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工業数学シリーズ 第16回:gradient、divergence、curl

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工業数学シリーズ 第16回:gradient、divergence、curl

ベクトル微積分は演算記号だけ見ると難しいですが、実は3つの質問に答えるツールと考えればずっと単純になります。

  1. どの方向に最も速く増加するか
  2. どれだけ広がったり集まったりするか
  3. どれだけ回転するか

この質問にそれぞれ対応するのがgradient、divergence、curlです。

gradient

スカラー場f(x,y,z)f(x,y,z)のgradientは

f=(fx,fy,fz)\nabla f = \left(\frac{\partial f}{\partial x}, \frac{\partial f}{\partial y}, \frac{\partial f}{\partial z}\right)

です。

直観的には最も急に増加する方向を教えてくれるベクトルです。

例えば

f(x,y)=x2+y2f(x,y)=x^2+y^2

であれば

f=(2x,2y)\nabla f = (2x,2y)

です。原点から離れるほど外向きの矢印が大きくなります。つまりgradientは等高線に垂直で、「上り坂の方向」を指します。

divergence

ベクトル場F=(P,Q,R)\mathbf{F}=(P,Q,R)のdivergenceは

F=Px+Qy+Rz\nabla \cdot \mathbf{F} = \frac{\partial P}{\partial x} + \frac{\partial Q}{\partial y} + \frac{\partial R}{\partial z}

です。

直観的には一点の近くでベクトル場が外に広がる程度を意味します。

  • 正ならsourceのように外に広がる
  • 負ならsinkのように中に集まる
  • 0なら純増加なく流れが保存される

curl

ベクトル場F\mathbf{F}のcurlは回転成分を表します。3次元で定義され、2次元では通常「局所的な回転」の尺度として理解します。

直観的には、その点に小さな風車を置いたときにどれだけ回るかを問うのに似ています。

例えば

F(x,y)=(y,x)\mathbf{F}(x,y)=(-y,x)

は原点を中心に回転する場なのでcurlは0ではありません。

手で見る例題

ベクトル場

F(x,y,z)=(x,y,z)\mathbf{F}(x,y,z) = (x, y, z)

を見てみましょう。divergenceは

F=1+1+1=3\nabla \cdot \mathbf{F} = 1+1+1 = 3

です。これはすべての方向に外向きに広がるsourceのような場であるという意味です。

一方

F(x,y)=(y,x)\mathbf{F}(x,y)=(-y,x)

は空間全体で円形の流れを作るため、divergenceよりも回転成分の解析がより重要です。

工学応用

温度場

gradientは温度が最も速く増加する方向を教えてくれます。

流体力学

divergenceは圧縮性や質量保存と結びつき、curlは渦と結びつきます。

電磁気学

マクスウェル方程式はgradient、divergence、curlの言語で書かれていると言っても過言ではありません。

なぜ定義より解釈が先なのか

入門者が最もよくする間違いは、公式を暗記してからもその結果が何を意味するか分からないことです。例えばdivergenceが0なら計算的には単純な数字ですが、物理的には「入ってくる量と出ていく量が均衡」という意味です。

よくある間違い

gradientとdivergenceを同じ種類の演算と見る

gradientはスカラー場からベクトルを作り、divergenceはベクトル場からスカラーを作ります。

curlを公式だけで理解しようとする

小さな回転の強度という絵がまず浮かんでこそ、公式が自然に感じられます。

座標計算だけしてfield interpretationを見逃す

物理的意味を一緒に読まなければ、ベクトル微積分はすぐに暗記科目になります。

一行まとめ

gradientは増加方向、divergenceは広がり、curlは回転を測定します。

次回予告

次の記事では線積分、面積分、そしてグリーンの定理やガウスの定理のような積分定理がなぜ重要かを見ていきます。

参考資料

  • Erwin Kreyszig, Advanced Engineering Mathematics, 10th Edition
  • H. M. Schey, Div, Grad, Curl, and All That
  • David J. Griffiths, Introduction to Electrodynamics