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工業数学シリーズ 第7回:連立微分方程式と状態空間

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工業数学シリーズ 第7回:連立微分方程式と状態空間

現実のシステムは一つの変数だけが単独で動かない場合が多いです。電流と電圧が一緒に変わり、位置と速度が一緒に変わり、複数のタンクの物質濃度が互いに影響を与えます。こういうときは連立微分方程式が自然です。

なぜ連立で書くのか

例えば位置xxと速度vvを別々に考えると

x=vx' = v

v=ω2xv' = -\omega^2 x

のように2つの式が互いに結びつきます。一つの2次式にまとめることもできますが、2つの1次式で書くと構造がより明確になり、行列で整理しやすくなります。

状態空間表現

変数をベクトルにまとめると

y=(xv)\mathbf{y} = \begin{pmatrix} x \\ v \end{pmatrix}

で、式は

y=Ay\mathbf{y}' = A\mathbf{y}

の形で書けます。上の例では

A=(01ω20)A = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ -\omega^2 & 0 \end{pmatrix}

です。

この表現は後で学ぶ固有値や対角化と直接つながります。

手で解く例題

次の連立式を見てみましょう。

x=yx' = y

y=xy' = -x

最初の式をもう一度微分すると

x=y=xx'' = y' = -x

なので

x+x=0x'' + x = 0

となります。したがって

x(t)=C1cost+C2sintx(t) = C_1 \cos t + C_2 \sin t

です。

y=xy = x'なので

y(t)=C1sint+C2costy(t) = -C_1 \sin t + C_2 \cos t

です。

条件が

x(0)=1,y(0)=0x(0)=1, \quad y(0)=0

であれば

C1=1,C2=0C_1 = 1, \quad C_2 = 0

で、結果は

x(t)=cost,y(t)=sintx(t) = \cos t, \quad y(t) = -\sin t

となります。

このシステムはエネルギーが保存される単純調和運動の典型的な形態です。

工学応用

制御工学

現代制御はほぼ常に状態空間でシステムを書きます。センサが読む状態、入力、出力、雑音をそれぞれベクトルとし、全体の振る舞いを行列で表現します。

化学プロセス

複数のタンク間の濃度移動や反応速度も連立式で表されます。

コンピュータシステム

キューの長さ、処理率、バックログ、リトライ回数のように互いに影響を与える状態変数も、単純化すれば連立動力学モデルとして見ることができます。

位相平面の直観

連立微分方程式は数値だけでなく、軌跡を絵で見る面白さがあります。(x,y)(x, y)平面で解の流れを見ると、どの点が安定点なのか、円運動なのか、発散なのかを読み取ることができます。

この視点は後に固有値と線形システムの安定性を学ぶときに非常に重要になります。

よくある間違い

連立式を無理に一つの式だけで見る

一つの2次式に変換するのも良いですが、状態空間の形態に慣れれば、はるかに多くのシステムを統一的に扱えます。

変数の順序をよく変える

ベクトルの順序と行列の意味は一致していなければなりません。状態ベクトルの定義をまず固定する習慣が必要です。

解を求めても相互作用を解釈しない

連立式は各変数の相互作用が核心です。どの変数が他の変数をどのように押し引きするのか、解釈まで結びつけなければなりません。

一行まとめ

連立微分方程式は複数の状態が一緒に動くシステムを行列と状態空間で見る出発点です。

次回予告

次の記事では、閉形式の解をすぐに得るのが難しい場合に備えて、級数解とordinary pointの視点を紹介します。

参考資料

  • Erwin Kreyszig, Advanced Engineering Mathematics, 10th Edition
  • Gilbert Strang, Linear Algebra and Its Applications
  • Hassan K. Khalil, Nonlinear Systems