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メインフレーム & レガシーシステム 2026 — IBM z17 (2025.9) / IBM i / COBOL / RPG / JCL / CICS / watsonx Code Assistant for Z 深掘りガイド
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- Youngju Kim
- @fjvbn20031
プロローグ — 死んだと言われ続けて、まだそこにある
「メインフレームは死んだ」という見出しは 1990 年代から毎年出ている。それでも 2026 年 5 月、あなたが ATM で現金を引き出し、クレジットカードを切り、航空券を予約し、税金を払い、自治体に出生届を出すその瞬間、トランザクションの最後の一行は極めて高い確率で メインフレーム上の COBOL プログラム を通過する。
- IBM Z — 2025 年 9 月に z17 発表。Telum II プロセッサ、オンチップ AI アクセラレーション。
- IBM i (旧 AS/400) — 130,000 社以上が運用中。ERP、倉庫管理、保険。
- COBOL — 推定 200~220B(2,000 億)行が本番で動く。毎日。
- RPG / JCL / CICS / Db2 z/OS / IMS / PL/I — いずれも現役。
- Fujitsu BS2000 / NEC ACOS / Unisys ClearPath — 非 IBM メインフレームの世界。
そしてこの巨大なレガシーは、2023 年以降に AI という新しい変数と出会い、再び現代化のサイクルに入る。IBM watsonx Code Assistant for Z は COBOL を Java へ変換し、GitHub Copilot は COBOL 補完を支援し、AWS Mainframe Modernization はメインフレームのワークロードをクラウドに引き上げる。
この記事は 2026 年時点のメインフレームを扱う。どうやって死ななかったのか、新しいハードウェアは何か、AI はこの巨大なレガシーをどう削っているのか、そして — もしあなたが開発者なら — なぜ今 COBOL を学ぼうとする人がいるのか。
1章 · 2026 年のメインフレーム — 死ななかった巨人
まず数字から。2026 年時点のメインフレーム・エコシステムの推定:
| 項目 | 推定規模 |
|---|---|
| 本番稼働中の COBOL 行数 | 200~220B 行 |
| IBM i 稼働サイト | 130,000+ 社(Forrester/IBM 推定) |
| IBM Z システム導入数 | 世界で約 10,000+ サイト |
| IBM Z の一日のビジネストランザクション処理量 | 約 300 億件 |
| Fortune 500 のメインフレーム利用率 | 約 70% |
| 世界トップ 50 行のメインフレーム利用率 | 約 92% |
| メインフレームを経由するクレジットカード取引比率 | 約 87% |
(出典: IBM、Forrester、Gartner の市場推定 — 正確な数字は出典により異なる。本記事の数値はいずれも 2024~2025 年の公開資料に基づく推定値。)
「なぜ置き換えないのか」は誤った問いだ。正しい問いは 「置き換えないことが合理的な理由は何か」 である。答えは三つに圧縮される。
- 検証された信頼性 — z/OS の可用性はしばしば 99.999%(5 nine)以上と報告される。年間ダウンタイム約 5 分。新システムでこれを並ぶには年単位の時間が要る。
- 未検証の変更リスク > 変更の価値 — 2,000 万行の保険会社の基幹を Java に書き直すとする。2 年、1 億ドル。その間、新機能は出せない。CFO はサインしない。
- データ重力 — Db2 z/OS、IMS、VSAM に数十年蓄積されたデータがそこにある。データを動かす方がコードを動かすより難しい。
だからメインフレームは死ななかった。死ぬ代わりに、ゆっくり進化する。それがこの記事の主題だ。
2章 · IBM z17 (2025.9) — Telum II + 統合 AI
2025 年 9 月、IBM は z17 を発表した。前世代の z16 は 2022 年 4 月発売だったので、約 3 年周期だ。z17 の核は二つ。
Telum II プロセッサ
- 5nm 級プロセス(正確なノードは IBM は通常公開しない)
- 8 コア、5 GHz 帯クロック(z16 の Telum I に比べてコア性能向上)
- オンチップ AI アクセラレータ — Telum I のオンダイ AI 推論を強化。トランザクションの流れの中に不正検知などの ML 推論を 1ms 以内で挟み込める。
- L2 キャッシュ構造の改善、NUMA トポロジ最適化。
要するに、Telum II は トランザクションの中に AI 推論を埋め込める。カード決済が起きるまさにその瞬間に、同じチップ上で不正検知モデルが動く。GPU クラスタへデータを送る必要はない。
Spyre アクセラレータ (オプション)
z16 で初登場した IBM Spyre AI アクセラレータ(別途 PCIe カード)は、z17 でもオプションで提供される。Spyre はより大きなモデル(生成 AI 推論)向けの独立アクセラレータで、Telum II のオンチップ加速と併用できる。
何が変わったか (z16 比)
| 項目 | z16 (2022.4) | z17 (2025.9) |
|---|---|---|
| プロセッサ | Telum I | Telum II |
| オンチップ AI | あり(1 世代目) | 強化(2 世代目) |
| Spyre アクセラレータ | オプション(後期導入) | オプション(拡張) |
| メモリ帯域 | - | 改善(詳細は IBM 資料参照) |
| セキュリティ | Crypto Express 8S、耐量子暗号対応 | 同流れ + 強化 |
| 可用性 | 99.999% 以上 | 同クラス |
z17 は革命というより AI 統合の深化 だ。トランザクション + AI 推論 + セキュリティを一つのチップで完結させるという IBM のメッセージはより強くなった。
z17 を買うのは誰か
- グローバル銀行・カード会社 — 不正検知をトランザクション・インラインで。
- 大手保険会社 — クレーム処理 + リスクスコアリング。
- 政府・税務 — 大量バッチ + セキュリティ。
- 航空・物流 — 予約・在庫システムの基盤。
価格は公開されない。たいていは「数百万ドル〜」とだけ言われる。そしてその額を支払う会社は、それが合理的だと信じている。
3章 · IBM z16 — まだ現役
z17 が出たからといって z16 が消えたわけではない。2022 年 4 月発表の z16 は 2026 年現在も活発に販売・導入されている。メインフレームのライフサイクルは長い — 一度入ると 10 年は使う。
z16 の特徴を整理すると:
- Telum I プロセッサ — IBM が初めてオンチップ AI 加速を導入した世代。
- 耐量子暗号 — Crypto Express 8S カードと併用。NIST 標準化された PQC アルゴリズムの一部に対応。
- Pentide (IBM Telum) キャッシュ構造 — L2 を仮想 L3/L4 として活用し、約 256 MB 級の仮想 L4 キャッシュを実現する独特の設計。
- z/OS 2.5 / 3.1 対応。
銀行が z16 を導入したばかりなら、z17 に乗り換える動機は弱い。多くは z16 + ファームウェア更新 で 2030 年代前半までは運用するだろう。
4章 · IBM i (旧 AS/400) — 130K+ 社
IBM Z ほどには有名でないが、IBM のもうひとつのメインフレーム系列がある。IBM i — 1988 年発売の AS/400 の後継だ。
名前の歴史
- System/38 (1978)
- AS/400 (1988) — Application System/400。80~90 年代中堅企業 ERP の象徴。
- eServer iSeries (2000)
- System i (2006)
- IBM i (2008~現在) — OS 名であり、プラットフォーム名でもある。
ハードウェアは IBM Power サーバの上で動く。つまり IBM i は Power Systems のハードウェア + IBM i OS の組み合わせだ。2026 年時点では Power10 上で IBM i 7.5 / 7.6 などが動いている。
なぜ未だに 130,000 社が使うのか
- 単一オブジェクトモデル — ファイル、プログラム、DB オブジェクトが同じシステムオブジェクトモデルの中にある。運用がシンプル。
- TIMI (Technology Independent Machine Interface) — ハードウェア抽象化。新しい Power チップが出てもコンパイル済みプログラムがそのまま動く。
- 内蔵 Db2 for i — DB を別途運用しなくてよい。
- 運用コストが低い — メインフレーム水準としては。1 台で ERP・倉庫・財務を全部回せる。
主要利用業界
- 米国・欧州の中堅製造業
- 日本の食品・小売・物流企業
- 韓国でも一部の中堅製造・流通が運用(サイト数は非公開のものが多い)
- 欧州の保険会社
- 小売チェーン
ERP パッケージとしては JD Edwards、Infor (旧 SSA Global)、BPCS などが IBM i 上で動く。
RPG — IBM i の主力言語
IBM i の主力プログラミング言語は RPG (Report Program Generator)。次の章で深く掘る。
5章 · COBOL — 推定 200~220B 行が本番稼働
COBOL は 1959 年にグレース・ホッパーらを含む委員会が設計した言語だ。名前の意味は COmmon Business Oriented Language。60 年以上の言語が、まだ 200B 行が動く。
なぜそれほど多いのか
- 金融基幹システム — ほぼ全ての大手銀行のコアバンキング。
- 保険のクレーム/契約処理 — 自動車・生命・損害。
- 政府の税務・福祉 — 米国 IRS、韓国国税庁の一部、英国 HMRC など。
- 航空予約 — Sabre、Amadeus のような GDS の一部基盤に COBOL が残っている。
- 小売・製造 ERP — IBM i 上で RPG と組み合わせて。
200B 行という数字は 累計 だ。毎年新規に書かれる COBOL は減るが、消されもしない。だから行数は増え続ける。
COBOL コードの形
IDENTIFICATION DIVISION.
PROGRAM-ID. INTEREST-CALC.
AUTHOR. YJ.
*
ENVIRONMENT DIVISION.
CONFIGURATION SECTION.
SOURCE-COMPUTER. IBM-Z.
OBJECT-COMPUTER. IBM-Z.
*
DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 WS-PRINCIPAL PIC 9(7)V99 VALUE 1000000.00.
01 WS-RATE PIC 9(3)V99 VALUE 3.50.
01 WS-YEARS PIC 9(2) VALUE 5.
01 WS-INTEREST PIC 9(9)V99.
01 WS-TOTAL PIC 9(9)V99.
*
PROCEDURE DIVISION.
CALC-INTEREST.
COMPUTE WS-INTEREST = WS-PRINCIPAL * (WS-RATE / 100) * WS-YEARS.
COMPUTE WS-TOTAL = WS-PRINCIPAL + WS-INTEREST.
DISPLAY "Principal : " WS-PRINCIPAL.
DISPLAY "Interest : " WS-INTEREST.
DISPLAY "Total : " WS-TOTAL.
STOP RUN.
COBOL の特徴:
- 自然言語のような構文 —
COMPUTE,DISPLAY,STOP RUN。英文のように読める。 - 固定カラム書式 (伝統的) — 1-6 シーケンス、7 表示子、8-11 領域 A、12-72 領域 B。現代の COBOL は free-format にも対応。
- PIC 句 — データの形(picture)を定義。
PIC 9(7)V99は整数 7 桁、小数 2 桁の意味。 - DIVISION 構造 — IDENTIFICATION、ENVIRONMENT、DATA、PROCEDURE の 4 部構成。
COBOL 規格の流れ
- COBOL-60 → COBOL-68 → COBOL-74 → COBOL-85 (長らくの事実上の標準) → COBOL 2002 → COBOL 2014 → COBOL 2023。
- 現代規格は OOP、Unicode、XML/JSON 処理にも対応。
COBOL コンパイラ
- IBM Enterprise COBOL for z/OS — z/OS の正統。
- IBM COBOL for AIX / Linux on Z
- Micro Focus Visual COBOL (現在は OpenText 傘下) — Windows/Linux/メインフレーム互換。
- GnuCOBOL — オープンソース。C にトランスパイル。(後の章で詳述)
6章 · RPG / JCL / CICS / Db2 z/OS / IMS / PL/I
COBOL はメインフレーム言語の中で最も有名なだけだ。環境には他の中核技術がある。
RPG (Report Program Generator) — IBM i の主力
名前は「レポート生成器」だが、現代の RPG は汎用ビジネス言語だ。流れ:
- RPG II (1960 年代~)
- RPG III (System/38)
- RPG IV / RPG/ILE (AS/400 時代から現在)
- Free-format RPG (現代) — COBOL の free-format と同様、カラム位置に縛られない形態。
現代の free-format RPG 例:
**free
ctl-opt main(main);
dcl-proc main;
dcl-s principal packed(9:2) inz(1000000);
dcl-s rate packed(5:2) inz(3.50);
dcl-s years packed(2:0) inz(5);
dcl-s interest packed(11:2);
dcl-s total packed(11:2);
interest = principal * (rate / 100) * years;
total = principal + interest;
dsply ('Total: ' + %char(total));
end-proc;
RPG は データベースと非常に強く結合 している。SQL を RPG の中にインラインで書ける embedded SQL が標準だ。
JCL (Job Control Language)
z/OS でバッチ・ジョブを定義する言語。「不愉快な古いシェルスクリプト」と揶揄されるが、メインフレーム運用の血管だ。
//PAYROLL JOB (ACCT1234),'PAYROLL JOB',
// CLASS=A,MSGCLASS=X,REGION=4M
//STEP1 EXEC PGM=PAYCALC
//STEPLIB DD DSN=PROD.LOADLIB,DISP=SHR
//INPUT DD DSN=PROD.PAYROLL.MASTER,DISP=SHR
//OUTPUT DD DSN=PROD.PAYROLL.NEWRUN,DISP=(NEW,CATLG,DELETE),
// SPACE=(CYL,(10,5)),
// DCB=(LRECL=200,BLKSIZE=27800,RECFM=FB)
//SYSPRINT DD SYSOUT=*
JCL の特徴:
//で始まるカラム依存の構文。- JOB → EXEC → DD カード構造 — ジョブ → 実行ステップ → データセット。
- DSN でデータセット名、DISP で処分(SHR/MOD/NEW)、SPACE で領域確保。
- STEPLIB でライブラリ、SYSPRINT でログ出力。
JCL は運用者の資産だ。良い JCL の一行は会社を救う。悪い JCL の一行は会社を破産させる(プロダクションマスターを DISP=NEW,DELETE で消す、という永遠のジョーク)。
CICS (Customer Information Control System)
z/OS の トランザクション・モニタ。1969 年から稼働している。CICS は:
- 端末(伝統的に 3270)や Web/モバイルから来たリクエストを受け、
- トランザクション 単位でビジネスロジック(COBOL/PL/I など)を実行し、
- 結果を返す。
- 分散トランザクション(2PC)を処理し、Db2/IMS と統合される。
現代の CICS は CICS Transaction Server という名で z/OS 上で動く。REST/JSON インタフェースもサポートする。
Db2 z/OS (IBM Db2 for z/OS)
z/OS の標準リレーショナル DB。他環境の Db2 (LUW、for i) とはコードベースが別だ。2026 年時点で Db2 for z/OS V13 以降のバージョンが運用される。
Db2 z/OS のアイデンティティ:
- トランザクション処理 + データウェアハウス を一つのシステムで。
- Pentide キャッシュ + Telum オンチップ加速 + Db2 AI Query Optimizer など — メインフレーム HW と結合した性能。
- 巨大な累積データ — ペタバイト級の運用が普通。
IMS (Information Management System)
1968 年にアポロ計画のために作られた 階層型 DB + トランザクション・モニタ。リレーショナル DB(Db2)より古く、いくつかの大手銀行・航空・製造は今でも IMS DB と IMS TM を運用している。「古い = 使われていない」ではない — 古いから 検証済みで速い。
PL/I (Programming Language One)
1964 年に IBM が COBOL と Fortran を統合する野心で作った。結局両方を置き換えることはなかったが、一部の大型システム(特に欧州銀行、一部の OS コード)で今も使われる。
TEST: PROC OPTIONS(MAIN);
DCL PRINCIPAL FIXED DEC(9,2) INIT(1000000);
DCL RATE FIXED DEC(5,2) INIT(3.50);
DCL YEARS FIXED BIN(15) INIT(5);
DCL INTEREST FIXED DEC(11,2);
DCL TOTAL FIXED DEC(11,2);
INTEREST = PRINCIPAL * (RATE / 100) * YEARS;
TOTAL = PRINCIPAL + INTEREST;
PUT SKIP LIST('Total: ', TOTAL);
END TEST;
PL/I は COBOL より表現力は高いが学習曲線も急だ。「あるところにはあるが、新規には始まらない」。
7章 · Fujitsu BS2000 / NEC ACOS / Unisys ClearPath — 非 IBM メインフレーム
「メインフレーム = IBM」という認識はよく見るが、不正確だ。日本・欧州・米国の一部では、IBM ではないメインフレームが現在も稼働している。
Fujitsu BS2000 (日本/ドイツ)
- もとはドイツ Siemens の BS2000 OS。後に富士通が Siemens のコンピュータ事業を吸収。
- 現在は富士通の FUJITSU Server BS2000 ライン。OS は OSD/BC、BS2000/OSD などへ進化。
- 主にドイツ・オーストリア・スイスの政府・銀行・保険で運用。
- COBOL、ASSEMBLER、C/C++ をサポート。SQL DB (SESAM、UDS) もある。
- 富士通は日本国内向けのメインフレーム製品(PRIMEFORCE シリーズ等、年代によりラインアップが変動)も持つ — 最新の名称は富士通公式資料を参照。
NEC ACOS (日本)
- NEC の ACOS-4 OS 上で動くメインフレーム。日本政府・金融機関の一部基幹が ACOS で運用される。
- 日本郵政、一部の地方銀行などが運用。
- 独自の COBOL や 4GL の ADL (ACOS Data Language) などを持つ。
Unisys ClearPath
- 米国 Unisys のメインフレーム系列。OS は二系統:
- MCP (Master Control Program) — Burroughs B5000 (1961) の後継。ALGOL ベースの OS という、OS 歴史の化石。
- OS 2200 — Sperry UNIVAC の後継。
- ClearPath Dorado (2200 系)、ClearPath Libra (MCP 系) などのブランド名で整理されてきた。
- 近年 Unisys はメインフレーム HW を x86 サーバ上でエミュレートする ClearPath Forward モデルへ移行。
- 米国の航空、政府、一部銀行で稼働。
まとめ — 非 IBM メインフレームの共通点
| 項目 | 共通点 |
|---|---|
| シェア | IBM より小さいがゼロではない |
| 拠点 | 地域集中(日本・ドイツ・米国) |
| 移行圧力 | IBM Z より大きい。後継世代の保証が弱いため |
| 現代化経路 | 多くは IBM Z へ移行、または Linux/クラウドへ |
8章 · AWS Mainframe Modernization
2022 年に AWS は AWS Mainframe Modernization (AWS MMA) サービスをローンチした。メインフレーム・ワークロードを AWS に持ち上げるためのマネージドサービスだ。
二つのパターン
AWS MMA が公式に推す二つの移行戦略:
- Replatform (再プラットフォーム) — COBOL はそのまま、メインフレームの実行環境だけを別の場所(AWS のコンテナ/EC2)に移す。AWS は Micro Focus(現 OpenText)ランタイムを使うオプションを提供。
- Refactor (再ファクタリング) — COBOL を Java に自動変換。AWS は Blu Age を買収・統合した。Blu Age は COBOL をモダンな Java/Spring/Angular に変換するツール。
Replatform の方が多い
大規模な移行のほとんどは Replatform。理由:
- コードに触らない — ビジネスロジックのリスクがない。
- メインフレーム運用コスト削減 — IBM のライセンス/MIPS 費を AWS の計算費に置き換え。
- モダンなツール統合 — CI/CD、コンテナ、オブザーバビリティ。
ただし落とし穴もある。
- データ移行 — Db2 z/OS → Aurora/RDS PostgreSQL。簡単ではない。トリガ・ストアドプロシージャ・SQL 方言差が全部出てくる。
- トランザクションモニタの再現 — CICS の挙動を厳密に再現するのは難しい。
- MIPS 価格比較 — 「節約」が常に真実ではない。同等の可用性・性能を取りに行くと似た費用になることもある。
流れ
[メインフレーム] [AWS]
COBOL ソース ────────▶ COBOL ソース (または Java 変換)
JCL バッチ ────────▶ AWS Batch / EventBridge Scheduler
CICS ────────▶ Mainframe Modernization Runtime
Db2 z/OS ────────▶ Aurora PostgreSQL / Db2 LUW
VSAM ────────▶ DynamoDB / S3 / Aurora
IMS ────────▶ 個別マッピング(最難関)
AWS は移行の評価・分析・カットオーバーまでをマネージドで提供する。それでもメインフレームのベテランと AWS ソリューションアーキテクトの組み合わせは必要だ。
9章 · Micro Focus → OpenText (2022) → Visual COBOL
メインフレーム現代化の中心に長くいたのが Micro Focus だ。英国本社の会社で、COBOL コンパイラ/ランタイムの最大級の供給元のひとつ。
2022 年 — OpenText が買収
2022 年、カナダの情報管理企業 OpenText が Micro Focus を約 60 億ドルで買収した。買収完了に伴い、Micro Focus ブランドは段階的に OpenText ブランドへ統合中だ。
Visual COBOL — 主力製品
Micro Focus(現 OpenText)の主力は Visual COBOL。それが行うこと:
- メインフレームで動く COBOL を Windows/Linux/.NET/JVM 上でも実行可能にする。
- Visual Studio / IntelliJ / Eclipse 連携 — 現代の IDE で COBOL を編集・デバッグ・リファクタ。
- CICS 模倣 — 同等のトランザクション環境を提供し、メインフレームの CICS アプリをそのまま移行できる。
- JCL 変換 — メインフレームの JCL を非メインフレーム環境で実行可能にする。
Enterprise Server / Enterprise Developer
OpenText のメインフレーム関連ラインは概ね:
- Enterprise Developer — 開発者向け IDE + コンパイラ。
- Enterprise Server — プロダクションランタイム(CICS 互換、IMS 互換環境など)。
- AppMaster Builder, Enterprise Test Server, Modernization Workbench など補助ツール。
AWS Mainframe Modernization の Replatform オプションの一部は、この OpenText スタック上で動く。
意味
OpenText は メインフレームを殺さない。彼らはメインフレームのコードを別の環境で動かし続けることをビジネスにしている。彼らのモデルは「COBOL は 2030 年代も生きている」という前提に立っている。
10章 · IBM watsonx Code Assistant for Z (2023.8) — AI による COBOL 現代化
2023 年 8 月、IBM は watsonx Code Assistant for Z を発表した。メインフレーム COBOL を Java へ変換することを助ける AI ツールだ。
何をするのか
- COBOL → Java 変換 — 自動/半自動。ビジネスロジックをモダンな Java へ移す。
- コード理解 (Code Explanation) — 1980 年代に書かれた COBOL を LLM が説明する。「このモジュールは何をするか」のような自然言語問い合わせ。
- テスト生成 — 既存 COBOL のテストケースを生成。
- 段階的変換 — 一度に全部ではなく、モジュール単位・サービス単位で。
動作モデル
watsonx Code Assistant for Z は LLM(IBM の granite コードモデルファミリーをベースに)+ メインフレーム特化のドメイン知識の組み合わせだ。ただの ChatGPT ではなく、COBOL/JCL/CICS のパターンを学習したモデル が裏側にいる。
限界と現実
IBM のマーケティングを額面通りに受け取ってはいけない。実際には:
- 自動変換された Java はレビューが必要 — LLM 生成コードは常にそうだ。
- ビジネスロジックの細部 — COBOL の十進演算(PIC 9V99)、EBCDIC、表示子(indicator)の意味 — これらが損失なく移るとは限らない。
- データ移行は別問題 — コードを移しただけでは終わらない。
ただし 出発点 としては価値がある。ゼロから始めるのではなく、AI が作った最初のパスを人間が磨く。
2024~2025 年の流れ
- IBM は watsonx Code Assistant ラインを一般化 — Code Assistant for Java、for Ansible なども提供。
- IBM Z 版はより大きなケースに適用 — ある保険会社が 800 万行の COBOL を段階評価。
- 競合: Amazon Q Developer(旧 CodeWhisperer)のメインフレーム対応、GitHub Copilot の COBOL 対応。
11章 · GitHub Copilot の COBOL 対応
GitHub Copilot は 2021 年に GA。当初は JavaScript・Python・TypeScript で有名だった。言語サポートは時間とともに拡大し、COBOL 補完にも対応 している。
実際の体験
COBOL で Copilot はどう助けてくれるか:
- PIC 句の補完 — 変数名を入力すると
PIC 9(7)V99のような PICTURE 句を推定。 - PARAGRAPH 名と流れの提案 — 次に来る PERFORM、MOVE、COMPUTE を推定。
- JCL 生成 — 自然言語コメントから JCL スニペット。
- Db2 embedded SQL —
EXEC SQL ... END-EXECブロックの自動補完。
限界
- 80 カラム書式の取り扱い — 伝統的なカラムベースの COBOL は LLM が扱いづらい。Free-format の方がうまく動く。
- 社内コーディング規約 — Copilot は一般的なパターンを知る。社内命名規則・標準は知らない。
- テストデータの意味 — ビジネスデータの意味を知らない。
Copilot vs watsonx Code Assistant for Z
- Copilot — 汎用コーディング支援。COBOL をサポートするが特化はしていない。
- watsonx CA for Z — メインフレーム特化。コード変換・理解に最適化。
両者は競合というより 層が違う。日常コーディングは Copilot、大規模変換プロジェクトは watsonx。
12章 · zCX (z/OS コンテナ) + Linux on Z + LinuxONE
メインフレームをクラウド時代に引き寄せるもうひとつの流れが コンテナと Linux だ。
zCX (z/OS Container Extensions)
2019 年に導入された z/OS の機能。z/OS の中で Docker コンテナを実行 する。z/OS 内に Linux on Z 環境を組み込み仮想マシンとして立ち上げ、その中でコンテナを動かす。
なぜ重要か:
- メインフレームのデータ(Db2 z/OS、VSAM)に 低遅延 でアクセス可能。
- Kafka、Elastic、Grafana のようなモダン・スタックをメインフレームの隣に置ける。
- トランザクション基盤を触らずに モダンなインタフェース を被せられる。
Linux on Z
z ハードウェア上で直接 Linux を動かす モード。z/OS と同じ LPAR で分割でき、一台のメインフレームに複数環境を同居させる。
- 主なディストリビューション: RHEL on Z、SUSE on Z、Ubuntu on Z。
- メインフレームの信頼性を Linux ワークロードへ拡張。
- 単一システム内で数百〜数千の Linux VM/コンテナを運用する構成。
IBM LinuxONE
Linux 専用メインフレーム。ハードは IBM Z と同じ系列だが、z/OS は載らない。つまり「メインフレーム信頼性 + Linux 専用」。主な用途:
- 大規模決済処理(ブロックチェーン・ノードホスティング含む)。
- データ保護が重要な環境(IBM Cloud Hyper Protect と組み合わせ)。
- グリーンデータセンター(同一ワークロードで x86 より少ない電力)。
IBM Cloud Hyper Protect
IBM Cloud の Confidential Computing ライン。メインフレームのセキュリティ技術(Crypto Express、Secure Service Container)をクラウドサービスとして提供。鍵管理、信頼仮想サーバ、DB などをメインフレーム級セキュリティでホスト。
13章 · Hercules + GnuCOBOL — オープン・エミュレーション
自宅でメインフレームを触れるか? 触れる。
Hercules — System/370 / ESA/390 / z/Architecture エミュレータ
オープンソースで公開された メインフレーム・エミュレータ。一般 PC/Mac/Linux 上で z/Architecture を模倣する。ただし:
- 商用 z/OS にはライセンスが必要 — 個人が合法的に z/OS を動かすのは難しい。
- MVS 3.8j のような古い IBM OS はパブリックドメイン — 1970~80 年代のメインフレーム体験は可能。
- Linux on Z — 合法かつ無料。RHEL/SUSE/Ubuntu の s390x ビルドを Hercules 上で動かせる。
GnuCOBOL
オープンソースの COBOL コンパイラ。COBOL を C にトランスパイル し、その後通常の C コンパイラでビルドする。
# インストール(例: macOS の Homebrew)
brew install gnu-cobol
# コンパイル
cobc -x -o interest interest.cob
# 実行
./interest
- COBOL 85 / 2002 / 2014 の大きな部分をサポート。
- IBM OS 固有機能(CICS、Db2 z/OS など)はサポート外。
- 学習・教育・小規模運用に向く。
学習ルート
- COBOL を初めて学ぶなら: GnuCOBOL + VS Code(または Eclipse) から。
- メインフレーム体験が欲しいなら: Hercules + MVS 3.8j + IBM Z Trial または IBM Z 学習プログラム。
- IBM は学生/初心者向けに IBM Z Xplore、Master the Mainframe 等の無償学習プログラムを長く運営している(名称や内容は時期で変動 — IBM 公式ページで確認)。
14章 · 現代化パターン — Strangler Fig と Anti-Corruption Layer
レガシーを置き換えるパターンは、実はメインフレーム特有の話ではない。次の二つが最も有名かつ実用的だ。
Strangler Fig パターン (Martin Fowler)
名前の由来はオーストラリアのイチジク(strangler fig)— 他の木を巻きながら育ち、いずれ元の木を枯らして自分が取って代わる木。マーチン・ファウラーが 2004 年の記事でシステム刷新にこの比喩を使ったのが始まり。
戦略:
- レガシーシステムの前に プロキシ/ファサード を置く。
- 新しいリクエストの一部を 新システム に振る。
- 段階的に、より多くのリクエストを新システムへ。
- ある日、レガシーは 0% のトラフィックになる。そこで初めて撤去。
[クライアント] ──▶ [ファサード/プロキシ] ──▶ [レガシー メインフレーム]
│
└──────────────────▶ [新マイクロサービス]
(徐々にルーティング増)
長所:
- ビッグバン移行のリスクなし — 一度に 100% 移さない。
- ロールバック可能 — 新システムが壊れたらルーティングを戻す。
- 段階的な学習 — トラフィックを増やしながら運用ノウハウを積む。
短所:
- 何年もかかる — 即答ではない。
- 二重運用コスト — 移行期間中は両方回す必要。
- データ同期 — 両方が同じデータを見る期間、同期コストがかかる。
Anti-corruption Layer (Eric Evans, DDD)
ドメイン駆動設計(DDD)のパターンのひとつ。レガシーと新システムの間に 翻訳レイヤ を挟む。
[新ドメインモデル] ──▶ [Anti-corruption Layer] ──▶ [レガシー モデル]
(きれいなモデル) (変換/マッピング/隔離) (古いモデル)
目的:
- レガシーの妙な概念(60 年分のビジネス前提)を新システムに 染み出させない。
- 新システムは自分自身のきれいなモデルを持つ。
- 翻訳コストを一箇所に集める。
Strangler Fig と Anti-corruption Layer は セットで使う。Strangler はルーティング・パターン、Anti-corruption はその裏側のドメインモデル保護装置。
実戦 — どこから始めるか
- 箱を描く — メインフレーム上のモジュールをドメイン単位でグループ化。
- 変更頻度 + リスク で優先順位 — よく変わる/リスクの高い部分から分離。
- 読み取りから分離 — 参照トラフィックを新 DB(リードレプリカ)に移すのが最も簡単。
- 書き込みは慎重に — デュアルライト(レガシー + 新)を経て、最後に新システムのみへ。
- モニタリングと観測 — 両システムの応答を比較(シャドー・トラフィック)。
- ロールバック計画 — 常に。
15章 · 韓国金融機関 — KB / 新韓 / ウリィ / ハナ / 企業銀行 / 農協のメインフレーム
韓国金融機関のメインフレーム運用は一部公開・一部推定だ。2024~2025 年の公開情報と業界推定に基づく一般像:
(以下は公知の業界知識に基づく整理であり、各銀行の正確なシステム構成は非公開が多い。推定が含まれる。)
大きな絵
- 5 大市中銀行 + NH 農協 + IBK 企業銀行 — 多くは IBM Z(またはその前世代)を次世代基盤と併用して運用してきた。
- 次世代プロジェクト — 2000 年代後半から 2010 年代に大規模な次世代事業が複数回行われ、メインフレーム依存を減らす方向と維持する方向が共存。
- 2020 年代の流れ — クラウド移行検討、一部システムの段階的ダウンサイジング、AI 統合の取り組み。
銀行別の一般的流れ(公開報道・業界知識ベースの一般論)
| 銀行 | 一般的流れ(業界知識) |
|---|---|
| KB 国民 | メインフレーム + 自社の次世代システム。クラウド移行を積極検討。 |
| 新韓 | メインフレーム運用。AI 連携に積極的。 |
| ウリィ | 次世代システム事業進行中。 |
| ハナ | 自社次世代システム + 一部メインフレーム。 |
| IBK 企業 | メインフレーム運用。 |
| NH 農協 | IBM Z 運用。規模上、韓国国内最大級のメインフレーム利用者のひとつ。 |
(注: 上記は公知の業界知識に基づく整理で、各銀行の正確な構成は非公開が多い。推定が含まれる。)
韓国のメインフレーム人材市場
- 60~70 代のベテランが基幹運用を担うケースが多い。
- 新規流入は少ない — メインフレームを教える大学がほぼない。
- そのため 報酬が上がる — COBOL/RPG/JCL を理解し韓国語が通じる人は事実上値段を自分で決められる。
- IBM Korea の Master the Mainframe / Z Xplore 韓国プログラムが新規流入の入口となってきた。
韓国の非金融
- 公共・税務 — 一部システムでメインフレーム運用。
- 航空 — 大韓航空・アシアナなどの一部システム。
- 通信 — 一部基盤。
- 製造・流通 — IBM i 運用サイトが多数あるとされる。
16章 · 日本 — 三菱UFJ / SMBC / みずほ / NTT データ / Fujitsu BS2000
日本はメインフレームのもうひとつの拠点だ。そして韓国と異なり、日本自身のメインフレーム産業 がある(富士通、NEC、日立)。これが日本特有の事情を作る。
3 メガバンクの一般像
(公開資料・業界知識に基づく一般的な整理。正確なシステム構成は非公開が多い。)
| 銀行 | 一般的流れ(業界知識) |
|---|---|
| 三菱UFJ (MUFG) | メインフレーム運用。2010 年代の大規模統合後は安定運用。 |
| SMBC (三井住友) | メインフレーム + 自社次世代。 |
| みずほ | 2002・2011・2021 年のシステム障害で有名。以降は安定性確保に集中。 |
NTT データ
日本 SI 市場の中核。公共・金融基幹システムの構築・運用パートナー。NTT データはメインフレーム移行・運用受託を大規模に行う。
富士通 — 自社メインフレームを持つ
- FUJITSU BS2000 — ドイツ発のメインフレーム。欧州 + 日本の一部で運用。
- 日本国内向けメインフレームのラインアップ(年代によって名称・構成は変動 — 最新は富士通公式資料参照)。
- 富士通は 2020 年代にメインフレーム事業の一部整理を発表 — 新規メインフレーム開発の停止、x86 ベースの GS / PRIMERGY ラインへの移行などが報じられた(正確な日程・範囲は富士通の公式発表ベース)。
- この流れは日本のメインフレーム市場に相当の影響を与える。
NEC ACOS
- 日本政府の一部、自治体、一部の銀行が運用。
- NEC もメインフレーム事業の段階的変換を進める。
日立
- かつての日本メインフレームの一角。現在はメインフレームそのものより システム統合・運用サービス が中心。
日本の人材市場
- 韓国と同様、ベテラン依存 + 新規流入不足。
- 日本は NTT データ・富士通・NEC・日立・日本 IBM のような大型 SI が人材を吸収する構造のため、人材プールが企業単位で循環する。
17章 · COBOL を学ぶべき人は誰か — 金融 / 保険 / 政府 / 学術
2026 年に新しい言語を学ぶとして、COBOL は第一候補ではないだろう。だが 特定の人にとっては第一候補になり得る。誰がなぜ。
良い候補
- 金融機関への就職を考えている人 — 銀行 IT、保険 IT はメインフレーム運用を知っている人を強く重んじる。代替が効かない。
- 公共・税務・福祉 IT — 韓国・日本・米国はいずれも政府系システムの一部に COBOL を抱える。
- 情報システム・コンサルティング — 移行プロジェクトは今後 10~20 年の市場。
- 学術的関心 — 60 年の言語がどう生き延びてきたかは、それ自体がコンピュータ科学のケーススタディ。
- 報酬を最大化したい人 — 単位時間あたり単価が非常に高いことがある(供給が少ないため)。
あまり向かない候補
- 2026 年に最初のプログラミング言語を選ぶ人 — Python/JavaScript/Go の方が良い。
- 起業家 — 新規プロダクトを COBOL で作る人はいない。
- AI/ML エンジニア — その領域は Python が握っている。
現実的な学習ルート
- GnuCOBOL を入れる — ローカルで COBOL をコンパイル・実行。
- COBOL の基礎 —
IDENTIFICATION / ENVIRONMENT / DATA / PROCEDURE DIVISION。PIC 句。PERFORM。 - ファイル処理 — 順次・索引・相対ファイル。
- DB 連携 — Embedded SQL。
- JCL — メインフレーム環境でジョブをどう回すか。
- CICS の基礎 — トランザクション処理。
- メインフレーム環境の体験 — IBM Z Xplore / Master the Mainframe(名称・運営形態は時期により変動 — IBM 公式ページ確認)。
- 現代化ツール — Visual COBOL、watsonx Code Assistant for Z の体験/評価版。
時間投資
- 基礎 COBOL — 100~200 時間。
- 実戦的なメインフレーム運用(JCL/CICS/Db2 z/OS)— 1~2 年の現場経験。
言語そのものは難しくない。環境 が難しい。それが参入障壁であり、同時に機会だ。
エピローグ — 巨人はゆっくり、非常にゆっくり動く
メインフレームは死なない。少なくとも 2030 年代半ばまでは。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2022.4 | IBM z16 発表(Telum I、耐量子暗号) |
| 2023.8 | IBM watsonx Code Assistant for Z 発表 |
| 2022 | OpenText が Micro Focus 買収(Visual COBOL の新オーナー) |
| 2022 | AWS Mainframe Modernization GA |
| 2025.9 | IBM z17 発表(Telum II) |
| 2026~ | AI 連携による現代化が本格的に広がる段階 |
全体像
- ハードは進化 — Telum II がオンチップ AI を強化。z17 は z16 の自然な後継。
- ソフトは保存 — 200B 行の COBOL は消えない。動かされるだけだ。
- AI は加速器 — watsonx、Copilot、Amazon Q が現代化作業を人手だけの時代より速くする。
- クラウドは選択肢 — AWS MMA、IBM Cloud Hyper Protect、Linux on Z、LinuxONE。
- 運用はやはり人 — 良いメインフレーム運用者は会社を救う。
次回予告
候補:
- JCL 実戦 — 最初の一行から SYSPRINT まで
- COBOL → Java 変換ハンズオン — watsonx Code Assistant for Z のデモを追う
- Db2 z/OS と PostgreSQL の違い — 移行が難しい本当の理由
「古いコードはどこかで生きている。私たちはそれを殺すのではなく、隣にゆっくり育てた新しい木がいつか場所を引き継ぐようにする」— Strangler Fig という比喩そのものに従って。
— メインフレーム 2026、了。
参考 / References
- IBM Z 公式
- IBM z17 発表資料 (IBM Newsroom)
- IBM z16 — Telum プロセッサ
- IBM i 公式
- IBM Db2 for z/OS
- IBM CICS Transaction Server
- IBM IMS
- IBM Enterprise COBOL for z/OS
- IBM watsonx Code Assistant for Z
- IBM LinuxONE
- IBM Cloud Hyper Protect
- Linux on Z (IBM)
- AWS Mainframe Modernization
- OpenText (Micro Focus 買収)
- Visual COBOL — OpenText
- Fujitsu BS2000
- NEC ACOS
- Unisys ClearPath
- GitHub Copilot
- Hercules emulator
- GnuCOBOL
- Martin Fowler — StranglerFigApplication
- Eric Evans — Domain-Driven Design (Anti-corruption Layer)
- COBOL 規格 (ISO/IEC 1989)
- IBM Z Xplore / Master the Mainframe (学習プログラム)