースの文字起こし、「take notes for me」、自動要約
価格Workspace プランに同梱(Business Starter $7/user/month から)

強み

  • Calendar / Gmail 統合が深い: 会議を予約すれば自動で Meet リンク。Gmail で「この会議どうなった?」と聞けば Gemini が要約を持ってくる。
  • ブラウザだけで動作: インストール不要。外部ゲスト招待が最も簡単。
  • Gemini 統合: 2024年から Workspace Business 以上に Gemini が統合され、会議中に「summarize what was just said」などのコマンドが自然に通る。
  • 「Take notes for me」: 会議終了後に Google Doc に自動でまとめられる。

短所

  • 外部ユーザーには Zoom ほど馴染みがない。
  • ブレイクアウトルーム、同時通訳、高度なウェビナー機能は Zoom に劣る。
  • AI機能は Workspace Business Standard 以上でのみ解放。

誰が選ぶべきか

  • すでに Google Workspace を使う会社(別途課金不要)
  • 学校 / 教育機関(G Suite for Education)
  • 外部ゲストが多く「リンクをクリックするだけ」が重要なチーム

第4章 · Microsoft Teams — エンタープライズ標準

Teams はもはや「Microsoft 365 のおまけ」ではない。2026年現在、エンタープライズでは最も普遍的な会議 + チャット + コラボ・プラットフォームだ。

項目内容
企業Microsoft Corporation
統合M365 全体 — Outlook、OneDrive、SharePoint、Office、Loop
AIMicrosoft Copilot for Teams — 会議要約、「この質問に答えて」、アクションアイテム
価格M365 Business Basic 6/user/monthから、Copilotは別途6/user/month から、Copilot は別途 30/user/month

2024-2025 の変化

  • EU/EEA で Teams を M365 から分離: EU 反トラスト調査後、Microsoft は2024年に Teams を M365 ライセンスから分離して別売開始(EU は2023年、全世界は2024年4月)。
  • Copilot for Teams: 会議の文字起こしの上で動作 — 「John は何と言った?」「決まったことは?」に即答。
  • Microsoft Loop 統合: 会議で生成された決定 / タスクが Loop ページに自動整理。

強み

  • エンタープライズIT互換性: Active Directory、Intune、Conditional Access、DLP、eDiscovery — IT部門が欲する制御機能が全部入っている。
  • チャネル型協業: Slack と異なりチャネルが SharePoint サイトと1:1対応。ファイルガバナンスが強い。
  • 会議後アクションの統合: 会議で生成されたタスクが Planner / To Do に流れる。

短所

  • 重い。UIが複雑で、クライアントのメモリ使用量が大きい。
  • 外部ゲスト招待のフローが依然ぎこちない。
  • Copilot は別途ライセンスが高い($30/user/month)。

誰が選ぶべきか

  • すでに M365 を使うエンタープライズ
  • 規制産業(金融、医療、政府)
  • チャネル + ファイル + 会議を1つのツールにまとめたい IT チーム

第5章 · Slack Huddles + Discord Stage — カジュアル音声

会議ではない会議。「5分だけ繋いで話そう」の領域。

Slack Huddles

2021年リリース後、急速に定着。2026年現在 Slack ユーザーなら会議を予約せずチャネル / DM のヘッドフォン・アイコンを一度押すだけで音声通話が始まる。ビデオ、画面共有、そして2024年から AI 要約(「Huddle summary」)まで付いた。

  • 長所: Slack 内部で完結。外部ツールを経由しない。
  • 短所: Slack 有料プランが必要。外部ゲストとは使えない(ワークスペース内部専用)。

Discord Stage Channels / Voice Channels

Discord は当初はゲーマー向けツールだったが、2026年現在は開発者コミュニティ・OSSプロジェクト・クリエイターコミュニティ・学習グループの標準音声ツール。

  • Voice Channels: 入れば即音声 — 会議を「予約」しない。
  • Stage Channels: スピーカー / リスナー分離。パネル、AMA、トークに最適。
  • Activities: YouTube Watch Together、Among Us ミニゲーム、ホワイトボード。
ツール向いている状況
Slack Huddles社内 1:1 / 小規模協業
Discord Voiceオープンコミュニティ、常時オンの音声部屋
Discord Stageトーク・パネル・AMA

第6章 · Around / Mmhmm — 小チーム狙いも厳しい道

2020-2021年のパンデミック狂騒の中、「Zoom は形式的すぎる / 重すぎる」を掲げる後発組がいた。

Around(2020-)

  • 顔をクロップして小さな円形動画に — 画面スペースを節約
  • ノイズキャンセル強力
  • 「small group, focused work」コンセプト
  • 2021年シード以降、大型ラウンドなし — 2026年現在ユーザー基盤が頭打ち

Mmhmm(2020-、Phil Libin / 元 Evernote CEO)

  • 仮想カメラ — 発表スライド + 発表者が同一フレームに
  • 非同期ビデオメッセージにも対応
  • 2021年 $35M シリーズBの後資本圧力、2023年に大規模レイオフ
  • 2026年現在も存続 — 一部の発表者 / マーケター層には愛されるがメインストリーム進入は失敗

教訓: 「Zoom 代替」だけではビジネスモデルが弱い。会議市場はネットワーク効果 + エンタープライズIT統合が決定打。


第7章 · Loom(Atlassian、$975M)— 非同期ビデオの標準

Loom は2025年も非同期ビデオメッセージの事実上の標準だ。そしてもはや独立会社ではない。

項目内容
買収2023年10月、Atlassian が $975M で買収
用途画面録画 + 顔 — 5分の動画を「会議の代わりに」送る
統合Jira、Confluence、Trello、Slack、Linear
AI機能自動チャプター、文字起こし、要約、自動翻訳字幕

なぜ標準になったか

  • 録画が1クリック: ブラウザ拡張 / デスクトップアプリ / モバイル、どこからでも。
  • 共有リンクが即時: 録画終了時点でクリップボードに URL が入っている。
  • 文字起こし + チャプター: 視聴者が動画全体を見ずに要点を掴める。
  • Atlassian 連携: 2024-2025年で Jira イシューに Loom 動画が埋め込まれる流れが加速。

なぜ非同期ビデオが重要か

会議を予約するコスト — 日程調整、30分単位の消費、時差 — は高い。Loom は「この説明は5分の動画で十分」というケースを救う。

  • コードレビュー: 変更意図を5分動画で
  • デザイン・ハンドオフ: Figma の上で動画で説明
  • 採用 / オンボーディング: 同じ動画を100人に送る
  • 分散チーム: 非同期で進める — 韓国チームが寝る前に録画 → 米国チームが起床後に視聴

短所

  • 無料プランが25動画、5分上限に縮小(2022年)。
  • Atlassian 統合後、価格上昇。

第8章 · Tella — Loom 代替

Loom が事実上の標準だが、「録画後の編集」をもっと綺麗にしたいユーザーには Tella が人気。

項目内容
企業Tella(独立)
差別化ブラウザベース録画 + 複数クリップ編集(タイムライン)+ 背景 / レイアウト・テンプレ
用途マーケティング動画、チュートリアル、デモ、コース・コンテンツ
価格$19/month から

Loom が「録画して送る」が本質なら、Tella は「録画 + 編集してコンテンツにする」だ。YouTube 動画、コース講義、デモ動画により適する。


第9章 · Granola — 2024年AIノート新星

2024年に最も話題になった AI ノートツールが Granola だった。

項目内容
リリース2024年5月(ロンドン / SF 拠点)
シード / シリーズA2024年5月、$20M シリーズA — Spark Capital リード
差別化「会議ボット」なし — ノートPCで直接オーディオ録音 + AI 整理
OSmacOS 優先、Windows はベータ
価格無料 25回/月、Pro $18/month

なぜ爆発したか

既存の AI ノートツール(Otter、Read.ai)は会議に「ボット」が入った。「Read.ai is joining the meeting」のような通知が他参加者にも見えた。雰囲気を壊すという不満が多かった。

Granola はノートPCで直接システムオーディオを取得する。ボットが会議に入らない。他人は気付かない。

  • 自分の短いメモ + AIが聞いた文字起こしを組み合わせて、会議後に整理されたノートを生成。
  • macOS ネイティブ — 速くて軽い。
  • Notion / Slack / Linear / HubSpot 統合: ノートを1クリックで送る。

短所

  • 自分のノートPCでしか動かない — 会議に参加できなければノートも得られない。
  • Windows 対応が遅れた(2025年にようやくベータ)。
  • 他参加者の同意なき録音という倫理問題(カリフォルニアなど両当事者同意州では法的にも問題になり得る)。

誰が選ぶべきか

  • 1人 / コンサル / 単独 PM
  • 「ボットなし」会議を好むチーム
  • Notion / Linear / Slack ベースのワークフロー

第10章 · Read.ai / Otter.ai / Fathom / MeetGeek — AIノート競争

Granola がノートPC直接取得なら、こちら側は ボットが会議に入る 方式。それぞれ違う強みがある。

Read.ai

  • 2021年シアトル発、2023年に $21M シリーズA
  • 会議の「センチメント」「エンゲージメント」などメタ分析が強み
  • 会議ボット + Slack / Teams チャットの文字起こしまで対応
  • 価格: 無料 5 ミーティング/月、Pro $19.75/user/month

Otter.ai

  • 2016年リリース、AI文字起こしの元祖
  • Zoom / Google Meet / Teams すべてに対応のボット統合
  • Otter AI Chat — 会議後に「決まったことは?」とクエリ
  • 価格: 無料 300分/月、Pro $10/month
  • 強み: 精度 + 検索可能アーカイブ

Fathom

  • 2020年リリース、「free forever for individuals」ポリシーで人気
  • Zoom 統合が最もスムーズ
  • AI 要約、アクションアイテム、CRM 統合(Salesforce / HubSpot)
  • 個人ユーザーには事実上無料 — Team プランは $24/user/month

MeetGeek

  • 欧州拠点(ルーマニア)、2020年リリース
  • 会議後の「コンテンツライブラリ」 — 全会議を検索可能な資産に
  • 営業 / RevOps カラーが強い
  • 価格: 無料 5 ミーティング/月、Pro $19/month

Krisp Meeting Notes

  • Krisp(ノイズ除去)にノート機能を追加
  • ボットなしのローカル取得(Granola 類似)
  • Krisp Pro ユーザーには追加料金なし

比較マトリクス

ツールボット個人価格強み
Granolaなし(ローカル)Pro $18/monthmacOS、クリーン、ノートPC取得
Read.aiありPro $19.75/monthセンチメント分析
Otter.aiありPro $10/month精度、検索
Fathomあり個人無料Zoom 統合、無料
MeetGeekありPro $19/monthコンテンツライブラリ
Krisp Notesなし(ローカル)Krisp Pro に同梱ノイズ除去 + ノート

第11章 · Krisp — ノイズ除去の標準

Krisp は会議ツールではなく、会議を 改善する ツールだ。AI でノイズ / エコーを除去。

項目内容
リリース2017年
差別化仮想マイク — Zoom / Meet / Teams どのアプリでも動く
追加機能メモ / 録音 / 要約(Krisp Notes)
価格無料 60分/日、Pro $8/month

なぜ依然価値があるか

リモート + カフェ + 家族のいる家 + 犬 — ノイズの源は減らない。Zoom、Meet、Teams もそれぞれノイズキャンセルを強化したが、Krisp のモデルは依然として一枚上手という評価が多い。

特にコールセンター / BPO / 営業チームでは Krisp が標準ツール。2024-2025年にコールセンター市場で急速にシェアを伸ばした。


第12章 · Whereby / Jitsi / BigBlueButton / Wire — オープンソース・ブラウザ・セキュリティ

エンタープライズではない用途 — 教育、コミュニティ、セキュリティ重視 — には別の選択肢がある。

Whereby

  • ノルウェーの Telenor 傘下
  • ブラウザだけで動作 — インストール不要、リンクをクリックで入室
  • 埋め込み API: 自社アプリにビデオルームを埋め込める(テレヘルス、コーチング・アプリで人気)
  • 価格: 無料(2人)、Pro $8.99/user/month
  • 強み: 軽量、埋め込み可能、外部ゲスト摩擦低

Jitsi Meet(8x8)

  • オープンソース(Apache 2.0) — meet.jit.si は公開無料サービス
  • セルフホスト可能 — 社内に立てられる
  • 2018年に Atlassian から 8x8 に売却
  • 強み: 無料、データ主権、起動が速い
  • 短所: 大規模会議(50人以上)の安定性、AI機能不足

BigBlueButton

  • オープンソース教育特化
  • ホワイトボード、出席、ポール、ブレイクアウトルームが強力
  • Moodle、Canvas、Schoology などの LMS と統合
  • 2020-2021パンデミック期に広く採用、2026年現在も大学 / K-12 で広範
  • セルフホストが基本(サーバー運用が必要)

Wire Meet

  • エンドツーエンド暗号化 — メッセンジャー Wire の会議機能
  • 欧州拠点(スイス / ベルリン)、GDPR フレンドリー
  • 政府 / 法務 / セキュリティ・コンサルで採用
ツールライセンス強み短所
Whereby商用ブラウザ、埋め込み可大規模会議に不向き
Jitsi MeetApache 2.0無料、セルフホストAI機能弱い
BigBlueButtonLGPL教育特化、ホワイトボードセルフホスト必要
Wire Meet商用(オープンソース・クライアント)E2E 暗号化ユーザー層狭い

第13章 · Webex / GoToMeeting / BlueJeans(RIP)— エンタープライズ

レガシー・エンタープライズ会議ツール群。かつての市場の主。

Cisco Webex

  • 1995年スタート、2007年に Cisco が $3.2B で買収
  • 依然として大企業、政府、通信事業者で強い
  • 2024年から Cisco AI Assistant が Webex に統合 — 会議要約、リアルタイム翻訳
  • 「Webex Suite」— Calling、Messaging、Meetings、Devices 一括
  • 短所: UI / UX が Zoom / Teams より劣るとの評価、新規ユーザーには馴染みが薄い

GoToMeeting(GoTo)

  • LogMeIn 時代から — 2022年に GoTo へリブランド
  • 中小企業 + ウェビナー市場
  • 2026年現在の市場シェアは微少、命脈維持中

BlueJeans by Verizon — RIP 2024年3月

  • 2009年スタート、2020年に Verizon が約 $400M で買収
  • 2024年3月に終了 — Verizon が2023年11月に事業撤退を発表
  • 「通信事業者がビデオ会議を買収するとうまくいかない」の教科書的事例

Verizon の BlueJeans 買収(2020)は、コロナ直後のビデオ会議狂騒の頂点で起きた。4年後に市場は Zoom / Teams / Meet の3強体制に固まり、BlueJeans は差別化に失敗した。

エンタープライズでも Zoom と Teams が定着していくにつれ、Webex 以外のレガシーは徐々に居場所を失っている。


第14章 · Avoma / Gong / Chorus.ai — 営業コール・インテリジェンス

営業コールは普通の会議と違う。売上に直結するからだ。それゆえ別カテゴリが生まれた — Conversation Intelligence

Gong

  • 2015年リリース、2021年に 250MシリーズE—バリュエーション250M シリーズE — バリュエーション 7.25B
  • 営業コール録音 + AI 分析 — 「どの単語がクローズと相関?」「トップ営業はどう話すか?」
  • Salesforce / HubSpot / Outreach 統合
  • 価格: 非公開(通常 $1,200/year/user+ から)

Chorus.ai(ZoomInfo)

  • 2017年リリース、2021年に ZoomInfo が $575M で買収
  • Gong に類似の機能、ZoomInfo のデータと結合
  • B2B 営業インテリジェンスの統合バンドルの一部

Avoma

  • 2018年リリース、より軽量な SMB 向け代替
  • 会議ノート + インテリジェンスを統合
  • 営業だけでなく CS、コーチングにも使用
  • 価格: 無料プランあり、Pro $24/user/month

何が違うか

普通の AI ノートツール(Otter、Granola)は「会議を記録する」。営業コール・インテリジェンスは「ディールを診断する」。

  • どの時点で talk-to-listen 比率が崩れたか
  • いつ価格の話を切り出したか
  • 競合の名前が何回出たか
  • 次のアクションが固まったか
  • ディール・ステージが正しく更新されたか

営業マネージャーはこのデータでコーチングする。だから価格帯は一般ノートツールの10倍以上だ。


第15章 · Plaud Note — ハードウェア AI ノート(2024 話題)

ソフトウェア中心の領域に、突然ハードウェア1点が割り込んだ。

項目内容
リリース2023年末、2024年に爆発
企業Plaud(北京 / 東京)
形状クレジットカード厚のデバイス — マグネットで iPhone の背面に貼り付く
機能一度押せば録音 → クラウドアップロード → 文字起こし + 要約
価格ハードウェア約 159、サブスク159、サブスク 9.99/month から

なぜ伸びたか

  • オフライン会議も捉える — カフェで、会議室で、ランチで。
  • ボット問題なし — デバイスが聞く。
  • 物理ボタン: アプリ起動も録音タップも不要。一押し。
  • iPhone 背面に貼る設計: 自然に持ち歩ける。

2024年を通じてベストセラー・ガジェット・リストに頻出。日本 / 韓国でも並行輸入または正規流通で急速に広がった。

短所 / 懸念

  • 他人の同意なき録音の倫理 / 法的問題(特に両当事者同意州で)。
  • クラウド依存 — 機密性の高い社内会議には不適。
  • バッテリー、紛失リスク。

競合

Plaud の成功を受けて Limitless Pendant、Bee AI、Friend など各種 AI ウェアラブルが続いた。2026年現在、カテゴリが定着するかは未確定。


第16章 · 韓国 / 日本 — カカオワーク Meet、NAVER Works Meet、V-CUBE

韓国

  • カカオワーク Meet: カカオのコラボツール内蔵の会議機能。中小企業、カカオ生態系ユーザー。
  • NAVER Works Meet: NAVER WORKS(旧 LINE WORKS)内蔵。日本・韓国の SMB に人気。
  • 大企業: 大半は Microsoft Teams または Zoom が標準。セキュリティ重視は Webex または閉域網会議ツール。
  • 通信事業者(KT、SKT)自社の会議ソリューションもあるが市場影響力は小さい。

日本

  • V-CUBE: 日本国産ビデオ会議の第一世代。1998年設立、2008年上場。政府 / 大企業 / 金融で採用。
  • NTT Stadium: NTT 運営のメタバース + 会議結合プラットフォーム。
  • LINE WORKS Meet: LINE(現 LY Corp.)のコラボツール — 韓国・日本・東南アジアの SMB に普及。
  • Zoom と Teams: 日本も外資系企業、IT 企業を中心に標準化が進む。

ローカルツールが生き残る理由

  • データ主権(政府 / 金融が国内サーバを要求)
  • 日本語 / 韓国語の音声認識精度(Otter は英語中心)
  • 既存協業エコシステムとの統合(KakaoTalk、LINE)
  • 政府 / 公共調達要件

第17章 · 誰が何を選ぶか — シナリオ別

1人 / フリーランス / コンサル

  • 会議: Google Meet(Workspace 使用時)または Zoom 無料
  • ノート: Granola(macOS)または Fathom(無料)
  • 非同期動画: Loom 無料または Tella
  • ノイズ除去: Krisp 無料

スタートアップ(10-50人)

  • 会議: Zoom Workplace Pro + AI Companion
  • チャット: Slack + Huddles
  • ノート: Granola Pro または Fathom Team
  • 非同期: Loom Business
  • 営業コール(該当時): Avoma または Gong(シリーズB以降)

エンタープライズ(500+)

  • 会議: Microsoft Teams + Copilot または Zoom Enterprise
  • ノート: AI Companion / Copilot 内蔵が優先、補完で Otter Business
  • 非同期: Loom Enterprise(Atlassian バンドル)
  • 営業: Gong(標準 / Salesforce 連携)
  • セキュア会議: Wire Meet または Webex Suite

教育 / 大学

  • 会議: Google Meet(G Suite for Education)または BigBlueButton(セルフホスト)
  • 録画 / 講義: Panopto / Loom
  • 出席 / ポール / ホワイトボード: BigBlueButton

営業 / RevOps チーム

  • 会議: Zoom(外部ミーティング標準)
  • コール・インテリジェンス: Gong(大規模)または Avoma(中小)
  • ノート / CRM 自動入力: Fathom + HubSpot または Gong 内蔵

オープンソース / プライバシー優先

  • 会議: Jitsi Meet(セルフホスト)
  • ノート: Krisp Notes またはローカル Whisper
  • 非同期: Tella(ブラウザベース)

決定マトリクス一覧

優先度推奨
安定性 / 外部ミーティングZoom + AI Companion
Workspace 統合Google Meet + Gemini
エンタープライズ IT 統制Microsoft Teams + Copilot
オープンソース / セルフホストJitsi Meet
教育BigBlueButton
非同期動画Loom
AI ノート(ボットなし)Granola
AI ノート(無料 / Zoom 統合)Fathom
営業コール分析Gong(Enterprise)/ Avoma(SMB)
ノイズ除去Krisp
オフライン会議録音Plaud Note

第18章 · 未来 — 2026 以降

最後の一章。今後1-2年で何が変わるか。

  • 「会議ボット」時代の終わり? Granola、Krisp Notes のようなローカル取得ツールの成功で、ボットが会議に入るモデルが煙たがられつつある。Zoom / Meet / Teams は結局、ボットなしで自分の会議を自分で自動整理する方向へ進むだろう。
  • AI 会議エージェント: 会議後の要約だけでなく、会議前の議題準備 + 会議中の自動アクション取得 + 会議後の自動フォローアップまで。Microsoft Copilot が最速でその方向に向かっている。
  • ハードウェア・カテゴリの検証: Plaud Note の成功が一過性か(スマートウォッチのように定着するか)は2026-2027年で決まる。
  • レガシーの追加整理: BlueJeans のように GoToMeeting も危うい。Webex は Cisco が維持する限り生き残るが、市場シェアは漸減。
  • ローカルツールの再起: データ主権、AI 学習懸念、国別規制強化で V-CUBE / NAVER Works / カカオワークのようなローカルツールが SMB 領域で再び勢いを得る可能性。

会議の形は変わり続ける。しかし核は変わらない — 人々が集まって決定を下し、その決定が行動に繋がる。ツールはその間の摩擦を減らす役割だ。2026年のツール群はその摩擦を — ボット、ノート、動画メッセージ、自動要約を通して — かつてないほど減らした。そしてその間のどこかで、我々は今でも60分の会議を予約するのに30分の日程調整をしている。


参考 / References