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K-popはなぜ7位市場の規模より大きく見えるのか:IFPI 2026で読む音楽経済

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はじめに — 7位の市場と、それより大きく見える存在感

IFPIが公表した「グローバル・ミュージック・レポート2026」は、2025年の世界の音楽録音物売上を317億ドルと集計しました。前年比6.4%増で、11年連続の成長、そして市場が初めて300億ドルを超えた年です。成長率そのものも2024年の4.7%から6.4%へと、むしろ加速しています。

この表で韓国は世界7位の市場です。アメリカ、日本、イギリス、中国、ドイツ、フランスに続く位置です。ところがチャートや話題性で見ると、K-popの存在感は「7位」という言葉よりも明らかに大きく感じられます。この差が、本記事の出発点です。

先に正直に断っておきます。IFPIのレポートは「K-popがいくら稼いだか」を単独の項目としては発表していません。ですので、私はK-popの輸出額のような数字をでっち上げることはせず、IFPIが実際に測ったものと測っていないものを区別するところから始めます。

記録を更新した数字たち

まず背景となる全体像です。

  • 全体売上は317億ドル、前年比6.4%増。2014年に131億ドルまで落ち込んだ底から、11年かけて回復した結果です。
  • ストリーミングが220億ドルで、全体の69.6%を占めます。そのうち有料サブスクリプション売上は8.8%増え、全体の52.4%になりました。いまや世界売上の半分以上がサブスク料金から生まれています。
  • 有料サブスクのアカウント数は8億3,700万件で、1年前の7億6,400万件から7,300万件増えました。

数字だけを見ると、この業界はストリーミング・サブスクという単一のエンジンで回っているように見えます。実際、おおむねその通りです。ただし地域と形式で分けると、そのエンジンがどこで特に強く回っているのかが見えてきます。K-popの話は、ここから始まります。

なぜ「7位」は実際より小さく聞こえるのか

核心はこうです。IFPIの市場ランキングは「その国のなかで音楽にいくら使われたか」、つまり国内消費を測っています。「その国が生んだ音楽が世界でどれだけ消費されたか」、つまり輸出や文化的な到達度を測る指標ではありません。

この区別が決定的です。K-popの成功は、その多くが韓国の外で計上されます。アメリカでストリーミングされればアメリカ市場の売上に、日本でアルバムが売れれば日本市場の売上に数えられます。隣の日本は世界2位の市場で、2025年に8.9%反発しましたが、日本でのK-pop消費は韓国ではなく日本側の数字を押し上げます。つまりK-popが好調なほど、その売上の一部は7位ではなく2位の欄に記録されるのです。

ですから「韓国は7位なのに、なぜK-popはこんなに大きく見えるのか」という問いは、少しだけ置き場所を間違えています。市場ランキングは生産地ではなく消費地を数える表であり、K-popは定義上、輸出産業だからです。7位は韓国の国内市場の規模であって、K-popの世界売上ではありません。

実務的にも、この区別は些細ではありません。K-popがグローバルチャートの上位を埋める光景と、その売上が会計上どの国に計上されるかは、まったく別の話です。前者は到達度を、後者は消費地を示すにすぎません。ランキングをK-popの成績表と取り違えると、その表が本来測るために作られた目的を見失ってしまいます。

一点だけ、はっきり線を引いておきます。「アメリカが中国を抜いてK-pop最大の輸出先になった」という趣旨の主張がネット上に見られますが、IFPIが公表した数字ではこれを確認できません。検証されていない話なので、私は事実として繰り返すことはしません。

ストリーミング時代にフィジカルが残した場所

もう一つ面白い筋は、形式です。世界全体ではストリーミングが69.6%を占めますが、フィジカル(実物)も静かに息を吹き返しました。フィジカル売上は2025年に8.0%増えて53億ドルとなり、バイナルは13.7%で19年連続の成長、CDでさえ3.7%反発しました。

同じ形式の話でも、ダウンロードは正反対の方向へ進みます。ダウンロードやその他デジタルの売上は5.0%減り、13年連続の減少となりました。ですからフィジカルの反発は単なる郷愁ではなく、「ダウンロードが抜け、ストリーミングとフィジカルがともに伸びる」という再編の一つの側面として読むほうが正確です。

ここで地域分布が目を引きます。世界のフィジカル売上の45.1%がアジアから生まれています。K-popが、フィジカルアルバム、フォトカード、ファングッズを束ねて売るモデルで知られていることを思い出すと、この「アジアはとりわけフィジカルが強い」という図と、K-pop産業の売り方はよく重なります。世界がストリーミングへ移るなかでも、実物を通じた収益化の余地が残る地域があり、その中心にアジアがあるということです。

成長の速さの重心も、東へ傾いています。2025年、アジアは10.9%成長した一方、アメリカとカナダは3.5%にとどまりました。ラテンアメリカ(プラス17.1%)や中東・北アフリカ(プラス15.2%)はさらに速いのですが、アジアほど規模の大きい地域で二桁が出たことには別の重みがあります。とりわけ中国は20.1%と、トップ20のなかで最も速く伸びました。K-popのようにアジアに根を張りつつ世界へ広がる音楽にとって、成長の重心が自らの足元へ移っていくことは、悪い知らせではありません。

おわりに — ランキングが語らないこと

まとめるとこうです。IFPI 2026が描いた絵は、サブスクリプションが売上の半分を超えた、11年目の成長業界です。そのなかで韓国は7位の市場ですが、その数字は韓国の国内消費を測った値であって、K-popの世界売上を含んではいません。K-popが大きく見えるのは、ランキングが間違っているからではなく、ランキングが輸出を数えないからです。

このレポートで私が興味深く見た点は二つあります。一つはフィジカルがアジアで依然として強いこと、もう一つは成長の速さがアジア側でより高いことです。どちらもK-popの売り方や地理と自然に噛み合います。ただし、その噛み合いがK-popの具体的な売上としていくらになるのかは、IFPIの公開数字だけでは分かりません。その部分は開いたままにしておきます。

K-popの輸出の重みをきちんと測るには、「どの国のレパートリーがどの市場でどれだけ消費されたか」を国別に分けたデータが必要です。IFPIの公開要約は、そこまでの粒度には下りていません。先に触れた「アメリカ対中国」のような論争が、このレポートだけでは決着しない理由も、まさにそこにあります。

数字がはっきり示すことと、話としてもっともらしいことを混ぜないこと。このテーマでは、それが一番大切な規律だと思います。

参考資料