Skip to content
Published on

工業数学シリーズ 第6回:高次微分方程式と初期値問題

Authors

工業数学シリーズ 第6回:高次微分方程式と初期値問題

これまで主に1次と2次の微分方程式を見てきました。しかし実際のシステムをより精密にモデリングすると、3次以上の高次方程式も自然と登場します。核心は、複雑に見えても基本原理は同じだという点です。

高次微分方程式とは

最高次の導関数が3次以上の式を高次微分方程式と呼びます。例えば

yy2y=0y''' - y'' - 2y' = 0

のような式です。

定数係数線形形態であれば、やはり指数関数erxe^{rx}を代入して特性方程式を作ることができます。

なぜ初期条件の数が次数と同じなのか

nn次微分方程式の一般解には通常、独立な定数がnn個含まれます。したがって唯一の解を定めるには条件もnn個必要です。

例えば3次方程式であれば通常

y(0),y(0),y(0)y(0), \quad y'(0), \quad y''(0)

のように3つの初期条件が必要です。

この観点は非常に重要です。微分方程式を解くとは結局、定数を条件で決めて一つの実際の運動を選ぶ過程だからです。

手で解く例題

次の問題を見てみましょう。

yy=0y''' - y'' = 0

特性方程式は

r3r2=0r^3 - r^2 = 0

つまり

r2(r1)=0r^2(r-1)=0

なので根はr=0r=0が重根、r=1r=1が単純根です。したがって一般解は

y=C1+C2x+C3exy = C_1 + C_2 x + C_3 e^x

です。

条件を

y(0)=1,y(0)=0,y(0)=2y(0)=1, \quad y'(0)=0, \quad y''(0)=2

とします。

微分すると

y=C2+C3ex,y=C3exy' = C_2 + C_3 e^x, \quad y'' = C_3 e^x

です。x=0x=0を代入すると

C1+C3=1C_1 + C_3 = 1

C2+C3=0C_2 + C_3 = 0

C3=2C_3 = 2

なので

C1=1,C2=2,C3=2C_1 = -1, \quad C_2 = -2, \quad C_3 = 2

したがって解は

y=12x+2exy = -1 - 2x + 2e^x

となります。

工学応用

制御システムの伝達関数

制御工学では3次、4次以上のシステムがよくあります。モーター、ギア、センサ、フィルタが結合すると動力学の次数が上がります。

梁と板の変形

構造力学では4次微分方程式が出る場合が多いです。これは曲率と曲げモーメントが結びついているためです。

信号処理フィルタ

高次フィルタは入力に対する応答を高次微分方程式や等価な状態空間システムで表現できます。

初期値問題と境界値問題

入門段階では初期値問題を先に見ます。これは一時点の状態がすべて与えられる場合です。

一方、境界値問題は異なる位置や時間の端点で条件が与えられます。例えば棒の両端の温度や梁の両端のたわみ条件がここに該当します。後に偏微分方程式を学ぶときにより頻繁に登場します。

よくある間違い

条件の数が足りない

nn次の式に条件が十分でなければ、解は一つに定まりません。

重根の処理を忘れる

重根がある場合、C1+C2xC_1 + C_2 xのようにxxが掛けられた項が追加されます。この部分をよく忘れます。

微分係数を間違えて整理する

高次式では微分の間違い一つで定数計算全体が崩れます。一般解を書いて、順番に微分し、最後に条件を代入する流れを守る方が良いでしょう。

一行まとめ

高次微分方程式も基本原理は同じであり、次数が上がるほど必要な初期条件の数も一緒に増えます。

次回予告

次の記事では、複数の変数の動きを一度に扱う連立微分方程式と行列表現の必要性を見ていきます。

参考資料

  • Erwin Kreyszig, Advanced Engineering Mathematics, 10th Edition
  • Earl A. Coddington, An Introduction to Ordinary Differential Equations
  • Gilbert Strang, Linear Algebra and Differential Equations 講義資料