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工業数学シリーズ 第18回:フーリエ級数

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工業数学シリーズ 第18回:フーリエ級数

フーリエ級数の核心メッセージは驚くほど単純です。複雑な周期関数もサインとコサインの和に分解できるということです。信号処理とPDEを学ぶ立場からは、この一文がほぼ出発点です。

なぜ周期関数を分解するのか

複雑な波形をそのまま扱うよりも、単純な振動の和として見る方が解析しやすいです。各振動は周波数と振幅を持つので、関数の構造を「どの周波数成分がどれだけ混ざっているか」で理解できます。

周期2L2Lの関数のフーリエ級数は通常

f(x)=a02+n=1(ancosnπxL+bnsinnπxL)f(x) = \frac{a_0}{2} + \sum_{n=1}^{\infty}\left(a_n \cos \frac{n\pi x}{L} + b_n \sin \frac{n\pi x}{L}\right)

のように書きます。

なぜサインとコサインなのか

サインとコサインは互いに直交します。つまり異なる周波数成分がきれいに分離されます。おかげで関数に含まれる各周波数の量を積分で取り出すことができます。

係数の意味

係数は以下のように求めます。

an=1LLLf(x)cosnπxLdxa_n = \frac{1}{L}\int_{-L}^{L} f(x)\cos \frac{n\pi x}{L}\,dx

bn=1LLLf(x)sinnπxLdxb_n = \frac{1}{L}\int_{-L}^{L} f(x)\sin \frac{n\pi x}{L}\,dx

つまりf(x)f(x)が特定の周波数のコサインやサインとどれだけ似ているかを射影して測定することです。

手で見る例題

区間[π,π][-\pi, \pi]

f(x)=xf(x)=x

を考えてみましょう。この関数は奇関数なのでコサイン係数は0で、サイン係数だけ残ります。

計算すると

bn=2(1)n+1nb_n = \frac{2(-1)^{n+1}}{n}

となり

x=2(sinx12sin2x+13sin3x)x = 2\left(\sin x - \frac{1}{2}\sin 2x + \frac{1}{3}\sin 3x - \cdots \right)

と書けます。

ここで重要な点は、直線関数でさえ周期的に繋げてみると振動成分の和で表せるということです。

収束をどう理解するか

関数が十分に良ければフーリエ級数は元の関数に収束します。不連続がある場合はジャンプの両側の平均に向かうなどの細かい規則がありますが、入門段階では「良い関数なら周波数成分の和で復元可能」という事実がより重要です。

工学応用

信号処理

オーディオ、通信信号、センサデータはすべて周波数成分で解析する場合が多いです。

熱方程式

境界条件のあるPDEを解くとき、解をサイン/コサイン級数で展開する戦略が基本的に登場します。

圧縮とフィルタリング

重要な周波数成分だけ残したり、特定の帯域を除去する視点がここから出発します。

よくある間違い

公式を暗記して直交性の意味を見失う

係数公式は暗記よりも「射影」という解釈を理解する方がはるかに長持ちします。

奇関数・偶関数の性質を活用しない

対称性を活用すれば計算が非常に単純になります。

不連続関数で完璧な点別一致を期待する

フーリエ級数は非常に強力ですが、ジャンプ付近では別途の収束解析が必要です。

一行まとめ

フーリエ級数は周期関数を複数の周波数のサインとコサイン成分に分解するツールです。

次回予告

次の記事では周期関数からもう一歩進んで、非周期信号を扱うフーリエ変換と周波数領域の視点を見ていきます。

参考資料

  • Erwin Kreyszig, Advanced Engineering Mathematics, 10th Edition
  • Ronald N. Bracewell, The Fourier Transform and Its Applications
  • Alan V. Oppenheim, Alan S. Willsky, Signals and Systems