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- Youngju Kim
- @fjvbn20031
- はじめに
- 1. 順序が決まっている理由
- 2. 第1段階 収拾 — 診断ではなく止血
- 3. 第2段階 報告 — 収拾が終わるのを待たない
- 4. 第3段階 記録 — いちばん省略される段階
- 5. 第4段階 再発防止 — 決意は対策ではない
- 6. 謝罪と弁明の境界
- 7. 他人のミスを扱うとき
- 8. 今日できる一つのこと
- この助言が当てはまらない場合
- おわりに
- 続けて読む
はじめに
働いているとミスをします。これは例外ではなく初期値です。だからミスをしない方法は有用な主題ではありません。
有用な主題は別のところにあります。ミスのコストはミス自体ではなく、そのあとの数時間と数日で決まります。同じ大きさのミスをしても、ある人は信頼を失い、ある人はむしろ信頼を得ます。その差は性格でも運でもなく、たいていは順序です。
順序は四つです。収拾、報告、記録、再発防止。この順序自体は特別ではなく、たいていの人は知っています。問題は、実際の状況でこの順序がほとんどいつも同じやり方でひっくり返ることです。この記事は各段階がなぜその位置にあるのかと、その位置でよく崩れる地点を見ます。
1. 順序が決まっている理由
四段階の順序は重要度順ではなく時間感度順です。
収拾が先なのは、時間が経つほど被害が大きくなるからです。報告が二番目なのは、相手に残った選択肢が時間とともに減るからです。記録が三番目なのは、記憶が時間とともに歪むからです。再発防止が最後なのは、それだけが急ぎではないからです。
ですからこの順序は、各段階がどれだけ重要かとは無関係です。再発防止がいちばん後ろにあるからといって、いちばん重要でないわけではありません。むしろ長期的には値打ちがいちばん大きい。ただ急ぎではないだけです。
そして急ぎではないから、実際にはほとんどやらなくなります。これがこの順序の罠です。
2. 第1段階 収拾 — 診断ではなく止血
ここでいちばんよくひっくり返るのは、原因を探そうとして拡散を止められないことです。
ミスを見つけた直後の自然な反応は、なぜこうなったのかを調べることです。理解できないと不安だからです。ところがその十五分のあいだに、誤ったデータが流れ続け、誤ったメールが送られ続け、誤った設定が適用され続けます。
いま必要なのは診断ではなく止血です。原因がわからなくても止められる場合がほとんどです。そして止めたあとに原因を探せば、時間の圧力なしに正確に探せます。
二番目によくある失敗は反対方向です。急いで戻そうとしてもっと大きなミスを作ること。誤って送ったものを消そうとして原本まで消し、誤った設定を直そうとして別の設定に触ります。最初のミスより二番目のミスのほうが大きい場合が実際に多くあります。
ですから収拾の段階に規則を一つ置いておくとよい。取り消せない措置は一人で決めません。取り消せる措置は速く、取り消せない措置はせめて一人には確認を取ってから。この規則一つで二番目のミスの大半が防げます。
一人で判断してはいけない線は、だいたいこうです。データが消える措置、社外に出るメッセージ、お金が動く措置、戻すのに他人の作業が必要な措置。この四つのどれかに当たるなら、いったん止めて人を呼びます。
3. 第2段階 報告 — 収拾が終わるのを待たない
ここでひっくり返るものはいつも同じです。収拾が終わるまで報告を先延ばしにすること。
理由もいつも同じです。全部解決したら報告することがあまりなくなっていてほしい、と願うからです。そして実際にたまにそうなります。静かに直り、誰も知らないまま過ぎます。この成功体験が、次はもっと大きく先延ばしにさせます。
問題はこの賭けの損益構造が悪いことです。成功すれば何も起きず、失敗すればミスと隠蔽の二つになります。この構造では勝率が高くても期待値がマイナスです。
報告のタイミングの判断は悪い知らせは中身よりタイミングで決まるで詳しく扱いました。ここでは収拾と重なる部分だけを押さえます。
収拾の途中でする報告は、完結した報告である必要はありません。一行で足ります。
いまこういう問題を見つけ、拡散を止めているところです。三十分後にあらためて状況をお知らせします。
この一行の機能は二つです。相手が別の経路で先に知ることを防ぎ、相手にいま準備することがあるなら準備できるようにします。そして三十分後と書いたなら、三十分後に実際に送ります。進展がなくても送ります。進展がないということも情報です。
4. 第3段階 記録 — いちばん省略される段階
収拾が終わると安堵します。そして記録を飛ばします。四段階のうち、実際にいちばんよく消えるのがこの段階です。
飛ばしてはいけない理由は、その場で書いたメモと二日後に書いた経緯書を並べて比べてみればすぐ見えます。すでに経験した件で一度やってみてください。順序が入れ替わっていて、何時に何をしたかがぼやけていて、やろうとしてやめたことがやったこととして入っています。嘘をつかなくてもそうなります。記憶は出来事を保存しておいて取り出すというより、毎回組み立て直すことに近いようで、組み立てるときには辻褄が合う方向に整理されます。
ですからあとから丁寧に書く文書は、その場で残した粗いメモの代わりにはなりません。代わりになると信じていることが、この段階を飛ばさせる理由です。
残すものは四つです。
- 時刻。いつ発生し、いつ知り、いつ何をしたか。時刻のない記録は、あとで順序を再構成できません。
- とった行動。自分が実際に実行した措置。やろうとしてやめたことと区別して。
- 観察したこと。画面に何が出たか、どんな値だったか。解釈ではなく観察を。
- 知らせた相手。誰にいつ何を知らせたか。
そして重要な観点を一つ。この記録の一次用途は防御ではありません。再発防止の材料です。防御用に使おうとして書き始めると文が歪み、歪んだ記録は次の段階で役に立たなくなります。事実だけ書けば、防御は勝手に成立します。
実務的には、収拾しながらメモ帳を一つ開いておいて一行ずつ積むのがいちばん簡単です。文章でなくてよく、順序が絡まってもかまいません。整理はあとでできますし、あとでできないのは観察だけです。
5. 第4段階 再発防止 — 決意は対策ではない
ここがこの記事でいちばん居心地の悪い部分です。
二度としません、もっと注意します、これからは二回確認します。こうした文は再発防止策のように聞こえますが、実際には再発防止をしないという宣言に近い。なぜなら条件がそのままだからです。
同じ人が同じ疲労の状態で同じ道具を使い同じ順序で働けば、同じミスが出ます。注意力は資源であり、資源は枯渇します。今回出なかったのなら、それは対策が働いたのではなく運がよかっただけです。
対策は条件を変えるものでなければなりません。方向は四つです。
- 順序を変える。危険な措置を最後に置くか、確認が先に来るように順序を変えます。
- 確認段階を足す。人ではなく手続きが確認するようにします。二回見るという決意ではなく、二回見なければ進まない構造に。
- 取り消せるようにする。ミスを防ぐより、ミスをしても復旧できるようにするほうが、たいてい安く確実です。
- 見えるようにする。おかしくなったら通知が来るようにします。ミスをなくすことはできませんが、発見までの時間を縮めます。
そしてここに正直な但し書きを一つ付けなければなりません。対策にもコストがあります。確認段階を一つ入れれば、そのあとのすべての作業が少しずつ遅くなります。一年に一度出るミスを防ぐために毎日十分を使う対策なら、それは良い対策ではありません。
ですから最後の判断が必要です。このミスはどれくらいの頻度で出て、一度あたりどれだけの損害か、対策にはどれだけかかるか。計算してみて対策を作らないと決めることも結論です。ただしその結論は明示的に書いておかなければなりません。書かないと、次に同じことが起きたときに何の判断もなかったように見えます。
6. 謝罪と弁明の境界
謝罪が弁明として読まれる経験は、たいていの人がしているはずです。納得がいかないけれど、どこで分かれるのかはよくわかりません。
境界はこうです。謝罪は影響についてのもので、弁明は原因についてのものです。そして原因の説明そのものは悪いことではありません。再発防止の議論には必ず必要です。問題は位置です。
原因が謝罪の文のなかに入ると、全部が弁明になります。日程が厳しくてこういうことになりました、申し訳ありません。この文で聞く人に残るのは申し訳ないという言葉ではなく、日程が厳しかったという主張です。接続詞ひとつが謝罪を条件つきにします。
だから分離します。謝罪の段落と経緯の段落を別に置きます。
リリースが一日押されました。隣のチームの日程に影響が出ましたし、私の判断の誤りでした。申し訳ありません。
経緯はこうです。検証手順のうち一つを飛ばしていて、飛ばした理由はその段階が以前のリリースで常に通過していたからです。再発防止としては、その段階を自動化する方向を提案します。
同じ内容なのに印象がまるで違います。前の段落には理由がなく、後ろの段落には謝罪がありません。
そして長さについて一つ。謝罪は短いほど信頼が高い。長くなると二つのことが起きます。第一に、なかに弁明が混ざる場所ができます。第二に、相手が慰めなければならないような負担を負います。長い謝罪は結局、相手に感情労働を要求する行為になります。それは謝罪の反対側にあります。
7. 他人のミスを扱うとき
この記事は自分のミスについてのものですが、裏面を見なければ半分しか見ていないことになります。
他人がミスをしたとき自分がどう反応するかが、次にその人が自分にどれだけ早く知らせるかを決めます。これは例外なくそうです。ミスを報告したときに叱責から返ってきた経験が一度あれば、そのあとは確認してから知らせるようになります。そして先に見たとおり、確認してから知らせると遅れます。
ですから反応の順序も決まっています。最初の反応は、いま何が必要かを尋ねることです。原因や責任は収拾が終わったあとです。この順序を守る人のまわりでは事故が早く見つかり、守らない人のまわりでは遅く見つかります。チームの事故対応の速さは、たいていリーダーの第一反応の習慣にかかっています。
そして再発防止の議論で人を主語に置かないことが重要です。誰が悪かったのかではなく、どんな条件でこのミスが可能だったのかを見ます。同じ条件なら、ほかの人も同じミスをします。
8. 今日できる一つのこと
いちばん最近したミスを一つ思い浮かべます。大きくなくてかまいません。
そして一行だけ書きます。そのミスが可能だった条件は何だったのか。自分が不注意だったという答えは条件ではありません。時間がなかった、確認段階がなかった、取り消せない作業だった、一人で判断した。こういうものが条件です。
条件が書かれれば、次の行はたいてい勝手に出てきます。そしてその一行は決意十個よりましです。
この助言が当てはまらない場合
安全、金銭、個人情報、規制対象の領域の事故は、個人が順序を決めてはいけません。こうした領域には決められた手続きと報告期限と報告ラインがすでにあり、その手続きが個人の判断より優先します。この記事の第1段階の収拾でさえそうです。事故の現場を保存しなければならない場合があり、そのときは戻す措置そのものが規定違反になります。自分の業務にそうした手続きがあるかを事故が起きる前に確認しておくことのほうが、この記事全体より値打ちが大きい。
法的責任が絡む案件では、記録の性格が変わります。個人のメモと公式の記録が別に扱われることがあり、何をどこに残すかがあとで影響することがあります。この記事の記録の段階は、日常的な業務上のミスを前提にしたものです。紛争が予想される案件なら、組織の規定を先に確認し、必要なら担当部署に尋ねるのが正しい。
ミスを罰する組織では、この順序が個人に不利に働くことがあります。とくに記録がそうです。再発防止の材料として残した記録が責任の所在の証拠として使われる組織があります。そういう環境でも記録はするほうがましですが、形が変わらなければなりません。事実と時刻だけを書いて自分の判断についての評価は書かないこと、そして個人のメモではなくチーム共用の記録の形式を使うことです。
同じミスが繰り返されるのに対策が失敗し続けるなら、対象を取り違えています。三度目の同じミスが出たなら、それは個人の問題ではない可能性が高い。業務量が容量を超えているか、道具が悪いか、手続き自体がミスを誘導するように設計されています。このとき個人の次元の再発防止策を作り続けることは、問題を個人に縛りつけておく結果にしかなりません。扱うべき層が違います。業務量そのものが問題なら断りの構造のほうが先です。
最後に、この記事はミスのあとを扱っていて、ミスの感情を扱ってはいません。大きなミスをしたあとは数日仕事が手につきません。それは正常で、手続きをよく守ったからといって消えるものではありません。手続きは損害を減らす道具であって、心を整理する道具ではありません。
おわりに
ミス自体はたいてい記憶されません。半年後に残るのは、その人がミスのあとどう動いたかです。
そしてその動きは四つの文に縮みます。まず止めます。終わる前に知らせます。その場で書きます。決意ではなく条件を変えます。
このなかで難しいのは二つめだけです。残りは知っていれば足ります。
続けて読む
- 悪い知らせは中身よりタイミングで決まる — 第2段階の報告のタイミングを判断する基準。
- 上司マネジメントはごますりではない — 事故が起きたときに使う経路を前もって作っておく方法。
- FDE障害診断プレイブック — 技術障害の状況での段階別の手順。
- 会社でそのまま使える文章集 — 謝罪の文の実際の形。