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数学 & 科学計算ツール 2026 — Mathematica / MATLAB / Maple / SageMath / Julia 1.11 / R + Posit / JAX / GeoGebra / Desmos / GAP / Macaulay2 徹底ガイド

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プロローグ — 「数学を計算機で解く」の意味が変わった

20 世紀後半の数学ソフトウェアは単純だった。一つの道具 — Mathematica・MATLAB・Maple のいずれか — が全てをこなすことになっていた。学生はライセンス一つに千ドルを払い、大学は十万ドルを払った。コードはその道具の言語の中だけで生きていた。

2026 年の風景は違う。

  • オープンソースが本当に追いついた。 SageMath は 2005 年に始まって 20 年が経ち、総合 CAS の地位を得た。Julia は 1.11 で安定 ABI を確定させた。R + tidyverse は統計の標準、Python の NumPy/SciPy/SymPy/Pandas/Polars 構成は科学計算のデファクト標準になった。
  • 商用も生きている。 Mathematica は LLM 統合と自然言語関数を、MATLAB は Simulink と産業認証を、Maple は精緻な教科書統合を保持している。ただし「学生が最初に出会う道具」の座は失った。
  • クラウドが入ってきた。 CoCalc・Wolfram Cloud・Google Colab・Posit Cloud・Hex・Deepnote がノートブックをブラウザに移した。SaaS モデルがライセンスモデルを急速に追い越している。
  • AI が割り込んだ。 Wolfram は Mathematica に LLMFunction を入れ、MathWorks は MATLAB Copilot を出し、Posit は Positron に AI アシスタントを入れた。SymPy と SageMath は Jupyter AI 経由で自然言語入力を受け付ける。

この記事は地図全体を見る。商用 4 巨人 (Mathematica/MATLAB/Maple/Magma)、オープン総合 (SageMath/Julia/R/Python)、教育ツール (GeoGebra/Desmos)、特化代数 (GAP/Macaulay2/Singular)、クラウド (CoCalc/Wolfram Cloud)、そして CAS 陣営 (SymPy/Symbolics.jl/Maxima/Reduce/Pari-GP) を扱う。最後に学生・研究者・技術者・教育者ごとに、何を選ぶべきかを推奨する。


1. 2026 年の数学・科学計算地図 — 4 分類

道具が多すぎる。一度整理しよう。

┌────────────────────────────────────────────────────────────────┐
│              2026 数学/科学計算の 4 分類                        │
│                                                                │
│  ┌─────────────────┐    ┌─────────────────────┐               │
│  │ 商用総合         │    │ オープンソース総合    │               │
│  │                 │    │                     │               │
│  │ - Mathematica   │    │ - SageMath          │               │
│  │ - MATLAB/Simulink│   │ - Julia 1.11        │               │
│  │ - Maple         │    │ - R + tidyverse     │               │
│  │ - Magma         │    │ - Python sci-stack  │               │
│  └─────────────────┘    └─────────────────────┘               │
│                                                                │
│  ┌─────────────────┐    ┌─────────────────────┐               │
│  │ 教育             │    │ 特化 / CAS          │               │
│  │                 │    │                     │               │
│  │ - GeoGebra      │    │ - GAP (群論)        │               │
│  │ - Desmos        │    │ - Macaulay2 (AG)    │               │
│  │ - Wolfram Alpha │    │ - Singular          │               │
│  │ - Khan / Mathway│    │ - PARI/GP (数論)    │               │
│  │                 │    │ - Maxima / Reduce   │               │
│  │                 │    │ - SymPy / Symbolics │               │
│  └─────────────────┘    └─────────────────────┘               │
└────────────────────────────────────────────────────────────────┘

各分類の思考モデルは違う。

分類思考モデル利用者ライセンス
商用総合「全部一箱に入っている」産業、研究室、ライセンス校の学生有料
オープン総合「自分で積み上げる」研究者、スタートアップ、独学者無料
教育「見て触る」K-12、学部 1〜2 年、教師無料 / 低価格
特化 / CAS「狭い分野で最強」博士後期以上、専門研究者混合

実際の研究室は通常 2〜3 の道具を組み合わせる。MATLAB でシミュレーション、Mathematica で象徴解法、Python でデータ処理。あるいは Julia で PDE を解き、R で統計検証し、SageMath で代数を確認する。一つの道具が全部を高い水準でこなす時代は終わった。


2. Wolfram Mathematica — プレミアム象徴計算の標準

Mathematica は 1988 年に Stephen Wolfram が発表して以来、象徴計算の標準である。2026 年版は 14.x 系。Wolfram Language (WL) という独自言語を持ち、全てを式 (expression) として扱うパターンマッチ型関数型言語である。

中核の強み

  • 象徴計算の深さ。 Integrate, Solve, DSolve, Series, Reduce — ほぼ全ての閉形解法が一行で済む。
  • Wolfram Alpha との統合。 自然言語入力 =昨日のソウルの気温 を式として評価できる。
  • 膨大な内蔵データ。 ChemicalData、CountryData、FinancialData、GenomeData — 学術データセット数百個が関数として露出している。
  • ノートブック UI。 式・グラフ・テキスト・対話ウィジェット (Manipulate) が同じセルに同居する。インタラクティブなデモが強い。
  • LLM 統合。 13.3 から LLMFunction、ChatEvaluator が正式に入った。Mathematica 内から GPT-4、Claude を呼び、結果を式として受け取る。

コード断片

(* 微分方程式を解く *)
DSolve[{y'[x] + y[x] == Sin[x], y[0] == 1}, y[x], x]

(* インタラクティブウィジェット *)
Manipulate[
  Plot[Sin[a x + b], {x, 0, 2 Pi}],
  {a, 1, 5}, {b, 0, 2 Pi}
]

(* LLM 呼び出しも一行 *)
LLMFunction["この定理を英語で証明して: {1}"][myTheorem]

弱点と批判

  • 価格。 学生ライセンス 約 169/年、個人169/年、個人 440/年、企業は数千ドル単位。大学のサイトライセンスは非公開だが数十万〜数十万ドル規模。
  • ベンダーロックイン。 WL コードは外に移植できない。オープンソースのバックエンドが存在しない。
  • 速度。 数値計算は MATLAB や NumPy より一般に遅い (象徴は圧倒的)。
  • 現代 ML の不在。 PyTorch/JAX に相当する標準的な ML 道具がない。NetTrain は独自世界。

2026 年の位置

  • 一番合う場面: 象徴解法、ノートブックデモ、データ可視化、ライセンス校の数学講義
  • 一番合わない場面: 深層学習、大規模データ処理、オープンソース協業
  • 一言: 「象徴計算が核心で、学校がライセンスを買ってくれるなら今でも一番」。

MATLAB (MATrix LABoratory) は 1984 年発売以来、電気・機械・自動車・航空分野で事実上の標準。2026 年版は R2026a。Simulink はブロック図ベースのシミュレーションツールで、MATLAB と対になる。

産業が離れられない理由

  • 認証。 DO-178C (航空)、ISO 26262 (自動車)、IEC 61508 (産業) で認証済みのモデルベース設計ツールチェーンを持つ。Simulink Coder がモデルから C コードを生成し、そのコードが認証を通る。
  • ツールボックス。 Control System、Signal Processing、Aerospace、Powertrain Blockset — 産業ドメイン 100 以上に検証済みアルゴリズムが組み込まれている。
  • HDL / Embedded Coder。 モデルから C/C++/Verilog/HDL/PLC を自動生成。組込みと FPGA ワークフローの標準。
  • 数値の安定性。 LAPACK の上に数十年のチューニング。行列演算の信頼性は圧倒的。

コード断片

% 状態空間シミュレーション
A = [-0.5 1; 0 -1];
B = [0; 1];
C = [1 0];
sys = ss(A, B, C, 0);
t = 0:0.01:10;
u = ones(size(t));
[y, t] = lsim(sys, u, t);
plot(t, y)

% 信号処理 — FFT
Fs = 1000;
t = 0:1/Fs:1-1/Fs;
x = sin(2*pi*50*t) + sin(2*pi*120*t) + randn(size(t));
Y = fft(x);
P2 = abs(Y/length(x));
plot(Fs*(0:(length(x)/2))/length(x), P2(1:length(x)/2+1))

2026 年の変化

  • MATLAB Online + MATLAB Mobile — ライセンスがあればブラウザ/スマホで動かせる。
  • AI Chat in MATLAB — IDE 内にアシスタント。コード説明、デバッグ、関数推薦。
  • Python 統合の強化 — py.* 名前空間で MATLAB から NumPy/PyTorch を呼ぶ。逆も matlab.engine で可能。
  • Apple Silicon ネイティブ — 2024 年 R2024a から ARM64 macOS ネイティブ。性能が大幅向上。

弱点

  • 価格。 学生 99、個人99、個人 149、企業 $940/年 (コア)。ツールボックスは別料金。研究室一つでツールボックス 20 個使えば数万ドルになる。
  • 言語の限界。 オブジェクト指向はぎこちなく、パッケージマネージャ (MATLAB File Exchange) は npm や PyPI に及ばない。
  • GIL に類する制約。 parfor は強力だが、分散は PCT (Parallel Computing Toolbox) 追加課金。
  • オープンソース陣営の不在。 GitHub Actions では回せない (ライセンス)。協業に摩擦。

位置

  • 一番合う場面: 工学教育 (EE/ME/AE)、自動車・航空・防衛 R&D、信号処理、制御
  • 一番合わない場面: データサイエンス・統計 (R)、機械学習 (Python)、学部 1 年の数学 (GeoGebra)
  • 一言: 「産業は離れられない。学界は少しずつ離れていく」。

4. Maple (Maplesoft) — Mathematica の永遠のライバル

Maple は 1980 年にウォータールー大学で始まった CAS。2025 年末に Maple 2025 が出ている。Mathematica としばしば比較されるが、思考モデルが違う。

Mathematica との違い

項目MathematicaMaple
言語パラダイム関数型 + パターンマッチ命令型 + 手続き型
ノートブックノートブック優先Worksheet (保守的) + Math Mode
強み象徴 + データ + 可視化微分方程式 + 数論 + 教科書統合
価格高い高い (少し安め)
学校採用米国・理工系で優勢カナダ + 欧州 + 一部の韓国

Maple の本当の強み

  • MapleSim — Simulink 対抗。物理ベースのモデリングが強い。
  • Maple Calculator + Maple Learn — 教科書と紐付いたワークフロー。学生は段階的解法を見られる。
  • MapleFlow — エンジニアリング計算書ツール。MathCAD 後継として地位を確立しつつある。
  • Grid Computing Toolbox — ノード分散が比較的単純。

コード断片

# ODE の解
ode := diff(y(x), x, x) + y(x) = sin(x);
sol := dsolve({ode, y(0) = 1, D(y)(0) = 0}, y(x));

# 数論
isprime(2^127 - 1);   # メルセンヌ素数
ifactor(2^256 - 1);

# 段階的解法
Student[Calculus1]:-ShowSolution(int(x^2 * exp(x), x));

位置

  • 一番合う場面: 工学の授業 (特に ODE/PDE)、学部数学の教室、MapleSim を使う自動車シミュレーション
  • 一番合わない場面: 象徴解法の絶対的な深さ (Mathematica が上)、機械学習、データ分析
  • 一言: 「Mathematica を買える学校なら二択になりうる。教科書統合が核心なら Maple」。

5. SageMath — オープンソース総合 CAS

SageMath は 2005 年に William Stein が始めたオープンソース数学システム。目標は明確だった — 「Mathematica/Maple/Magma のオープン代替」。2026 年は 9.x 後半。

構造 — 合成システム

Sage は初めから 他の道具のインタフェース として設計された。Python をインタフェース言語にし、内部で GAP、PARI、Singular、Maxima、FLINT、GMP、NumPy、SciPy、NetworkX など 100 を超えるパッケージを呼ぶ。

┌──────────────────────────────────────────────────┐
│            SageMath = 「組立品」                  │
│                                                  │
│  ユーザーインタフェース (Python + Sage 拡張)       │
│              │                                   │
│  ┌───────────▼───────────────────────────────┐   │
│  │ 象徴: Maxima, SymPy, Pynac                │   │
│  │ 数値: NumPy, SciPy, R                     │   │
│  │ 数論: PARI, FLINT, ECL                    │   │
│  │ 群論: GAP                                 │   │
│  │ 代数幾何: Singular, Macaulay2 (選択)      │   │
│  │ グラフ: NetworkX                          │   │
│  │ LP/MIP: GLPK, PPL, Coin-OR                │   │
│  └───────────────────────────────────────────┘   │
└──────────────────────────────────────────────────┘

コード断片

# Sage は Python のスーパーセット
# 数論
E = EllipticCurve([0, 0, 1, -1, 0])
print(E.rank())               # 0
print(E.j_invariant())

# 微分方程式
x = var('x')
y = function('y')(x)
de = diff(y, x, 2) + y == sin(x)
desolve(de, y, ics=[0, 1, 0])

# 多項式環
R.<x, y> = QQ[]
I = R.ideal(x^2 + y^2 - 1, x - y)
print(I.groebner_basis())

2026 年の状況

  • 開発速度 — コア開発者は減った。William Stein は CoCalc へ、一部は産業界へ。それでもパッチの流れは維持されている。
  • Jupyter 統合 — Sage ノートブックは Jupyter ベースが標準。
  • CoCalc がバックエンド — CoCalc が事実上 Sage のクラウドホスト。
  • AI 統合 — 自然言語から Sage コードへの変換が jupyter-ai で入った。精度はまだ保証されない。

位置

  • 一番合う場面: 数学博士課程、数論・代数幾何研究、学部数学 (特に高価なライセンスの代替)、無料教育
  • 一番合わない場面: 認証付き工学ワークフロー (MATLAB)、Mathematica の自然言語入力、閉形積分の精度
  • 一言: 「オープンソース CAS の終着点。学生が Mathematica を買えなければ SageMath」。

6. Julia 1.11 — 科学計算ファースト設計

Julia は 2012 年に MIT が発表した言語。スローガンは明快 — "Walks like Python, runs like C"。2024 年の 1.10 LTS、2025 年の安定版 1.11 を経て、2026 年は 1.12 へ向かっている。

Julia が解く問題 — 二言語問題

Python の科学計算には本質的欠陥がある — ホットループは結局 C/Fortran に降りる。NumPy が速いのは NumPy が C だからだ。Julia は 一つの言語で両方 をこなす — JIT コンパイル + 多重ディスパッチ + 強力な型システム。

コード断片

using DifferentialEquations, Plots

function lorenz!(du, u, p, t)
    σ, ρ, β = p
    du[1] = σ * (u[2] - u[1])
    du[2] = u[1] * (ρ - u[3]) - u[2]
    du[3] = u[1] * u[2] - β * u[3]
end

u0 = [1.0, 0.0, 0.0]
tspan = (0.0, 100.0)
p = (10.0, 28.0, 8/3)

prob = ODEProblem(lorenz!, u0, tspan, p)
sol = solve(prob, Tsit5(), reltol=1e-8, abstol=1e-8)
plot(sol, idxs=(1, 2, 3))

このコードは Python+NumPy で書いた同等版より通常 5〜50 倍速い。さらに SciML エコシステムは PDE、SDE、DAE、neural ODE まで統一インタフェースで扱う。

2026 年の Julia エコシステム

  • SciML — DifferentialEquations.jl、ModelingToolkit.jl、Symbolics.jl — 科学機械学習の標準スタック。
  • Flux.jl / Lux.jl — Julia ネイティブの ML。
  • Pluto.jl — リアクティブノートブック。Jupyter とは違う思考モデル (セルが依存グラフを持つ)。
  • Julia for HPC — DOE のスーパーコンピューターでの採用が増加。CliMA (気候モデリング)、Celeste (天体分類) など。
  • Symbolics.jl — Julia ネイティブ CAS。SymPy より速いという評価が多い。

弱点

  • コンパイル遅延。 "Time to first plot" 問題。1.9+ で PCG により大きく改善されたが、まだ気になる。
  • エコシステムのサイズ。 Python に比べて小さい。ライブラリ探索が難しい。
  • 企業の採用市場。 Python/R/MATLAB に比べ Julia の求人が少ない。学界 vs 産業の非対称。
  • バージョン安定性の認知。 1.x でもパッケージ互換性が崩れることがある。

位置

  • 一番合う場面: 科学機械学習、微分方程式解法、HPC、量子・プラズマ・気候シミュレーション、金融モデリング
  • 一番合わない場面: ウェブサービス、短いスクリプト、企業のデータ分析チーム (Python が標準)
  • 一言: 「数値 + 象徴 + 微分方程式を一つの言語で解きたいなら Julia 1.11 が答え」。

7. R + tidyverse + Posit (旧 RStudio) — 統計の標準

R は 1993 年に登場した統計専用言語。2026 年は 4.x。R 自体より重要なのは tidyverse エコシステムと、それを率いる会社 Posit (2022 年に RStudio から改名)。

なぜ R は死ななかったか

10 年間「Python が R を置き換える」と言われ続けた。2026 年、R はまだ生きている。理由:

  • 統計学者が作った言語。 lm、glm、summary、anova が一級関数。Python では statsmodels で似たことができるが、出力品質が違う。
  • tidyverse。 dplyr、tidyr、ggplot2、purrr、readr — Hadley Wickham が設計した一貫したインタフェース。データ分析の思考モデルがそのままコードになる。
  • CRAN。 パッケージの品質管理が PyPI より厳しい。学界が発表した統計手法はほぼ全て CRAN にある。
  • Quarto — R Markdown の後継。Posit が 2022 年に発表。Python、R、Julia、Observable をサポートする多言語ドキュメント。

コード断片

library(tidyverse)
library(lme4)

# tidyverse データパイプライン
mtcars |>
  as_tibble(rownames = "model") |>
  group_by(cyl) |>
  summarise(
    mean_mpg = mean(mpg),
    n = n(),
    .groups = "drop"
  ) |>
  ggplot(aes(x = factor(cyl), y = mean_mpg)) +
  geom_col(fill = "steelblue") +
  labs(x = "Cylinders", y = "Mean MPG")

# 混合効果モデル
model <- lmer(mpg ~ wt + (1 | cyl), data = mtcars)
summary(model)

Posit (旧 RStudio)

2022 年に RStudio が Posit へ改名した理由 — 「我々は R の会社ではない、データサイエンスの会社だ」。以後:

  • Positron — RStudio の後継 IDE。VS Code ベース、Python + R + Julia を対等に扱う。2024 年ベータ、2025 年安定版。RStudio は維持されるが新規開発は Positron へ。
  • Quarto — 多言語ドキュメントシステム。
  • Posit Cloud — ブラウザの R/Python 環境。
  • Shiny — R/Python 両対応のウェブアプリフレームワーク。

弱点

  • 速度。 R コアは速くない。data.table、Rcpp、arrow が補う。
  • 機械学習エコシステム。 Python (PyTorch/scikit-learn) に届かない。tidymodels が追っている。
  • エディタ依存。 RStudio/Positron の外では R 体験が落ちる。
  • 言語の一貫性。 S3/S4/R5/R6 のオブジェクトシステムが 4 種類 — 学習曲線が一定でない。

位置

  • 一番合う場面: 統計、疫学、臨床、社会科学、データジャーナリズム
  • 一番合わない場面: 深層学習、大規模 ETL、汎用バックエンド、リアルタイムシステム
  • 一言: 「データ分析が統計学に近ければ R + tidyverse。計算機科学に近ければ Python」。

8. Python 科学スタック — NumPy / SciPy / SymPy / Pandas / Polars

Python は 2026 年もデータ・科学・ML の事実上の標準言語。一つの道具ではなく スタック である。

スタック構造

┌──────────────────────────────────────────────────────┐
│              Python 科学スタック (2026)               │
│                                                      │
│  アプリ           ┌────────────────────────────┐    │
│                   │ Jupyter, Streamlit, Dash    │    │
│                   └────────────────────────────┘    │
│  統計 / ML        ┌────────────────────────────┐    │
│                   │ statsmodels, scikit-learn,  │    │
│                   │ PyTorch, JAX                │    │
│                   └────────────────────────────┘    │
│  データフレーム    ┌────────────────────────────┐    │
│                   │ Pandas 2.x, Polars, DuckDB  │    │
│                   └────────────────────────────┘    │
│  象徴 / CAS       ┌────────────────────────────┐    │
│                   │ SymPy                       │    │
│                   └────────────────────────────┘    │
│  数値 / 科学      ┌────────────────────────────┐    │
│                   │ NumPy 2.x, SciPy 1.14+,     │    │
│                   │ Matplotlib                  │    │
│                   └────────────────────────────┘    │
│  低レベル / 加速   ┌────────────────────────────┐    │
│                   │ Numba, Cython, mypyc        │    │
│                   └────────────────────────────┘    │
└──────────────────────────────────────────────────────┘

2026 年の注目点

  • NumPy 2.x — 2024 年 6 月に NumPy 2.0 リリース。ABI break があり 1 年でエコシステムが追随。dtype システムがより一貫した。
  • Pandas 2.x + PyArrow バックエンド — Arrow バックエンドがオプションからデフォルトへ移行中。
  • Polars — Rust 製のデータフレームライブラリ。大規模データで Pandas より速い。強力な Lazy API。
  • SymPy 1.13+ — 象徴計算。Mathematica より遅いが無料で Python ネイティブ。
  • DuckDB + Ibis — ノートブック内で OLAP クエリ。CSV/Parquet を SQL で直接処理。

コード断片

import numpy as np
import polars as pl
import sympy as sp

# 数値
A = np.random.randn(1000, 1000)
e = np.linalg.eigvals(A)

# Polars — Pandas より速いデータフレーム
df = (
    pl.scan_csv("sales.csv")
    .filter(pl.col("amount") > 100)
    .group_by("region")
    .agg(pl.col("amount").sum().alias("total"))
    .collect()
)

# SymPy 象徴解法
x = sp.Symbol("x")
integral = sp.integrate(sp.sin(x) * sp.exp(-x), x)
print(sp.latex(integral))

Python スタックの弱点

  • 速度。 ホットループは NumPy/Numba/Cython へ降ろさねばならない。二言語問題。
  • 依存地獄。 conda/pip/uv/poetry/pixi の 5 つが並存。2026 年は uv が標準に急速に近づいている。
  • 象徴の深さ。 SymPy は Mathematica/Maple の精度・速度に届かない。

位置

  • 一番合う場面: ほぼ全てのデータ・科学・ML ワークフロー、学部 1 年から博士まで汎用
  • 一番合わない場面: 認証付き工学 (MATLAB が標準)、高度な象徴解法 (Mathematica)、Julia 優位な PDE
  • 一言: 「迷ったら Python から始めるのが安全な選択」。

9. GeoGebra + Desmos — 教育現場の二大巨人

数学教育で最もよく使われる道具は Mathematica でも MATLAB でもない。GeoGebraDesmos である。

GeoGebra

  • 出自。 2001 年、オーストリア・ザルツブルク大学の Markus Hohenwarter が博士課程プロジェクトとして開始。
  • 位置付け。 幾何 + 代数 + 微積分 + 統計の統合ダイナミック数学。
  • 利用者。 世界 1 億人。学校ライセンスはほぼ無料。
  • モジュール。 Graphing、Geometry、3D Calculator、CAS、Classic、Notes、Suite — 2024 年に Suite として統合。
GeoGebra Suite (2026)
├── Graphing Calculator (Desmos 級の関数グラフ)
├── Geometry (ユークリッド作図)
├── 3D Calculator (空間可視化)
├── CAS Calculator (象徴計算、Maxima ベース)
├── Notes (デジタルホワイトボード)
└── Classic 6 (全機能統合デスクトップ)

Desmos

  • 出自。 2011 年、Eli Luberoff が創業。2022 年に教科部分を Amplify が買収、グラフ計算機は別個の非営利。
  • 位置付け。 「最高の関数グラフ計算機」+ K-12 教科書統合。
  • 利用者。 米国 K-12 の事実上の標準。SAT/ACT 認定。
  • 2024 年に Geometry Tool 発表 — GeoGebra Geometry と競合。

比較

項目GeoGebraDesmos
強み幾何 + CAS + 3D関数グラフ UX、教科活動
弱みUI が重いCAS が弱い、3D が弱い
価格無料 (財団)無料 (非営利)
韓国広く採用、EBS との協業一部学校、英語の壁
日本普及は中程度普及は弱い
モバイル公式 iOS/Android公式 iOS/Android

位置

  • GeoGebra は 幾何 + 可視化 + CAS が必要な学校・大学 1〜2 年に適合。
  • Desmos は 関数グラフ + 活動ベース学習 が中心の K-12 に適合。
  • 学年が上がって微積分、線形代数、微分方程式に進むと SageMath か Mathematica に卒業 する。

10. GAP / Macaulay2 / Magma / Singular — 特化代数

博士課程以上に上がると、総合道具が解けない狭い分野が現れる。そこに位置を確立した 特化 CAS を 4 つ見る。

GAP — 計算群論

GAP (Groups, Algorithms, Programming) は 1986 年に RWTH Aachen で始まった群論システム。2026 年は 4.13+。有限群、表現論、部分群束、群コホモロジーが中核。

gap> G := SymmetricGroup(5);
Sym( [ 1 .. 5 ] )
gap> Order(G);
120
gap> ConjugacyClasses(G);
[ ()^G, (1,2)^G, (1,2)(3,4)^G, (1,2,3)^G, ...]
gap> IsSimple(G);
false

Macaulay2 — 計算代数幾何

Macaulay2 は 1992 年に Daniel Grayson と Michael Stillman が始めた可換環 + 代数幾何システム。環、イデアル、グレブナー基底、自由分解、ホモロジー代数が中核。

i1 : R = QQ[x, y, z]
o1 = R
i2 : I = ideal(x^2 - y, y^2 - z, x*y - z)
o2 = ideal (x^2 - y, y^2 - z, x*y - z)
i3 : gens gb I
o3 = | yz-x z2-y2 xz-y2 y2-z xy-z x2-y |

Magma — 商用可換代数

Magma はシドニー大学の Computational Algebra Group が開発する 有料 システム (1993 年〜)。数論、代数幾何、符号理論、表現論で最強との評。GAP/M2 と一緒に使われることも多い。価格はライセンス交渉 — 学生ライセンスが別途存在する。SageMath が Magma の一部機能を呼び出すオプションはあるがライセンスが必要。

Singular — 多項式代数

Singular は 1984 年にカイザースラウテルン大学で始まった多項式計算システム。グレブナー基底、自由分解、特異点解析が中核。SageMath の多項式環バックエンドとしても使われる。

4 つの比較

システム出自強みライセンス
GAPRWTH Aachen有限群、表現論GPL
Macaulay2Illinois / Cornell可換環、自由分解GPL
MagmaSydney数論、上位代数商用
SingularTU Kaiserslautern多項式環、グレブナーGPL

位置

  • 学部ではほぼ使われない。博士課程の分野によっては必須。
  • SageMath が GAP、Singular を内蔵 — Sage 内から自然に呼べる。
  • Macaulay2 は Sage から別途呼ぶ (macaulay2.eval())。
  • Magma はライセンスがハードルなので学校のサイトライセンス次第。

11. CoCalc — クラウド SageMath + Jupyter

CoCalc は William Stein が 2013 年に始めたクラウド協業ノートブックプラットフォーム。SageMath の事実上のクラウドホスト。

何を提供するか

  • SageMath、Jupyter、R、Julia、Octave ノートブック をブラウザで。
  • フル Linux ターミナル — LaTeX コンパイル、gnuplot、git まで。
  • リアルタイム協業 — Google Docs 風の同時編集。
  • 課題 / 採点システム — 教師が学生のノートブックを受け取り自動採点。
  • タイムトラベル — 全編集履歴をスライダーで再生。

価格 (2026)

  • 無料 — インターネット接続なし、1GB メモリ、1 CPU。
  • 学生 — 月 $5 程度 (インターネット + より多いリソース)。
  • 教師 / 研究室 — 月 $14 から (サイトライセンス別途)。

CoCalc の核心価値

授業で 全員が同じ環境 を持つ。SageMath/Jupyter をインストールできない学生、M1 Mac で動かないパッケージ、Windows で壊れる LaTeX — これら全ての問題が消える。学部講義で大きな価値。

位置

  • 学部数学・統計講義の標準インフラ。
  • 博士研究には限界 — 大容量メモリ、GPU などは別途。
  • セルフホスト可能なオープンソース版 (KuCalc) も存在。

12. Wolfram Cloud + Wolfram Alpha API

Wolfram Cloud は Mathematica のクラウド版。Wolfram Alpha API は自然言語の数学解法を外部アプリから呼ぶ API。

Wolfram Cloud

  • ブラウザで Wolfram Language ノートブック。
  • Cloud Notebook + Deployable APIs — ノートブックをそのまま Web API としてデプロイ可能。
  • Free Tier あり。ただし計算量制限。
  • 価格 — 個人 月 $5〜、ビジネスは別途。

Wolfram Alpha API

import wolframalpha

client = wolframalpha.Client(app_id="XXXX")
res = client.query("integral of sin(x)^2 from 0 to pi")
print(next(res.results).text)
# -> "pi/2"
  • 自然言語入力 → Wolfram 式の評価結果。
  • チャットボット、教育アプリ、グラフ計算機によく組み込まれる。
  • 無料 — 月 2,000 コール。それ以上は有料。

活用シナリオ

  • チャットボットが数学質問を Alpha API に投げる。
  • 学習アプリが段階的解法を見せるのに使う。
  • Mathematica ライセンスを持たない人が一回限りの問題を解く。

13. JAX (Google) — 科学 + ML 融合

JAX は Google が 2018 年に発表したライブラリ。「NumPy + autograd + XLA」の組み合わせ。2026 年は科学計算と ML の交差点で最も熱い道具。

思考モデル

  • API はほぼ NumPy — 学習曲線が低い。
  • 全関数が 自動微分 される — jax.grad
  • 全関数が JIT コンパイル される — jax.jit で XLA (CPU/GPU/TPU) にコンパイル。
  • 関数型 + 純粋関数強制 — 副作用のあるコードは拒否される。
import jax
import jax.numpy as jnp

def rosenbrock(x):
    return jnp.sum(100.0 * (x[1:] - x[:-1]**2)**2 + (1 - x[:-1])**2)

# 勾配
grad_rb = jax.grad(rosenbrock)

# JIT コンパイル
jit_rb = jax.jit(rosenbrock)

# ベクトル化 — バッチ処理
batched = jax.vmap(rosenbrock)
xs = jnp.array([[1.0, 1.0], [2.0, 2.0]])
print(batched(xs))

JAX vs PyTorch

項目JAXPyTorch
思考モデル関数型、純粋関数OO、命令型
自動微分grad/jacrev/jacfwdautograd.backward
JITXLA、静的TorchScript/torch.compile
分散pjit / shard_mapDDP / FSDP
エコシステムJAX 系 (Flax, Optax, Equinox)PyTorch 圧倒的

科学計算における JAX

  • 物理シミュレーション — DeepMind の分子動力学、NASA の流体コード。
  • ベイズ推論 — NumPyro、BlackJAX。
  • Neural ODE / PDE — Diffrax、JAX-CFD。
  • 量子シミュレーション — JaxQuTip など。

弱点

  • 関数型思考強制 — 学習曲線あり。for ループを自由に使えない (jax.lax.scan などを使う)。
  • エコシステム分裂 — Flax、Haiku、Equinox など複数の神経網ライブラリ。標準がない。
  • JIT デバッグ — コンパイル済みコードのエラーメッセージは荒い。

位置

  • 科学 + ML の交差点 で標準になりつつある。
  • 純粋 ML なら PyTorch がまだ大きな標準。
  • 純粋数値なら NumPy/Julia で十分。JAX は微分 + 加速が両方必要なときに光る。

14. CAS 陣営 — Symbolics.jl / Reduce / Maxima / Pari-GP / SymPy

商用を除けばオープン CAS 陣営は豊か。

SymPy

  • Python ネイティブ。
  • 学生・エンジニアが最初に出会う CAS — Mathematica を買う前の試用。
  • 弱点 — 速度。大きな式で答えが返ってこない。
import sympy as sp
x = sp.Symbol("x")
sp.integrate(sp.sin(x) * sp.exp(-x), x)

Symbolics.jl

  • Julia ネイティブ CAS。ModelingToolkit と結合され PDE/ODE システムビルダーとして地位を得た。
  • 多重ディスパッチのおかげで大きな式で SymPy より速い。
using Symbolics

@variables x y
expr = x^2 + 2x*y + y^2
simplify(expr)

Maxima

  • Macsyma の直系子孫。MIT で 1960 年代に始まり、現在は GPL。
  • Lisp ベース、古い UX。SageMath の象徴バックエンドの一つ。
  • 深い数論、積分 — 意外と強い。

Reduce

  • 1968 年に Hearn が始める。2008 年にオープンソース化。
  • 物理学系で歴史的に強かった — Feynman ダイアグラム計算など。
  • 現代の道具としては珍しいが、まだ生きている。

PARI/GP

  • 1985 年に Bordeaux で始まる。数論専門 CAS。
  • 速い数論アルゴリズム — 素数判定、因数分解、楕円曲線。
  • C ライブラリ (libpari) + 対話シェル (GP)。
  • SageMath の数論バックエンド。
? factor(2^256 - 1)
? isprime(2^127 - 1)
? E = ellinit([0, 0, 1, -1, 0])
? ellanalyticrank(E)

5 つの比較

CAS言語強み利用者
SymPyPython一般 + 学習学生、エンジニア
Symbolics.jlJuliaPDE/ODE、MTK科学 ML
MaximaLisp積分、微分方程式、円熟Sage 利用者
ReduceLisp物理計算歴史的、一部の愛好家
PARI/GPC数論数論博士課程

15. 韓国 — KAIST / ソウル大学 / Posit Korea

韓国の大学数学・工学風景。

KAIST (韓国科学技術院)

  • 工学 — MATLAB が学部から深く根を張っている。EE/ME/AE のサイトライセンスが運営される。
  • 数学科 — Mathematica + SageMath を併用。学部の微積分・線形代数では Mathematica、研究室では SageMath がよく見られる。
  • AI 大学院 — Python/JAX/PyTorch 中心。R は一部の統計科目で。
  • 個別講義事例 — KAIST 数学科の SageMath 実習科目、産業工学科の R 統計科目が知られる。

ソウル大学校 (SNU)

  • 数理科学部 — Mathematica ライセンス + 一部 SageMath。
  • 工学部 — MATLAB + Python。
  • 統計学科 — R + tidyverse が強い。
  • AI 研究室 — Python + PyTorch / JAX

POSTECH

  • 規模は小さいが MATLAB / Mathematica のサイトライセンスを保持。
  • 数学科は SageMath / GAP / Macaulay2 などオープン CAS の利用度が高い。

産業 — 韓国

  • 自動車 (現代・起亜) — MATLAB / Simulink が深く根を張っている。認証ワークフローのため。
  • 半導体 (Samsung・SK ハイニックス) — MATLAB + Python。信号処理・計測に MATLAB、データ分析に Python。
  • 金融 — R + Python。分析は R、モデルデプロイは Python。
  • スタートアップ — Python ほぼ独占。R はデータアナリストの一部で。

韓国語資料

  • 韓国 SageMath グループ — 学会発表を中心に活動。
  • KAIST OCW — 一部の数学講義に SageMath 実習資料。
  • EBS / 教育放送 — GeoGebra を使う数学講義。

16. 日本 — 京都大学 / 東京大学 / RIKEN / Mathematica ライセンス

日本の大学風景。

東京大学 (東大)

  • 数理科学研究科 — Mathematica のサイトライセンス運営。学部生もアクセス可能。
  • 工学部 — MATLAB が学部全学年で根を張っている。
  • 物理学科 — Mathematica + Python + Julia 混合。
  • 情報理工 / AI — Python + PyTorch / JAX 中心。

京都大学 (京大)

  • 理学部数学教室 — Mathematica + SageMath。一部の博士課程学生が SageMath / GAP / Macaulay2 を使用。
  • 数理解析研究所 (RIMS) — 純粋数学研究中心。道具は研究者の好みに応じて多様。
  • 工学部 — MATLAB / Simulink が自動車・電子産業との連携で深い。

RIKEN

  • R-CCS (計算科学研究センター) — 富岳スーパーコンピュータを運営。Julia / Python / C++ / Fortran 混用。
  • AIP (革新知能統合研究センター) — Python + PyTorch + JAX 中心。

大阪大学 / 名古屋大学

  • 工学部が強い — MATLAB / Simulink が深い。
  • 数学科は SageMath / Mathematica 混用。

産業 — 日本

  • 自動車 (Toyota・Honda・Nissan) — MATLAB / Simulink が標準。MathWorks Japan 法人が強力。
  • 電子 (Sony・Panasonic・Renesas) — MATLAB + Python + C/C++
  • 金融 — R + Python。保守的な統計分析は R、新しいワークフローは Python。
  • AI スタートアップ (Preferred Networks、Sakana AI など) — Python + JAX / PyTorch

日本語資料

  • 京大の数理リテラシー — 京都大学の SageMath 資料が一部公開されている。
  • MathWorks Japan — MATLAB の日本語資料が豊富。
  • Wolfram Japan — Mathematica の日本語セミナーが定期開催。

17. 誰が何を選ぶべきか — 学生・研究・産業・教育

最後にシナリオ別の推奨。

学部 1〜2 年 (数学・科学・工学入門)

  • 基本は Python + NumPy + SymPy + Matplotlib。無料、一度覚えれば生涯使える。
  • 可視化・幾何 — GeoGebraDesmos
  • 学校が Mathematica/MATLAB のサイトライセンスを買ってくれるなら、それも一緒に身につけよう。

学部 3〜4 年 / 専攻決定後

  • 数学 / 統計専攻 — R + tidyverse、SageMath、SymPy。
  • 工学 (EE/ME/AE) — MATLAB + Simulink (産業標準の現実)。
  • CS / AI — Python + PyTorch / JAX。

博士課程 (純粋数学)

  • 数論 / 代数幾何 — SageMath + GAP + Macaulay2 + Singular。Magma のライセンスがあれば追加。
  • 解析 / PDE — Julia (DifferentialEquations.jl) または MATLAB + PDE Toolbox。
  • 応用数学 — Python + JAX + Julia 混用。

博士課程 (工学・物理)

  • 産業隣接 — MATLAB / Simulink 必須。
  • 学界隣接 — Python + Julia + 分野固有のツール
  • 量子 — Qiskit / Cirq + JAX

企業 R&D

  • 自動車・航空・防衛 — MATLAB / Simulink (認証要求)。
  • 半導体・通信 — MATLAB + Python。
  • 金融 — R + Python + Julia。
  • AI / スタートアップ — Python + PyTorch / JAX ほぼ独占。

教育 (教師)

  • K-12 — Desmos か GeoGebra。学生がモバイルでも使える。
  • 高校 — GeoGebra + Python (入門)
  • 大学教室 — CoCalc か Posit Cloud — 環境の統一が重要。

参考 / References