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CADツール & 3Dモデリングソフトウェア 2026 完全ガイド - Fusion 360 · OnShape · FreeCAD 1.0 · Plasticity · SolidWorks · Rhino 8 · OpenSCAD · Tinkercad · BricsCAD 深掘り

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プロローグ ── 2026年、CADはもうエンジニアだけのものではない

2020年代初頭まで、CADは機械工学科・自動車会社・航空宇宙企業の領域だった。1ライセンス数千ドル、PCはワークステーション仕様、学習曲線は急峻で、成果物は製造工場へ流れていった。

2026年の景色は違う。

  • Bambu Lab X1 CarbonPrusa MK4Sがデスクトップ3Dプリンタを家電価格帯まで引き下げた。15万円以内で買える機械が0.08mmレイヤーを30分で出す。
  • FreeCAD 1.0が2024年11月にようやく正式リリースされ、「Topological Naming Problem」時代が終わり、オープンソースのパラメトリックCADが本気の選択肢になった。
  • Plasticityは2023年に登場してから3年で、インディハードウェア・ゲームアセット・コンセプトデザインの市場でSolidWorksの代替として地位を築いた。年149ドル。
  • Shapr3DがiPadとApple Vision ProでCADを持ち運ぶ時代を開いた。
  • Onshapeはブラウザだけでフル・パラメトリックなアセンブリが回り、公開プロジェクトは無料。
  • AI CADが始まったばかり ── Autodesk Forma(旧Spacemaker)、NVIDIA Omniverse、Adobe Substance AIテクスチャ。

本稿は2026年のCADエコシステム全体を一気通貫で見る。機械CADからECAD、CAM、シミュレーション、スライサ、PCB、PLM、そしてAIまで。


1. なぜ2026年にCADが再び熱いのか

3つの潮流が同時に押し寄せた。

3Dプリンティングの民主化。 Bambu Labが2022年にX1 Carbonを投入し、デスクトップFDMプリンティングは「ユーザーの時間をほとんど消費しない家電」になった。平均印刷成功率は90%を超え、AMS(Automatic Material System)による4色マルチカラーが標準になった。2026年5月時点で、Bambu Labの累計出荷台数は200万台を突破している。

インディハードウェアの再興。 Crowd Supply・Kickstarter・Indiegogoには毎週数十のハードウェア・プロジェクトが上がる。一人がCAD・PCB・ファームウェア・筐体・生産まで全部背負う時代で、その一人が使う道具がFusion 360 + KiCad + PrusaSlicerだ。

エンジニアリングのSaaS化。 Onshapeが始めた「ブラウザCAD」は、SolidWorks 3DEXPERIENCE、Inventor Cloud、AutoCAD Webへと広がった。USBドングル・ライセンス弁当箱の時代は終わった。


2. Fusion 360 ── Autodeskのクラウド・パラメトリック・リーダー

Fusion 360(Autodesk)は2013年のリリース以来、デスクトップCADの参入障壁を決定的に下げた製品だ。1ライセンスでパラメトリック・ソリッド、サーフェス、メッシュ、シミュレーション(FEA)、CAM(ミリング・ターニング・ルーティング)、シートメタル、エレクトロニクス(Eagle統合後のFusion Electronics)、レンダリングがすべて含まれる。

2026年の価格

  • Personal Use: 非商用1年無料(会員登録・毎年更新)
  • Personal Subscription: 年545ドル(個人商用利用可)
  • Standard: 年680ドル
  • Education: 学生・教員は1年無料(学校メール確認)

2024年の値上げは円安と相まって日本ユーザーにも痛手だが、機能対価格比では依然として圧倒的。

Fusion 360の強み

  • タイムラインベースのパラメトリック ── すべての操作がタイムラインに記録され、任意の時点までさかのぼってパラメータを編集できる。
  • クラウド協業 ── チームプロジェクト、バージョン管理、A360 Drive統合。
  • CAM統合 ── 別ライセンス不要で2〜5軸CAMが入っている。インディ機械加工ショップに決定的。
  • Generative Design ── トポロジ最適化で重量・強度条件を満たす形状を自動生成。
  • 2026年の新機能 ── AIベースのスケッチ自動拘束(Sketch Auto-Constrain)、リアルタイム共同編集セッション。

弱点

  • ネット依存度が高い ── オフラインのライセンス検証間隔が短い。
  • 大規模アセンブリ(1万部品以上)での性能限界。
  • シミュレーションは入門〜中級レベル(本格CAEはANSYS)。

3. AutoCAD 2026 ── 2D図面の標準は今も健在

AutoCAD 2026(Autodesk)は1982年の初版以来、2D図面の事実上の標準として君臨し続けている。建築・機械・電気・土木の図面がDWGファイルで行き交う限り、AutoCADは消えない。

価格

  • AutoCAD Single User: 年2,030ドル(2026年値上げ反映)
  • AutoCAD LT(2D専用): 年560ドル
  • AutoCAD Plus(フルバンドル): 年2,790ドル ── Architecture、Electrical、Mechanical、MEP、Plant 3D、Map 3Dすべて含む

2026年の新機能

  • Markup Import & Assist ── PDFや画像上の赤ペン書きを自動で図面に反映。
  • Smart Blocks ── AIがよく使うブロックを推薦。
  • Activity Insights ── 変更履歴をクラウドに自動保存。

AutoCAD vs Fusion 360

AutoCADは2D図面中心、Fusion 360は3Dモデリング中心。建築図面ならAutoCAD、製品デザインならFusion 360。建築3DはRevit、内装はSketchUp、インフラはCivil 3Dがそれぞれ領域を占める。


4. OnShape ── ブラウザだけで動くフル・パラメトリックCAD

Onshape(PTC、2019年買収)は最初からブラウザネイティブで設計されたフル・パラメトリックCADだ。インストール不要。URLさえあればどこからでも同じモデルを開け、同時編集(Live Multi-User)が標準。

価格

  • Free: 公開プロジェクト無制限、非公開不可(学習・趣味に最適)
  • Standard: 年1,500ドル ── 非公開ドキュメント、無制限保存
  • Professional: 年2,100ドル ── 高度なシミュレーション、PDM
  • Enterprise: 個別交渉 ── 権限管理、グローバル展開、IT統合
  • Education: 学生・教員無料

Onshapeの特徴

  • Gitスタイルのバージョン管理 ── Branch、Merge、CompareがCADに来た。SolidWorks PDMの悪夢とは別れ。
  • Feature Studio ── 専用ドメイン特化言語(FeatureScript)でカスタム機能を書く。JS風シンタックス。
  • 公開ドキュメント ── 誰でも検索・複製できる。学習用モデルが膨大に蓄積されている。
  • APIファースト ── REST APIで外部システム統合が自然。

弱点

  • ネット必須 ── 飛行機内では使えない。
  • CAM・シミュレーションは別(サードパーティ統合)。
  • 大規模アセンブリ処理ではFusion 360と同様の制約。

5. FreeCAD 1.0 ── 17年越しの正式リリース

FreeCAD 1.0(2024年11月18日正式リリース)はオープンソース・パラメトリックCADの分水嶺だ。2002年に始まったプロジェクトが22年を経て1.0マイルストーンに到達し、最大の変化は**Topological Naming Problem(TNP)**の解決にある。

TNPはFreeCADの長年の構造的な問題で、モデルを編集すると内部IDが変わり後続のフィーチャが壊れる現象だった。1.0で導入された新しいトポロジ・ネーミング・アルゴリズムでほぼ解消された。

FreeCAD 1.0の主な変化

  • 新Topological Naming ── LinkBranchアルゴリズムで安定参照。
  • Assembly Workbench(ネイティブ) ── A2plus、Assembly3、Assembly4分派が統合された公式アセンブリ。
  • TechDraw改善 ── 自動寸法、BOMテーブル、断面ビューの品質向上。
  • Sketcher性能 ── ソルバ安定性が大幅改善。
  • Dark Theme ── ついに公式ダークテーマ。

ライセンスとコスト

LGPL-2.1+、完全無料。商用制約なし。クローズドソース・プラグイン可能。

誰がFreeCADを使うのか

  • ライセンス料を払えない個人・学生
  • オープンソース哲学を守るメイカー
  • 医療機器・航空宇宙 ── データ主権が重要な分野
  • Ubuntu・Fedoraユーザー

限界

依然としてSolidWorksやFusion 360レベルの使いやすさには及ばない。UIはやや古典的で、学習資料も散らばっている。それでも1.0以降は、急な学習曲線を最後まで登る価値が十分にある。


6. Plasticity ── 2026年最注目のCAD新興

Plasticity(Pat Williams、2023年リリース)はNURBSベースのダイレクト・モデリングCADだ。Rhinoから着想を得ているが、インターフェースははるかに現代的で、学習曲線もずっと緩やか。

価格(2026年)

  • Indie: 年149ドル(または永久299ドル) ── 個人・小規模事業者
  • Studio: 年299ドル(または永久599ドル) ── 会社・チーム
  • 更新なしでも一生使える永久ライセンスを残している数少ないCAD。

Plasticityの魅力

  • ダイレクト・モデリング ── パラメトリック・ツリーに縛られず、直感的に形状を押し引きする。
  • NURBS精度 ── メッシュベースのBlenderと異なり、本物の製造用CADデータ。
  • 速さ ── 起動1秒以内、即応。
  • インディ・フレンドリ価格 ── SolidWorksの約1/40。
  • 活発なコミュニティ ── Discord1万人超、毎週新しいチュートリアル。

誰がPlasticityを使うのか

  • コンセプト・デザイナー ── 自動車・製品デザインの素早いスケッチ
  • ゲームアセット・アーティスト ── Blenderに渡す前の精緻なベースメッシュ
  • インディ・ハードウェア・メイカー ── Fusion 360の代替
  • 3Dプリンティング愛好家 ── 曲面デザインが速い

限界

  • パラメトリック履歴がない(意図的なトレードオフ)
  • アセンブリ機能が限定的 ── 大規模組立には不向き
  • 図面(2D drafting)機能なし

7. Rhino 8 + Grasshopper ── 工業デザインの事実上の標準

Rhino 8(Robert McNeel & Associates、2023年11月リリース)はNURBSモデリングのベテランだ。精密な自由曲面が必要な工業デザイン・建築・ジュエリー・ヨット・自動車デザインで標準として根を張っている。

価格

  • Rhino 8: 永久ライセンス995ドル(1回支払い、永続使用)
  • Educational: 195ドル(学生・教員)
  • Upgrade from Rhino 7: 595ドル

永久ライセンスが生き残っている数少ないメジャーCADの1つ。

Rhino 8の強み

  • NURBS曲面精度 ── 0.001mm精度のトレランス保証。
  • Grasshopper ── ビジュアル・プログラミングによるパラメトリック・デザイン。建築家の愛用。
  • SubD(Subdivision Surfaces) ── Rhino 7から追加されたポリゴンベースのモデリング。
  • Cycles Renderer ── BlenderのCyclesが統合され、リアルタイムPBRレンダリング。
  • 開放性 ── RhinoCommon、RhinoScript、IronPython、Python 3(Rhino 8新規)すべてサポート。

Grasshopper

GrasshopperはRhino内で動くビジュアル・プログラミング環境だ。ノードを接続してパラメトリック形状を作る。建築・構造・都市デザインで事実上の標準ツールになり、Zaha Hadid Architects、BIG、SOMが日常的に使う。


8. SolidWorks 2026 ── エンタープライズ機械CADの標準

SolidWorks 2026(Dassault Systèmes)は機械エンジニアリングの事実上の標準だ。自動車・航空宇宙・産業機械・消費財製品で最も多く使われるCAD。

価格

  • SolidWorks Standard: 年4,195ドル
  • SolidWorks Professional: 年5,995ドル
  • SolidWorks Premium: 年8,495ドル
  • 3DEXPERIENCE SOLIDWORKS(クラウド): 年2,990ドル ── 新ライセンスモデル

永久ライセンスは段階的になくなり、サブスクリプションモデルへ移行中。

SolidWorksの強み

  • 信頼性 ── 数十年にわたる航空宇宙・自動車での検証。
  • 膨大な学習資料 ── YouTube、書籍、学校のカリキュラム。
  • 他社統合 ── Mastercam、CAMWorks、ANSYS、MoldFlow。
  • PDM/PLM ── SolidWorks PDM、ENOVIAで大規模チーム協業。

弱点

  • 価格(Fusion 360の8倍)
  • Windows専用(ネイティブmacOSなし)
  • クラウド移行の痛み ── 3DEXPERIENCEの学習曲線が追加

9. Solid Edge、NX、CATIA、Inventor ── エンタープライズ4強

Solid Edge(Siemens)

中堅企業向けに強いCAD。Synchronous Technologyというダイレクト+パラメトリック・ハイブリッド・モデリングが特徴。価格はSolidWorksと同等水準だが、Siemens NXとデータ互換が滑らか。

NX(Siemens)

自動車・航空宇宙のヘビーウェイト。トヨタ・BMW・ロッキード・マーティンが使う。価格は個別交渉で、1ライセンスあたり通常1万ドル超/年。Mac・Linuxサポート。

CATIA V6 / 3DEXPERIENCE(Dassault)

航空宇宙・自動車デザインの最上位標準。ボーイング・エアバス・フェラーリ・BMWが使う。Class Aサーフェス(自動車外板)レベルの曲面品質が必要ならCATIA。価格はNXと同等以上。

Inventor(Autodesk)

AutodeskのSolidWorks代替。Fusion 360より重く、AutoCADとの統合が良い。年2,990ドル。北米の中堅製造企業に多い。


10. BricsCAD ── AutoCADに挑む「安価な」代替

BricsCAD(Bricsys、Hexagonグループ)はAutoCADの直接の代替だ。DWGをネイティブで読み書きし、AutoCADとほぼ同じUIを提供する。

価格

  • BricsCAD Lite: 永久399ドル(2D専用)
  • BricsCAD Pro: 永久620ドル(3D含む)
  • BricsCAD Mechanical: 永久1,490ドル

AutoCADが年2,030ドルのサブスクリプションである一方、BricsCADは永久ライセンスが生き、価格も約1/3。日本の中小企業でも徐々に採用が増えている。

Bricsys 24/7

クラウド協業プラットフォーム。BIMcollab、Bricsys 24/7統合でBIM・施設管理ワークフローをサポート。


11. Tinkercad ── 入門の出発点

Tinkercad(Autodesk)はブラウザベースの無料3Dモデリング・ツール。子ども・学生・完全な初心者に最も親しみやすいインターフェースを提供する。

  • 価格: 完全無料、広告なし
  • インターフェース: ブロック積み式
  • 出力: STL、OBJ、GLB
  • 回路: Tinkercad CircuitsでArduinoシミュレーション
  • コードブロック: Scratch風のビジュアル・プログラミング

3Dプリンティング初心者が最初のモデルを作るのに最適。1時間で全部学べる。


12. OpenSCAD ── プログラマのCAD

OpenSCAD(2010年リリース、GPL-2.0)はスクリプトベースのCAD。マウスで描かず、コードで形状を定義する。

// シンプルな箱と穴
difference() {
    cube([20, 20, 10]);
    translate([10, 10, -1])
        cylinder(h=12, r=3, $fn=64);
}

OpenSCADの魅力

  • バージョン管理可能 ── CADモデルをGitで管理する。
  • パラメトリック ── 変数で寸法を定義すれば、1行変更でシリーズ生成。
  • 再現可能 ── 同じスクリプトは常に同じ結果。
  • 無料、軽量 ── 50MBインストール、どこでも動く。

限界

  • 可視化が遅い(CGALバックエンド)
  • アセンブリ・図面機能なし
  • 曲面表現の限界 ── ポリゴンベース

3Dプリンティング・コミュニティに愛される道具。Thingiverse・Printablesのパラメトリック・モデルの多くがOpenSCADで書かれている。


13. CadQuery、Build123d、JSCad ── コードベースCADの新しい潮流

OpenSCADが切り拓いたコードベースCADの流れは、より強力な後継者たちに引き継がれている。

CadQuery(Python)

Pythonで書くパラメトリックCAD。OpenCascadeカーネルの上で動き、本物のNURBS形状を生成する。STEP出力が自然。

import cadquery as cq
result = (cq.Workplane("XY")
          .box(2.0, 2.0, 0.5)
          .faces(">Z").workplane()
          .hole(0.5))

Build123d(Python)

CadQueryのコア開発者による後継プロジェクト。よりクリーンなAPI、より良いエラーメッセージ、より強力なアセンブリ。

JSCad

OpenSCADのJavaScript版いとこ。ブラウザで直接動く。ライブ・コード編集と即座の可視化。

この3つは、「CADをソフトウェア・エンジニアのように扱いたい」という人たちへの答えだ。


14. SelfCAD、Shapr3D、Womp ── ブラウザ・タブレットCAD

SelfCAD

ブラウザベースの初心者向けCAD + スライサ一体型。学校市場を狙う。月14.99ドル。

Shapr3D

iPad・Apple Vision Pro・Mac用のCAD。Apple Pencilで描き、Parasolidカーネル(SolidWorksと同じカーネル)を使う。

  • 無料: 2デザインまで
  • Pro: 年299ドル
  • Business: 年599ドル

2026年のApple Vision Proサポートで「空間CAD」という新カテゴリを作っている。

Womp

ブラウザベースのスカルプティングCAD。粘土をこねるようにモデリングする。3Dプリンティング用キャラクター・装飾品デザインに強い。


15. PCB CAD(ECAD) ── KiCad 8.x時代の到来

PCB設計ツールはECAD(Electronic CAD)と呼ばれる。2026年の景色はKiCadの大躍進だ。

KiCad 8.x(オープンソース)

KiCad 8.0(2024年2月)はKiCadを本格的なPCBツールへ押し上げた。核心の変化:

  • 新PCBレンダラ ── Vulkanベース、大規模ボードでも60fps。
  • シミュレーション ── SPICE統合で回路シミュレーション。
  • Net Class強化 ── インピーダンス制御、差動ペア配線。
  • 3Dビュー ── STEP出力で機構CADと互換。

CERN・Arduinoがメイン支援者。ライセンスはGPL-3、無料。

Altium Designer

PCB設計の事実上の標準。Altium 365でクラウド統合。価格は年3,995ドル(Standard)〜年9,000ドル超(Enterprise)。

Eagle(EOL)

Autodesk Eagleは2026年6月7日付で公式EOL。Fusion Electronicsに統合された。

EasyEDA(JLCPCB)

JLCPCB・LCSC統合のPCBデザイン + 発注。無料。中国市場を制圧。

OrCAD、Zuken

エンタープライズPCB CAD。日本・欧州の自動車・通信産業で強い。


16. MCAD vs ECAD vs CAMの区別

用語整理:

  • MCAD(Mechanical CAD) ── 機械部品・アセンブリ。Fusion 360、SolidWorks、FreeCAD。
  • ECAD(Electronic CAD) ── PCB・回路図。KiCad、Altium。
  • CAM(Computer-Aided Manufacturing) ── 加工Gコード生成。Mastercam、Fusion 360 CAM。
  • CAE(Computer-Aided Engineering) ── 解析・シミュレーション。ANSYS、Abaqus。
  • EDA(Electronic Design Automation) ── ECADの上位概念、IC設計を含む。
  • AEC(Architecture, Engineering, Construction) ── 建築CAD。Revit、ArchiCAD。

MCAD↔ECAD統合はSTEP・IDF・EMNファイルで行う。


17. CAM ── 加工への橋渡し

CADが形状を定義すれば、CAMが加工パスを生成する。

Fusion 360 Manufacture

Fusion 360に統合されたCAM。2〜5軸ミリング、ターニング、ルーティング、シートメタル・パンチング。インディ機械加工ショップの標準。

Mastercam(CNC Software)

伝統的CAMの強者。約5,000ドル超の永久。自動車・航空産業の事実上の標準。

SolidCAM

SolidWorks統合のCAM。iMachiningアルゴリズムが有名。

HSMWorks

Autodeskが買収したSolidWorksプラグインCAM。Fusion 360 CAMの前身。

EstlCAM

ホビーCNC・ルーター向け入門CAM。一括購入76ドル。


18. CFD/FEA ── シミュレーションの領域

ANSYS

エンジニアリング・シミュレーションの総合トップ。Mechanical、Fluent(CFD)、Maxwell(電磁気)、Lumerical(光学)。価格は個別交渉、1ライセンスで年20,000ドル超から。

Abaqus(Dassault)

非線形構造解析の標準。自動車衝突・ゴム・複合材。SolidWorks Simulation Premiumへの統合オプション。

COMSOL Multiphysics

マルチフィジクス・シミュレーション。電磁気・熱・流体・構造の連成解析。学術界に愛される。

SimScale

ブラウザベースのCFD/FEA。AWSクラウド・コンピューティングを使用。価格は年2,000〜10,000ドル。インディ・メイカーに優しい。

OpenFOAM

オープンソースCFD。学術界・上級ユーザー向け。GPL。


19. 3Dプリンティング・スライサ ── 2026年の景色

スライサはSTL/3MFをGコードに変換する。2026年の市場はOrcaSlicerが平定中だ。

OrcaSlicer(オープンソース)

OrcaSlicer 2.xは2025年からデスクトップ・スライサの事実上の標準。Bambu Studio fork、PrusaSlicerベース、主要プリンタの全プロファイル内蔵。AGPL-3。

Bambu Studio

Bambu Lab公式スライサ。AMSマルチカラー最適化。OrcaSlicerがよく参照するベース。

PrusaSlicer

Prusa Research公式。MK4・XL・Miniに最適化。GPL。

Cura(UltiMaker)

長らくの標準だったが、2025年からOrcaSlicerにユーザーを奪われ続けている。それでも無料、幅広いプリンタ・サポート。

Simplify3D

商用スライサ、149ドル。最近のOrcaSlicer大潮流に押されている。

Lychee Slicer

レジン(SLA/MSLA)プリンタ専用スライサ。Anycubic・Elegooユーザーがよく使う。


20. デスクトップ3Dプリンタ 2026年の景色

Bambu Lab

  • X1 Carbon Combo: 1,449ドル ── 市場標準。CoreXY、カーボン/ガラス繊維対応。
  • A1: 399ドル ── 入門用、ベッド・スリンガー。
  • P1S: 749ドル ── X1Cの普及版。
  • A1 Mini: 249ドル ── 最も安い参入点。

Prusa Research

  • MK4S: キット1,099ドル / 組立済1,399ドル。
  • CORE One: 1,199ドル ── Prusa初のCoreXY(2025年リリース)。
  • XL: 2,499ドル(シングルヘッド)〜4,499ドル(5ツールヘッド)。マルチマテリアルの王者。
  • Mini+: キット459ドル。

Creality

  • K1 Max: 799ドル ── 普及版CoreXY。
  • Ender-3 V3 SE: 169ドル ── 最も安い検証済FDM。

Voron(オープンソースDIY)

  • Voron 2.4: 部品約1,500ドル。完全DIY CoreXY。
  • Voron Trident: 約1,200ドル。3軸ベッド・レベリング。

RatRig、BLV mgn cube

追加のDIYオプション。部品の海外調達・設計図面公開。

レジンプリンタ

  • Anycubic Photon Mono X 6Ks: 299ドル
  • Elegoo Saturn 4 Ultra: 399ドル
  • Formlabs Form 4: 4,499ドル(プロ仕様)

21. ファイル・フォーマット ── STEP、STL、3MF、glTF

STEP(ISO 10303)

CADデータ交換の事実上の標準。精密なNURBS曲面を保存。すべての主要CADがSTEP入出力をサポート。AP242が現在の推奨バージョン。

STL

3Dプリンティングの入力標準。三角形メッシュ。シンプルだが色・材質情報がない。

3MF(3D Manufacturing Format)

STLの後継。ZIPコンテナの中にXML、色・材質・サポート情報を含む。Microsoft・HP・Autodesk・Dassault連合の標準。

OBJ

長らくのメッシュ・フォーマット。テクスチャ・サポート。ゲーム・3Dアートの標準。

FBX

Autodesk標準。アニメーション含み可能。Maya、Max、Unity、Unreal。

IGES

古いNURBSフォーマット。STEPにほぼ置き換えられたが、一部レガシー互換用。

USDZ

Apple AR・Vision Pro標準。Pixar USDベース。

glTF 2.0

ウェブ3D標準。Three.js・Babylon.jsネイティブ。Khronos Group。


22. PLM ── Product Lifecycle Management

企業規模が大きくなると、CADファイルそのものよりその周辺(権限・承認・BOM・生産情報)管理がより大きな問題になる。PLMがその領域。

Autodesk Vault

Fusion 360・Inventor・AutoCADと連携するPDM。Vault Basicは無料、Vault Professionalは個別交渉。

PTC Windchill

Onshape・Creoと連携するエンタープライズPLM。自動車・航空産業で多用。

Siemens Teamcenter

NX・Solid Edge・Capitalと連携。グローバル1位のPLMシェア。

Aras Innovator

オープンソース・コアのPLM。カスタマイズ自由度が高い。

Arena、Onshape、OpenBOM

SaaS形態の軽量PLM。スタートアップ・中小製造業に優しい。


23. 韓国・日本の製造業のCADの実情

韓国

  • 自動車: 現代・起亜 ── CATIA V5/V6が標準。協力会社にもCATIAを強制。
  • 造船: 現代重工業・サムスン重工業・大宇造船 ── AVEVA Marine、Tribonが標準。
  • 半導体: サムスン・SK hynix ── 装置の協力会社はNX・SolidWorks。
  • 斗山ロボティクス: SolidWorksベースの協働ロボットCADパイプライン。
  • インディ・メイカー: Fusion 360・KiCad・OrcaSlicerの組み合わせが圧倒的。

日本

  • 自動車: トヨタ ── CATIA。ホンダ ── CATIA。日産 ── CATIA。マツダ ── NX。
  • 工作機械: マツウラ・DMG森精機 ── Mastercam・NX。
  • 消費財: ソニー・パナソニック ── SolidWorks・NX。
  • インディ・メイカー(秋葉原文化): KiCad・OpenSCAD・Fusion 360を自由に混用。

韓国・日本とも、自動車・造船といった重工業はCATIA・NXのようなエンタープライズCADが標準で、それ以外はSolidWorksが中心。


24. AI in CAD ── 2026年に始まったばかりの領域

CADは他のソフトウェアよりAI導入が遅かった。形状というドメインがあまりに複雑で、エラー許容度がゼロだからだ。2026年に入って、ようやく実用的なAI CAD機能が出始めた。

Autodesk Forma(旧Spacemaker)

建築・都市デザインのAI。敷地に建物を配置すれば、日照・風・騒音・緑地・エネルギーを即座に分析。年2,030ドル(Architecture Industry Collection)。

Autodesk Fusion AI

Fusion 360 2026に追加されたAI機能:

  • Sketch Auto-Constrain ── 手描きスケッチを自動拘束。
  • Generative Design加速 ── トポロジ最適化結果が10倍速く。
  • Auto-recognize parameters ── パラメトリック変換を推薦。

NVIDIA Omniverse for CAD

USDベースの協業プラットフォーム。CAD・シミュレーション・VR・リアルタイム・レンダリングを1つのグラフへ。自動車・製造のデジタル・ツインで急速に採用中。

Adobe Substance 3D AI

PBRテクスチャ生成AI。プロンプトで「錆びた鋼、接近、4K」と入力するとテクスチャ・セットが出る。月39.99ドル / 年239.88ドル。

Spacemaker、Hypar、TestFit

建築AI新興。敷地・予算・法規条件で平面図を自動生成。

限界

本当の意味での「Text-to-CAD」はまだ遠い。NURBS表現の精度・拘束充足・製造適合性をすべて満たす生成モデルは2026年でも研究段階。だが補助ツールとしてのAIは、すでに実用段階に入っている。


25. どのCADを選ぶか ── ペルソナ別おすすめ

学生・完全初心者

TinkercadFusion 360 Personal → 学科に合わせてSolidWorks/CATIA/NX。

3Dプリンティング・ホビイスト

Fusion 360 Personal + OrcaSlicer + Bambu Lab A1 または Prusa Mini。 曲面が多いならPlasticityを追加。 コードで扱いたいならOpenSCADまたはBuild123d

インディ・ハードウェア・メイカー

Fusion 360(またはOnshape)+ KiCad + OrcaSlicer/PrusaSlicer。ライセンス費用合計で年545ドル。

工業デザイナー

Rhino 8 + Grasshopper + KeyShot(レンダリング)またはCinema 4DPlasticityもコンセプト段階で強力。

機械エンジニア(中小企業)

SolidWorks StandardまたはOnshape Professional。PDMが必要ならSolidWorks PDM。

機械エンジニア(大企業)

会社が決める。通常CATIA(自動車・航空)、NX(自動車・航空)、Creo(重機械)。協力会社なら取引先が決定。

オープンソース支持者

FreeCAD 1.0 + KiCad + OrcaSlicer + OpenFOAM + Linux。全部無料、全部GPL/LGPL。

Appleユーザー

Shapr3D(iPad/Vision Pro/Mac) ── ネイティブmacOS CADで最も完成度が高い。あるいはFusion 360/Onshapeクラウド。


26. 学習資料 ── どこで学ぶか

公式資料

  • Autodesk Learning ── Fusion 360、AutoCAD、Inventorの無料コース
  • Onshape Learning Center ── インタラクティブ・チュートリアル、無料
  • FreeCAD Wiki ── 学習リソースの総まとめ
  • Rhino Learn ── ビデオ・チュートリアル

YouTubeチャンネル

  • Lars Christensen ── Fusion 360マスター、英語
  • Maker's Muse ── 3Dプリンティング + CAD
  • Teaching Tech ── 3Dプリンティング
  • Punch It Industries ── Plasticityチュートリアル
  • MangoJelly Solutions ── FreeCAD 1.0シリーズ

韓国語資料

  • YouTubeメイカー・チャンネル(メイカー・アドベンチャー、DIYコーナー)
  • インフラン Fusion 360講座
  • 国立科学館メイカースペース・ワークショップ

日本語資料

  • VRC by Yamashita ── 日本語Fusion 360講座
  • MITAS Channel ── 機械系CAD
  • Maker Faire Tokyoワークショップ

27. 核心まとめ

2026年CAD景色の5つの一行結論:

  1. Fusion 360はコスパの王 ── 1パッケージで全部こなす。ホビイスト・インディ・メイカーの標準。
  2. Onshapeは協業の王 ── Gitのように扱うCADがどう可能かを示す。
  3. FreeCAD 1.0はついに本物 ── オープンソースCADの選択肢が実用段階に入った。
  4. Plasticityは使いやすさの革命 ── インディ・ライセンス年149ドルでSolidWorks代替。
  5. AI CADは補助段階 ── 真のText-to-CADはまだ、しかし補助ツールとしてはすでに強力。

CADはもうエンジニアだけのものではない。一人がデザイン・シミュレーション・製造まで背負う時代で、この一本が最初の道具選びの助けになれば。


参考資料