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パーソナル CRM ツール 2026 — Folk / Clay (AI Series B) / Dex / Monica OSS / Sortd / Streak / Attio / HubSpot / Salesforce / Pipedrive / Sansan 徹底ガイド

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プロローグ — 2026 年、「私の人脈」が資産になる時代

「CRM を入れるべきか?」 — 2020 年なら、この質問は営業組織だけのものだった。2026 年現在、ソロ創業者・フリーランス・インフルエンサー・VC・営業個人まで、人と関わる誰もが一度は真剣に考える。「Notion ページに連絡先を書いておく」のと「ちゃんとした CRM を使う」の ROI の差が明確になったからだ。

理由は 3 つある。

第一に、AI ファーストのコンタクト enrichment が可能になった。Clay が筆頭。メールアドレスを 1 つ投げるだけで、LinkedIn・会社サイト・ニュース・ファンディングデータまで自動で埋まる。手作業でコンタクトリストを整える時代は終わった。

第二に、social GTM motion が標準になった。営業はもうコールドコールではなく、LinkedIn DM・ニュースレター・Twitter の関係から始まる。チャネルが増えると自動的にコンタクト管理は難しくなり、結局 CRM が必要になる。

第三に、パーソナル CRM とビジネス CRM の境界が消えた。Folk・Attio のようなモダン CRM はソロでもチームでも適応する。Dex・Monica のような「関係 CRM」はプライベートな関係まで扱う。Salesforce は依然エンタープライズの正統だが、その下のレイヤーが多様化した。

本稿は 2026 年 5 月時点の 17 のツールを 1 ページで比較する。誰が何を選ぶべきか、そして韓国・日本のローカル文脈はどう違うかまで。


1. 2026 年パーソナル CRM 地図 — 4 分類

まず風景を整える。ツールはおおむね 4 つに分かれる。

分類定義代表ツール
インディ / 関係 CRMプライベートと専門の関係を軽量に管理Dex、Monica、Cloze、Clay (個人モード)
モダン SaaS CRMUX が美しく小規模チームに合うFolk、Attio、Pipedrive、HubSpot CRM (無料)
エンタープライズ / 正統大規模営業組織、ヘビーなワークフローSalesforce Sales Cloud、Microsoft Dynamics、Oracle CX
セルフ / OSS自前で作る・セルフホストNotion as CRM、Airtable as CRM、Monica OSS

分類は壁ではない。Folk はソロでも使えるし 8 人のチームでも使える。HubSpot CRM Free は 1 人でも 100 人でも使える。重要なのは「このツールがうまく解く問題が自分の問題か」 だ。

4 つの質問で絞り込む。

  1. 1 人で使うかチームで使うか? 1 人なら軽量、チームなら権限とロール管理。
  2. 目的は営業か、関係維持か? 営業ならパイプラインと deal、関係維持なら reminder と last-touched。
  3. メインチャネルはメールか? Gmail なら Streak・Sortd・Mixmax が強い。外部 CRM は同期摩擦がある。
  4. enrichment が必要か? B2B アウトバウンドなら Clay・Apollo・ZoomInfo。プライベートな関係なら不要。

この 4 問に答えるだけで、17 ツールが 3-4 個に絞れる。あとはトライアル。


2. Folk — 2024 年シリーズ B、モダン CRM の新鋭

Folk はパリ拠点のスタートアップで 2024 年にシリーズ B を調達した。「Notion の優雅さを持った CRM」という評が当てはまる。ベース価格は 1 シート月 20 ドル前後、無料トライアルあり。

強み:

  • UX が本当に美しい。ページビルダーのような自由度でコンタクトのビューを作れる。
  • Folk X (Chrome 拡張) — LinkedIn・Twitter・Gmail からコンタクトをワンクリックでインポート。
  • AI 機能 — メール下書き、コンタクトの要約、自動 enrichment。
  • 直感的なパイプライン — Trello 風ボード、deal ステージのカスタマイズ。
  • Gmail・Outlook 双方向同期。

弱み:

  • 大きな営業組織には不足 (権限・レポートが軽い)。
  • 絶対値としては安くない (シード単独創業者には負担)。
  • enrichment の深さは Clay には及ばない。

向いている人:

  • 1-10 人チームの営業・BD 担当。
  • VC・創業者 (ポートフォリオ会社・LP 管理)。
  • コンサル (クライアントの lifecycle 管理)。

Folk は「Salesforce は重く、スプレッドシートは貧弱」というミドルマーケットの隙間を正確に突く。


3. Clay (Kareem Amin) — Series B 2024、AI ファースト enrichment の征服者

Clay は 2024 年シリーズ B を調達し、創業者の Kareem Amin が AI ファーストのデータ enrichment の新標準を作った。厳密には Clay は CRM というよりも、CRM の上に被せるデータレイヤー に近い。

Clay が解く問題:

リストに会社ドメインが 100 個あるとき、各社の従業員数・ファンディング・テックスタック・ニュース・キーパーソンを自動で埋める仕事。人が 1 週間かけてやることが 30 分で終わる。

動き方:

  1. データソース統合: Apollo、ZoomInfo、LinkedIn、Crunchbase、Clearbit、BuiltWith など 50 以上のプロバイダを 1 行ずつ繋ぐ。
  2. AI エージェント: GPT・Claude・Gemini をカラム単位で実行。「この会社の価値提案を 1 行で要約」のような task を 1 万行に一括適用。
  3. ウォーターフォール enrichment: 最初のプロバイダが失敗したら次へフォールバック。コストを最小化。
  4. アウトバウンド連携: HubSpot・Salesforce・Apollo・Outreach・Lemlist に push が容易。

価格: 月 149 ドルから。エンタープライズは交渉制。シート数ではなく クレジット単位 (enrichment 呼び出し回数) で課金される。

なぜ征服者か:

2024-2025 年に B2B アウトバウンドのワークフローが Clay 中心に組み替えられた。「Apollo でリスト抽出 → Clay で enrichment → Lemlist/Outreach で送信」が定番シーケンスになった。Apollo が enrichment を強化したのも Clay の影響だ。

弱み:

  • 学習曲線が急峻。非技術ユーザには「Notion データベース + ノーコード自動化」の融合に見える。
  • 価格が小さなソロセラーには重い。

4. Dex — 軽量関係 CRM の代表

Dex は「パーソナル CRM」というカテゴリを明確にしたツールだ。営業ではなく 関係維持 のための CRM。

設計思想:

連絡先ごとに最後に会った日、次に連絡する時期、どう出会ったか (文脈)、ノートを記録する。システムは「X さんと最後に連絡してから 3 ヶ月経ちました、連絡してみますか?」のような reminder を出す。

機能:

  • Gmail・Calendar・LinkedIn・Twitter 同期で last-touched を自動追跡。
  • Notes、Reminders、Goals (ネットワーキング目標)。
  • モバイルアプリの作りが良い。
  • 価格: Premium 月 12 ドル前後、無料ティアあり。

向いている人:

  • 創業者・VC・ライター・コンサルのように「広く弱い人脈」を管理する職種。
  • 営業ではなく人脈の資産化を目的とする人。

弱み:

  • チーム協業は弱い — 本質的に 1 人用。
  • 営業パイプラインや deal 管理はない。

Dex のポジションは「友人・同僚・機会の関係グラフを忘れないように助けるツール」だ。営業ツールではない。


5. Monica — オープンソースのパーソナル CRM

Monica はオープンソース (AGPL) のパーソナル CRM。PHP/Laravel ベースで GitHub で非常に人気のあるプロジェクト。

思想:

「家族・友人の誕生日、子供の名前、犬の名前、最後に話した話題を覚えておくデジタル第二の脳」。ビジネスではなく 私的関係管理 に特化している。

機能:

  • Contacts、Activities、Notes、Reminders。
  • Family tree、Pets、Gifts、Loans。
  • 日記、food preferences、conversation log。
  • セルフホスト (Docker で 5 分でインストール) または Premium クラウド。

価格:

  • セルフホスト: 無料、自分のサーバー代だけ。
  • クラウド: Premium 年 90 ドル前後。

向いている人:

  • プライバシー意識の高い人 (セルフホスト可能)。
  • ビジネスではなく本当に「人を覚える人」 — 家族・友人・親戚の管理。
  • OSS とセルフホストの文化に慣れた開発者。

弱み:

  • ビジネス機能なし — deal とパイプラインがない。
  • UI がモダン SaaS より素朴 (OSS の宿命)。
  • セルフホスト運用の負担。

Monica は Dex と同じカテゴリだが、より 私的な関係 に寄っている。そして OSS なのでデータの所有権が自分にある。


6. Sortd / Streak — Gmail フレンドリーの二分岐

メインチャネルが Gmail なら、Sortd と Streak が直接の候補だ。両方とも Gmail の中で動くが、味わいが違う。

Streak — Gmail ネイティブ CRM

Streak は Gmail のサイドバーに刺さって CRM 機能を提供する。パイプラインが Gmail Inbox の一部になる。

特徴:

  • 100% Gmail 内で動作 (Chrome 拡張)。
  • パイプラインを「ボックス」単位で作る (営業・採用・サポートなど use case 別)。
  • メール追跡 (開封通知)、mail merge、スニペット。
  • 無料ティア (個人)、有料は月 15 ドルから。
  • Mac とモバイルアプリあり。

向いている人:

  • 営業の出発点がすべて Gmail。
  • 別の CRM にデータを移す摩擦が耐えられない人。
  • 1 人から小さなチーム。

Sortd — Gmail を Trello のように

Sortd は Gmail をかんばんボード化する。「メールがタスク」な人向け。

特徴:

  • Gmail 内にボードビューを追加。
  • メールを drag-and-drop で task に変換。
  • ライト CRM (deal と contact のトラッキング)。
  • 無料ティア、有料は月 10 ドルから。

Sortd と Streak の違い: Streak は CRM 寄り、Sortd は タスク管理寄り。営業パイプラインが必要なら Streak、メール = やること なら Sortd。


7. Attio — モダン CRM の新基準

Attio は 2023-2024 年に急成長し、「Salesforce を置き換えうるモダン CRM」という評判を得た。UX が非常にモダンで、Notion のデータベースのような自由度を CRM に持ち込んでいる。

強み:

  • データモデルが非常に柔軟 — コンタクト・会社・deal・カスタムオブジェクトを自由に定義可能。
  • 自動 enrichment — ドメインを入れるだけで会社情報が自動で埋まる。
  • AI 機能 — メール要約、deal インサイト、自動 follow-up 提案。
  • Gmail・Outlook 同期、Calendar 連携、Slack 通知。
  • 価格: Free、Plus 月 29 ドル、Pro 月 59 ドル、Enterprise は交渉制。

向いている人:

  • シリーズ A から C のスタートアップ (10-100 人)。
  • Salesforce は重く、HubSpot はマーケ寄りすぎると感じるチーム。
  • 自分でデータモデルを設計したい sales ops。

弱み:

  • 学習曲線 — 自由度が高い分「どう setup するか」を決める必要。
  • エンタープライズ機能 (高度なレポート・細かい権限) は Salesforce 水準ではまだない。

Attio のポジションは「Notion と Salesforce の交点」のようだ。柔軟なデータと、CRM 本来のワークフロー (パイプライン・メール・deal) が両立する。


8. Less Annoying CRM / Cloze — 1 人用 CRM の選択肢

Less Annoying CRM (LACRM)

名前が正直な CRM。シンプルさ が武器。

  • 月 15 ドル、全機能込み、追加課金なし。
  • カレンダー・連絡先・ノート・メールログが 1 画面に。
  • Salesforce のような複雑さは皆無。
  • 向いている人: ソロセラー、小規模保険エージェント、不動産仲介、コンサル。

LACRM は「CRM は使いたいが Salesforce は耐えられない」人のためのツール。米国 SMB に非常にロイヤリティの高いユーザ層がいる。

Cloze

Cloze は AI が自動で関係スコアを付ける CRM。「この人とどのくらい頻繁にやりとりしているか、最後の連絡はいつか」を自動でトラッキング。

  • メール・通話・SMS・ソーシャルシグナルを統合分析。
  • 自動 reminder (「X さんと 2 週間連絡なし、挨拶しますか?」)。
  • Pro 月 19 ドル、Business 月 29 ドルから。
  • 向いている人: 不動産・ファイナンシャルアドバイザー・BD のように「関係の頻度」が重要な職種。

Cloze は Dex (より関係寄り) と Folk (より自動化寄り) の中間に位置する。


9. Notion / Airtable as CRM — 自前構築の魅力と罠

多くのソロや小さなチームは CRM をスキップして、Notion や Airtable でコンタクト DB を作る。両方とも長短がある。

Notion as CRM

長所:

  • 無料 (個人は無料、チームも非常に安い)。
  • 他の Notion ページ (ノート・ドキュメント・wiki) と自然に繋がる。
  • データベースのビューが多彩 — ギャラリー、ボード、カレンダー、テーブル。

短所:

  • メール同期が弱い — 別途自動化 (Zapier、Make) で埋める必要。
  • 通知や reminder が CRM 専用ツールに及ばない。
  • 大規模データセットで検索とフィルタが遅くなる。

Airtable as CRM

長所:

  • データベース本来の強み — リレーショナル、自動化、多彩なビュー。
  • API が強力 — 外部システム連携が容易。
  • テンプレート豊富。

短所:

  • 意外と高い — Pro は 1 ユーザ月 20 ドル。
  • CRM ネイティブな UI ではなく「deal カード」表現が不自然。
  • 協業時の権限管理が Notion より複雑。

結論: Notion / Airtable as CRM は 20 人未満の非常に小規模なチーム のスタート段階に良い。それを超えると専用 CRM (Folk、Attio、HubSpot) への移行を検討すべき。自前構築の罠は「メンテナンスが本業になること」。


10. HubSpot Free vs Salesforce vs Pipedrive — 正統 3 強

HubSpot CRM (Free tier)

HubSpot の無料 CRM は 2026 年現在も SMB 営業の圧倒的な入り口だ。

  • 無制限のコンタクト・会社・deal、ユーザ数無制限が無料。
  • Marketing Hub・Sales Hub・Service Hub と統合 (有料アップグレード)。
  • メール追跡・ミーティング予約・ライブチャットが標準。
  • 弱み: 無料は制限が多い、有料価格が急速に上がる。

向いている人: シリーズ A 前のスタートアップ、marketing-driven SMB、コンテンツ GTM の会社。

Salesforce Sales Cloud

エンタープライズ営業の標準。1999 年から市場を定義してきたツール。

  • 非常に強力なワークフロー・自動化・レポート。
  • AppExchange で 1000 以上のインテグレーション。
  • AI (Einstein、Agentforce) 内蔵。
  • 価格: Sales Cloud Essentials 月 25 ドル、Enterprise 月 165 ドル、Unlimited 月 330 ドル (シート)。

弱み: 学習曲線が非常に急、setup が重い、高い。

向いている人: 100 人以上の営業組織、エンタープライズ営業、複雑な営業プロセス。

Pipedrive

営業パイプラインの可視化に特化。UI が直感的で setup が簡単。

  • かんばんパイプラインビューが強み。
  • アクティビティ追跡、メール連携、自動化対応。
  • 価格: Essential 月 14 ドル、Advanced 月 34 ドル、Professional 月 49 ドル (シート)。
  • 向いている人: 5-50 人の営業組織、「deal driven」な会社。

3 つのポジション:

ツール重さ価格フィット先
HubSpot Free軽い無料 (上限あり)スタート段階、marketing-driven
Pipedrive月 14-49 ドル営業パイプライン中心
Salesforce重い月 25-330 ドルエンタープライズ、複雑なワークフロー

11. Capsule / Zoho CRM / Insightly — その他の SMB 選択肢

Capsule CRM

イギリス拠点の SMB CRM。「シンプルさが魅力」。

  • 価格: Starter 月 18 ドル、Growth 月 36 ドル、Advanced 月 54 ドル。
  • イギリスとヨーロッパで人気 (GDPR フレンドリー)。
  • メール連携、タスク管理、パイプライン。

Zoho CRM

インド Zoho の CRM。Zoho One 統合 (45 のビジネスアプリ束) が強み。

  • Standard 月 14 ドル、Professional 月 23 ドル、Enterprise 月 40 ドル (シート)。
  • AI (Zia)、自動化、カスタマイズ。
  • グローバルユーザが非常に多い。

Insightly

プロジェクト管理統合が角度。営業 deal とプロジェクトの lifecycle を 1 箇所で。

  • Plus 月 29 ドル、Professional 月 49 ドル、Enterprise 月 99 ドル。
  • 向いている人: 営業とプロジェクトデリバリーが繋がるサービス会社 (コンサル、エージェンシー)。

この 3 つのポジションは「Salesforce・HubSpot・Pipedrive にフィットしない SMB ニッチ」。日本での見えは小さいが、グローバルでは堅実なユーザ層を持つ。


12. アウトバウンド — Apollo.io / Lemlist / Outreach

CRM 自体はコンタクトを 保管する 場所、アウトバウンドツールはコンタクトを 発掘し接触する 場所。2026 年標準シーケンス: Apollo → Clay → Lemlist/Outreach → CRM

Apollo.io

B2B リードデータの標準。2.7 億コンタクト、7 千万会社のデータ。

  • メール・電話・LinkedIn 情報。
  • Sequence (コールドアウトリーチ自動化) 内蔵。
  • 価格: Free、Basic 月 59 ドル、Professional 月 99 ドル、Organization は交渉制。
  • Clay 台頭後に enrichment を大きく強化。

Lemlist

メールアウトリーチのシーケンスツール。パーソナライズされたテンプレートが強み。

  • 画像とランディングページのパーソナライズ (受信者名入りの画像を自動生成)。
  • A/B テスト、deliverability 保護。
  • 価格: Email Starter 月 39 ドル、Email Pro 月 69 ドルから。

Outreach.io

エンタープライズ sales engagement の標準。Salesforce・HubSpot と深く統合。

  • Sequence、dialer、ミーティング予約。
  • AI Kaia (会話インテリジェンス)。
  • 価格: シート 100 ドル超 (エンタープライズ交渉)。

ZoomInfo

厳密にはデータプロバイダ。Apollo と並ぶ最大の B2B データソース。本サイトの別記事で扱う。

シーケンス例:

  1. Apollo で ICP に合うリード 1000 件を抽出。
  2. Clay で各リードのファンディング・テックスタック・ニュースを enrichment。
  3. Lemlist でパーソナライズされたシーケンスを送信。
  4. 返信のあった deal を HubSpot や Salesforce に push。

このシーケンスが 2025 年に標準化し、2026 年はさらに自動化が進んでいる。


13. メールトラッキング — Mixmax / Yesware

ほとんどの CRM にメール追跡は内蔵されているが、専用ツールはより細かい。

Mixmax

Gmail ネイティブの営業プロダクティビティツール。

  • メール追跡 (開封・クリック)。
  • Sequences (小規模自動化)。
  • カレンダースロット共有、ライブ送信、テンプレート。
  • 価格: SMB 月 29 ドル、Growth 月 49 ドル、Enterprise 月 69 ドル。

Yesware

Gmail と Outlook の両方をサポート。メール追跡・テンプレート・キャンペーン。

  • 価格: Pro 月 19 ドル、Premium 月 45 ドル、Enterprise 月 85 ドル。
  • Salesforce・HubSpot 連携。

Mixmax vs Yesware: Mixmax は Gmail に深く結びついて UX がよりモダン。Yesware は Outlook 対応も良くエンタープライズ連携が堅実。

モダン CRM (Folk・Attio・HubSpot・Salesforce) はメール追跡を内蔵しているので、CRM の外で独立した追跡ツールはどんどんニッチ になっている。


14. AI コンタクト enrichment — Clay の躍進と次に来るもの

2024 年以降、CRM 市場の最大の変化は AI enrichment の主流化 だ。ドメインやメールを 1 つ投げると会社・人物・文脈データが自動で埋まる。

市場風景 (2026 年 5 月時点):

ツールポジション強み
Clayenrichment レイヤー50 以上のソースのウォーターフォール、AI agent コラム
Apolloデータ + sequenceコンタクト DB の規模、シーケンス一体化
Clearbit (HubSpot 買収)enrichmentHubSpot 統合
ZoomInfoデータ + engageエンタープライズデータの深さ
Lushaライト enrichment価格フレンドリー、ソロセラー
Hunter.ioメールファインダードメインからメール

Clay 躍進の理由:

  1. ウォーターフォール: 最初のソースが失敗したら次のソースへフォールバック。fill rate を最大化しつつコストを最小化。
  2. AI agent コラム: GPT・Claude をコラム単位で実行。「この会社の価値提案を 1 行で要約」のような task を数千行に一括適用。
  3. ワークフロー連携: HubSpot・Salesforce・Apollo・Outreach・Lemlist に push が容易。

次のトレンド:

  • Folk・Attio のようなモダン CRM は enrichment を 内蔵 しようとしている。
  • HubSpot は Clearbit 買収後に enrichment を急速に統合。
  • Apollo は自社 enrichment を強化 (Clay を追う)。
  • 新ツール: Surfe、Cognism、FullEnrich など多数のニッチプレイヤー。

注意: enrichment の データ精度 はソース依存だ。AI agent で未定義のフィールドを埋めると幻覚のリスク。ミッションクリティカルなフィールド (連絡先・メール) は verified source のみを使うのが定石。


15. 韓国 — KakaoTalk sync、Toss、Adsbi、自前 CRM の風土

韓国の文脈はグローバルとは異なる。理由は 2 つ: KakaoTalk がメインメッセンジャー であること、そして B2C マーケティング自動化の文化が違う こと。

KakaoTalk sync

ほとんどのグローバル CRM (Folk・Attio・Salesforce) には KakaoTalk 同期がない。韓国の営業がグローバル CRM を使うと KakaoTalk の会話が CRM の外をさまよう。対策:

  • Kakao Business Messages を別ツール (Bizm、MakeBot など) で管理。
  • Channel Talk (channel.io) が韓国でライブチャット + 軽量 CRM の役割。
  • Channel Talk 自身が「韓国版 HubSpot」の候補の 1 つ。

Toss / Adsbi / 自前 CRM

韓国のフィンテックは自前 CRM 構築が多い。

  • Toss: 内部 CRM とデータプラットフォームが非常に強固。外部 CRM は一部チームのみ。
  • Adsbi: 広告と CRM 統合の SaaS、韓国 e-commerce で人気。
  • Shop-byCafe24 など e-commerce プラットフォームが自前 CRM 機能を内蔵。

韓国文脈の結論

  • B2B SaaS ソロ / 小規模チーム: Folk・Attio がグローバル標準。韓国語 UI は乏しい。
  • B2C マーケティング自動化: Channel Talk・Plating・韓国産ソリューションが強力。
  • エンタープライズ: Samsung・LG・Hyundai は SAP・Oracle・Salesforce 中心、自前システムとハイブリッド。
  • パーソナル (個人人脈管理): Dex・Monica は韓国語サポートが弱いが動作する。

グローバル GTM の韓国スタートアップは Folk・Attio・HubSpot が標準。内需中心の会社は Channel Talk + 自前システムの方が合うことが多い。


16. 日本 — Sansan、freee、Money Forward の B2B エコシステム

日本の文脈は非常に独特だ。名刺文化 が依然として強く、B2B 営業の起点が名刺交換であることが多い。

Sansan — B2B 名刺 CRM の標準

Sansan は日本の B2B 営業の標準。名刺をスキャンすると OCR と人手の検収で正確なコンタクトデータが生成され、社内で共有される。

  • 日本の上場会社。市場シェアが非常に高い。
  • 名刺 OCR (社内スタッフが検収するので精度が非常に高い)。
  • 名刺データを会社レベルで共有 — 「誰が X 社の金部長を知っているか」が検索可能。
  • Salesforce・kintone と統合。

なぜ日本だけ Sansan が強いか:

名刺交換が営業の出発点であり、名刺データの量と質が営業力に直結するという日本のビジネス文化のため。海外では LinkedIn がその役割を果たす。

freee / Money Forward

日本の会計 SaaS 二強。CRM そのものではないが、freee や Money Forward の CRM モジュール または統合ソリューションが SMB でよく使われる。

  • freee が CRM 機能を強化中 (特に freee 人事労務との統合)。
  • Money Forward も CRM を提供 (Money Forward クラウド CRM)。

kintone

Cybozu のノーコードビジネスアプリプラットフォーム。日本企業の自前 CRM 構築の標準の 1 つ。

  • 「Notion + Airtable + Power Apps」のようなポジション。
  • 日本の SMB で非常に人気。
  • CRM・プロジェクト・勤怠などを自前構築。

日本文脈の結論

  • B2B エンタープライズ: Sansan + Salesforce か kintone が標準。
  • SMB: freee や Money Forward 統合 + 自前構築。
  • グローバル展開する日本スタートアップ: HubSpot・Attio・Folk の導入が増加中。

日本は 名刺のデジタル化 にグローバルと違う進化経路を歩み、Sansan がその頂点にある。


17. 誰が何を選ぶべきか — ペルソナ別レコメンデーション

1) ソロ創業者 / インディハッカー

  • メイン CRM: Folk または Attio Free。
  • 関係 CRM: Dex (ネットワーキング中心)。
  • メールチャネル: Gmail + Mixmax または Streak。
  • 導入時期: コンタクトが 50 を超えたら。

2) VC / エンジェル投資家

  • メイン CRM: Folk または Affinity (VC 特化、本稿範囲外)。
  • 関係 CRM: Dex (LP・創業者の関係)。
  • enrichment: Clay (ポートフォリオ会社分析)。
  • 導入時期: 初回ファンドクローズ直後。

3) B2B 営業チーム (5-50 人)

  • メイン CRM: HubSpot Free → HubSpot Pro、または Pipedrive、または Attio。
  • アウトバウンド: Apollo + Clay + Lemlist/Outreach。
  • メール追跡: Mixmax または CRM 内蔵。
  • 導入時期: フルタイム営業が 1 人でもいるなら直ちに。

4) エンタープライズ営業組織 (100 人超)

  • メイン CRM: Salesforce Sales Cloud。
  • アウトバウンド: Outreach または Salesloft。
  • enrichment: ZoomInfo + Clay (ミックス)。
  • 導入時期: 営業組織が 50 人を超えたら。

5) コンサル / フリーランス

  • メイン CRM: Less Annoying CRM または Folk。
  • 関係: Dex。
  • メール追跡: Mixmax または Yesware。

6) 個人関係管理 (家族・友人)

  • メイン CRM: Monica (セルフホスト可能) または Dex。
  • 鍵は: ビジネスツールを使わないこと。

7) 韓国 B2B スタートアップ

  • グローバル GTM: Attio または Folk + Apollo + Clay。
  • 内需中心: Channel Talk + 自前システム。
  • ハイブリッド: HubSpot + Channel Talk 統合。

8) 日本 B2B 営業

  • 標準: Sansan + Salesforce か kintone。
  • グローバル展開: HubSpot/Attio + Sansan の並行運用。

決定ツリー

1 人で使うか?
├─ Yes → 目的は営業か?
│   ├─ YesFolk, Pipedrive, HubSpot Free
│   └─ No (関係維持)Dex, Monica
└─ No (チーム) → 規模は?
    ├─ < 10Folk, Attio, HubSpot Free
    ├─ 10-100Attio, HubSpot Pro, Pipedrive
    └─ 100+Salesforce, HubSpot Enterprise

エピローグ — 2026 年 CRM の方向

2026 年 5 月時点の CRM 市場の 3 つの大きな潮流。

第一に、AI enrichment が標準になった。Clay が切り拓いた流れを全てのツールが追う。Folk・Attio・HubSpot は自社 enrichment を強化し、Apollo は Clay と直接競合する。

第二に、「パーソナル CRM」と「ビジネス CRM」の境界がさらに曖昧になった。Folk はソロ用にも 100 人チーム用にも適応する。Dex は私的関係とビジネス関係の両方を扱う。

第三に、ローカル文脈 (韓国・日本) が依然として決定的。KakaoTalk や Sansan のようなローカルツールをグローバル CRM とどう統合するかが韓・日営業の中核的決定だ。

CRM は「ツールを選ぶ仕事」ではなく ワークフローを設計する仕事 だ。どのコンタクトがどこから入り、どこに保存され、どう follow-up が起こるか — この流れを描いた後にツールを選ぶ。ツールがワークフローを決めるのではない。

最後に、「CRM を使わないことが答え」のときもある。コンタクトが 50 未満で、メール inbox で全部解決できるなら、別ツールを入れる必要はない。ツールは問題が明確になってから入れるのが定石


参考 / References

  • Folk — folk.app
  • Clay — clay.com
  • Dex — getdex.com
  • Monica — monicahq.com (and github.com/monicahq/monica for OSS)
  • Streak — streak.com
  • Sortd — sortd.com
  • Attio — attio.com
  • Less Annoying CRM — lessannoyingcrm.com
  • Cloze — cloze.com
  • HubSpot CRM — hubspot.com/products/crm
  • Salesforce Sales Cloud — salesforce.com/products/sales-cloud
  • Pipedrive — pipedrive.com
  • Capsule CRM — capsulecrm.com
  • Zoho CRM — zoho.com/crm
  • Insightly — insightly.com
  • Apollo.io — apollo.io
  • Lemlist — lemlist.com
  • Outreach — outreach.io
  • Mixmax — mixmax.com
  • Yesware — yesware.com
  • Notion — notion.so
  • Airtable — airtable.com
  • Sansan — sansan.com
  • freee — freee.co.jp
  • Money Forward — moneyforward.com
  • kintone — kintone.com
  • Channel Talk — channel.io
  • ZoomInfo — zoominfo.com
  • Clay Series B 2024 announcement — clay.com (Kareem Amin profile via Crunchbase)
  • Folk Series B 2024 — TechCrunch and Crunchbase coverage