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- Youngju Kim
- @fjvbn20031
はじめに — オファーメールの前でカーソルが止まる瞬間
オファーメールが届きます。数字が書かれていて、最後の行に「ご確認のうえご返信ください」とあります。返信画面を開いて「ありがとうございます」まで書いたところで、カーソルが止まります。次の一文を書くかどうか迷うその数分は、多くの人にとって就職・転職の過程でいちばん居心地の悪い時間です。
止めているのは情報不足ではありません。市場相場を知っていても止まります。止めている感情はたいていこういう種類のものです。ここまで採ってもらっただけでもありがたいのに、お金の話を持ち出したら欲張りに見えないだろうか。余計なことを言ってオファーが取り消されたらどうしよう。第一印象から計算高い人だと思われたらどうしよう。
この記事はその数分のためのものです。結論から言うと、オファーが出たという事実は、会社がすでに自分を選ぶと決めたという意味であり、その瞬間から会社と自分は同じ側にいます。残っているのは互いを説得し合う戦いではなく、同じ側になると決めた者同士が条件を合わせる実務です。
気後れの正体、そして変えるべきフレーム
交渉が気後れするのは、それを「ゼロサムの対決」として想像しているからです。自分が多く受け取れば相手が損をするという絵。ところがオファー段階の実際の構造はそうではありません。
数字で考えてみると明らかになります。経験者を一人採用するために会社がすでに使った費用を思い浮かべてください。求人掲載とスクリーニング、3、4回の面接に入った面接官たちの時間、そしてヘッドハンター経由なら通常は年収の15〜25パーセントとされる手数料。ここに採用が流れたときにまた数か月回さなければならない費用まで足すと、年収30万円の差のためにオファーを撤回する選択は会社にとっても損です。丁寧に提示された交渉の依頼でオファーが飛ぶことがまれなのは、これが理由です。
二つ目に変えるべきフレームは「要求」ではなく「すり合わせ」です。交渉メールの文をこう変えてみてください。「もっとください」ではなく「このポジションで自分が生み出せる価値と市場の水準を見ると、この区間が妥当だと考えているのですが、御社の基準とどこが違うのかをうかがいたいです」。同じ依頼ですが、相手が防御すべき対象が消えます。
三つ目は感情の性質を正確に知ることです。交渉を切り出せない人のかなりの割合は、交渉だけを切り出せないわけではありません。頼みを断れず、気まずい依頼を先送りし、自分の取り分を主張する場面で声が小さくなります。だとすればこれは交渉技術の問題ではなく境界線を引くことの問題であり、練習すべきはスクリプトではなく「要求しても関係は壊れない」という経験の蓄積です。
情報の非対称を縮めることが交渉の半分です
交渉テーブルの両側は情報が対等ではありません。会社はこの職務に割り当てられた予算範囲を知っていて、最近同じレベルで入社した人たちの金額を知っていて、いま候補者が何人いるかを知っています。自分は自分の数字一つしか知りません。この格差があるかぎり、どんな話し方も大きくは効きません。
縮める方法は三つあります。
第一に、公開データを職務と地域と年次で切って見ます。韓国国内では採用プラットフォームの職務別年収統計や開示資料、ジョブプラネットやブラインドのような自己申告データがあり、公的統計としては雇用労働部の賃金職務情報システムがあります。それぞれに偏りがあります。自己申告データはおおむね上振れしますし、統計資料は最新性に劣ります。ですから一つの数字を信じる代わりに、三つの出典の範囲が重なる区間を探すほうが安全です。
第二に、人に聞きます。これがいちばん正確なのに、いちばん使われていません。同じ職務の知人に「このレベルだとだいたいどのくらいの区間が一般的でしょうか」と聞くのは無礼ではありません。自分の金額を明かしにくい人でも、範囲ならたいてい教えてくれます。ヘッドハンターに聞くのも一つの方法です。彼らは複数の会社のオファーをリアルタイムで見ています。
第三に、会社に直接聞きます。「このポジションに設定されている範囲はありますでしょうか」。この質問はリクルーターとの最初の電話でしても、まったくおかしくありません。参考までに、欧州連合は2023年に採択した賃金透明性指令で採用段階の賃金範囲の開示を義務づけ、応募者に前職の給与を尋ねることを禁止しました。加盟国の履行期限は2026年6月です。米国も複数の州が似た法律を持っています。韓国にはまだそうした規定がないので、前職の年収を明かすかどうかは依然として各自の裁量に残されています。
最初の数字と範囲 — アンカリングはどこまで効くのか
交渉のアドバイスで最も頻繁に引用されるのがアンカリングです。1974年にトベルスキーとカーネマンがサイエンス誌に載せた実験が出発点です。参加者にルーレットを回して無作為の数字を見せたあと、まったく無関係な質問の答えを推定させたところ、直前に見た数字が答えを引き寄せました。交渉の文脈では2001年のガリンスキーとムスワイラーの研究がよく引用され、先に提示された金額が最終的な合意点をかなりの部分予測しました。
ただ、ここで正直であるべき部分があります。アンカリングは心理学の中では再現が比較的よくできる効果に属しますが、だからといってあらゆる状況で同じ大きさで働くわけではありません。相手がその市場をよく知っているほど、そして会社がレベル別の賃金バンドを厳格に運用しているほど、最初の数字が押し出せる幅は小さくなります。アンカリングはバンドの中での位置を変える道具であって、バンドそのものを動かす道具ではないと考えるほうが現実に近いです。
それでも数字を口にする瞬間が来たら、形式は重要です。単一の金額より範囲がよく、その中でも希望額を範囲のいちばん下に置くやり方がよいです。2015年のエイムズとメイソンの研究は、この形の範囲提示が単一の数字の提示より良い結果を出しながら、相手に無理な要求として映ることもないと報告しています。相手が範囲の下端を選んでも、それがすでに自分の目標なので損が出ない構造です。
実際の文にするとこうなります。目標が750万円なら「750万円から820万円のあいだを考えております」と言います。700万円から800万円のあいだと言えば、ほぼ確実に700万円の近くが返ってきます。下端が自分の目標でなければならない理由です。
そして交渉力の実体は話し方ではなく代替案です。1981年にフィッシャーとユーリーが『Getting to Yes』で整理した概念がそのまま当てはまります。ほかにオファーが一つある人とない人は、同じ文を使っても結果が違います。ですから交渉準備の半分は、メールを書く前、応募の段階ですでに終わっています。可能であれば選考の終了時期を近いところに揃えてください。
基本給のほかにテーブルに乗っているもの
基本給がバンドの上限に当たってもう動かないという返事を聞いたとき、交渉が終わったわけではありません。決定権限が別の項目に移ると、余地がまた生まれます。
| 項目 | 交渉の余地 | こう言います |
|---|---|---|
| 基本給 | レベルバンド内でおおむね5〜15パーセント | 市場水準と自分の経歴を見ると、この区間が妥当だと考えております |
| サインインボーナス | 基本給が止まったとき最も開いている | バンド上限であれば、初年度のサインインで差を埋めていただけますでしょうか |
| 職位とレベル | 最も難しいが波及が最も大きい | 業務範囲を見ると、一つ上のレベルに近いのではないでしょうか |
| 年収の見直し時期 | 次の定期評価を前倒しする形 | 6か月時点で成果を基準に見直しのご相談は可能でしょうか |
| 株式と賞与 | 数量よりベスティング条件が交渉対象 | ベスティングの日程と初回の支給時期を確認させていただきたいです |
| 勤務形態 | 在宅日数、勤務地、コアタイム | 週2回の在宅が可能かどうか確認させていただきたいです |
| 研修と機材 | 金額が小さく最も承認されやすい | 年間のカンファレンスと書籍の予算はございますでしょうか |
| 入社日 | 休養期間に直結する | 3週間後の開始に調整いただくことは可能でしょうか |
この表を使うときの原則が一つあります。8つを一度に要求せず、優先順位を決めて上位2つか3つだけを一度に提示してください。項目を増やすほど依頼はリストになり、リストは相手にとって交渉ではなく管理業務に感じられます。そして一つが止まったときに次を出す順番でいくと、会話が続きます。
比較の単位もそろえる必要があります。基本給だけを比べると判断がよく狂います。A社は基本給が50万円高いけれど賞与がなく、B社は基本給が低い代わりに定期賞与と株式があるなら、総報酬を基準に立て直さなければなりません。ここに税金と退職金の算定方式、通勤時間の実質的なコストまで入れると、順位がひっくり返ることは珍しくありません。
「ご希望の年収はいくらですか」 — 序盤の質問に答える方法
この質問はたいてい選考の最も早い時点、リクルーターとの最初の電話の5分以内に出てきます。情報が最も少ない時点で先に数字を置かせる構造です。ですから最初の対応は先送りです。回避ではなく順序の調整だという点を文に込めると自然になります。
「職務範囲とレベルをもう少し理解したうえでお伝えしたいと思っております。もしこのポジションに設定されている範囲がございましたら、そちらを先にうかがえますでしょうか」
相手が範囲を教えてくれたら、その場で大きな情報を得たことになります。教えてくれずにまた聞かれたら、二つ目の対応に移ります。ここでは数字を出しつつ条件を付けます。
「現在の総報酬は620万円ほどです。今回の異動では750万円から820万円のあいだを考えておりまして、レベルと業務範囲によって調整する余地はございます」
三度以上圧をかけられたり、前職の年収を正確に求められたりすることもあります。このときは断ってかまいません。「前職の報酬条件は開示しない方針にしておりますので、ご了承いただけますと幸いです。代わりに、私が想定している区間はお伝えできます」。この文を使ったことで落ちる会社なら、その情報を渡したあとの交渉はどのみち良くは終わりません。
最後に、オファーを受けたあとの第一声も準備しておくとよいです。電話で金額を聞いたとき、その場で受諾したり落胆を見せたりせず、この一行で時間を確保してください。「ご提案ありがとうございます。一度書面で内容を整理して拝見したうえで、2日以内にご返信してもよろしいでしょうか」。感情が最も揺れる瞬間に決めないというだけで、交渉の質は上がります。職場で使うほかの難しい文章は状況別スクリプトにまとめてあります。
カウンターオファーの罠、そして正直な限界
転職を確定させて退職の意思を伝えたとき、現在の会社が金額を合わせると言ってくる場合があります。急に通る昇給、急に開く昇進。この瞬間はキャリアの中で最も判断が濁る地点の一つです。
業界では「カウンターオファーを受け入れた人の80パーセントが6か月以内に結局は会社を去る」という統計がよく引用されます。ただこの数値は出典が不明確で、採用業界の中で反復引用されるうちに固まった性格が強く、根拠にするには弱いです。数字ではなく構造で判断するほうがよいです。問いは一つです。自分が去ろうとしていた理由はお金だったのか、それともお金で覆い隠せる別の何かだったのか。成長の停滞、マネージャーとの関係、プロダクトの方向のような理由だったなら、上がった給与はその問題の解決ではなく猶予です。そして会社はいま自分を「去りうる人」として分類しておきます。その分類が次の組織改編でどう働くかは、誰も保証してくれません。
もちろん例外はあります。そもそも転職理由が本当に報酬だけで、昇給とともに役割やレベルが実際に変わり、それが口頭ではなく文書で残るなら、残る選択が合理的でありうるでしょう。核心は最後の条件です。文書に残らない約束は、人が変われば一緒に消えます。
最後に、この記事がしない約束をはっきりさせておきます。交渉で年収が2倍になることはありません。現実的な成果はたいてい5から15パーセントの区間で、それすら会社のバンドが上限を決めます。金額を大きく変えるのは話し方ではなくレベルであり、レベルを変えるのは交渉ではなく実力と証明可能な記録です。それでも交渉をすべき理由は、単発の利得のためではありません。初年度400万円と420万円は20万円の差ですが、毎年5パーセントずつ上がるとすると10年の累積差は約250万円になります。以後の転職の基準線もそのぶん上がります。交渉の本当の効果は、その年ではなく複利から出てきます。
おわりに — 交渉は関係の最初の一文です
年収交渉をうまく終えた人たちの振り返りには共通点があります。勝ったという感覚ではなく、言いたいことを丁寧に全部言えたという感覚が残るということです。金額が望むほど上がらなかった場合でもそうです。
そしてこの会話は入社後も続きます。条件をすり合わせるやり方で相手は自分を最初に読みますし、自分もその会社が人をどう扱うのかを最初に見ます。ですから最後に残す文はこれで十分です。ご調整いただきありがとうございます、早く合流してしっかりやっていきたいと思います。