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필사 모드: 地図 & 地理情報ツール 2026 — Mapbox / MapLibre / deck.gl / Leaflet / ProtoMaps / Felt / OSM 徹底比較

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1. 2026 年の地図ツール俯瞰 — 商用 / OSS / データ / 可視化の 4 分類

2026 年の地理空間(geospatial)ツール環境は、5 年前とまったく違う姿になりました。Mapbox が GL JS v3(2023 年 9 月)から自前の BSL ライセンスで閉じたため OSS 陣営は MapLibre に分岐し、deck.gl は WebGPU 対応でビッグデータ可視化のデファクトに、Felt のようなコラボ地図エディタが登場し、ProtoMaps は「全世界のベクタータイルを単一ファイルで静的ホスティング」という新しいパラダイムを実用化しました。

俯瞰すると 4 つのカテゴリに分けられます。

- 商用 SaaS — Google Maps Platform、Mapbox、Stadia Maps、Carto、ArcGIS Online、カカオマップ、NAVER 地図、TMAP、Yahoo!地図

- OSS ライブラリ — MapLibre GL JS 5、Leaflet 1.9、deck.gl 9、OpenLayers 10

- オープンデータ + ルーティング — OpenStreetMap、ProtoMaps、OSRM、Valhalla、GraphHopper、日本の国土地理院、韓国の V-World

- 可視化 / 分析 / ジャーナリズム — Kepler.gl、Datawrapper、Felt、QGIS 3.40、ArcGIS Pro、Mapeo、Mapillary

2024 〜 2026 年で最大の事件は二つでした。第一に、2023 年 9 月 Mapbox は GL JS v3 から BSL 1.1(Business Source License)へ移行し、もはや OSS ではなくなり、OSS 陣営は MapLibre に分かれました。第二に、ProtoMaps が PMTiles フォーマットで「S3 / Cloudflare R2 にファイルを 1 つ置くだけで終わるベクタータイル」を実用化し、セルフホスティングの参入障壁が一気に下がりました。

本記事は、それらすべてのツールを 2026 年 5 月時点でざっと案内するガイドです。初心者は「どこから始めるか」、シニアは「次のプロジェクトに何を加えるか」を決める助けになるはずです。

2. Mapbox GL JS v3 分裂(2023.9)— OSS は MapLibre へ

Mapbox GL JS は 2014 年の v1 から OSS(BSD-3)であり、2020 年 12 月の v2 で独自の商用ライセンスへ閉じ、2023 年 9 月の v3 では本格的な次世代機能(Standard Style、3D 地形、ライティングモデル(Light API)、Globe Projection)と同時に BSL 1.1 へさらに強化されました。

BSL 1.1 の核となる条件はシンプルです — 「Mapbox と直接競合する商用地図サービスの構築に使うな」。通常の Web サイトやアプリで Mapbox API キーを使うのは引き続き自由です。「もう一つの Mapbox」を作ることはライセンス違反になります。そして GL JS v3 のソースコードは、もう GitHub で自由にフォークすることはできません。

Mapbox GL JS v3 の主要機能は次の通りです。

- Standard Style — 3D 建物、ライティングモデル、時間帯別の自動カラー変化を含む新しいデフォルトスタイル

- Mapbox Lights — 時間帯別の照明(昼 / 夕方 / 夜)、影シミュレーション

- 3D Terrain — DEM ベースの立体地形

- Globe Projection — ズームアウト時に平面ではなく球体表示

- Custom Layers — WebGL シェーダで自前のレイヤを記述

- Vector Tiles 2.0 — Mapbox 独自のベクタータイル形式

mapboxgl.accessToken = 'pk.eyJ1Ijoi...'

const map = new mapboxgl.Map({

container: 'map',

style: 'mapbox://styles/mapbox/standard',

center: [127.0, 37.5], // ソウル

zoom: 11,

projection: 'globe', // v3 の新しいデフォルト

})

map.on('style.load', () => {

map.setConfigProperty('basemap', 'lightPreset', 'night')

map.setFog({ color: 'rgb(186, 210, 235)', range: [0.5, 10] })

})

価格は 2026 年時点で月間アクティブユーザー(MAU)課金。25,000 MAU まで無料、以降 1,000 MAU あたり約 \$1 〜 \$5(プランで差)。小規模サイトは事実上無料、トラフィックの大きいサービスでは月数万ドルに達することもあります。価格やライセンスが負担なら、次章の MapLibre が第一候補です。

3. MapLibre GL JS 5(2025.6)— OSS 標準の座

MapLibre は Mapbox GL JS v1 の最終 BSD バージョンをフォークし、2020 年 12 月に発足した OSS プロジェクトです。AWS、Meta、MapTiler、Microsoft、Stadia Maps などがガバナンスに参加する Linux Foundation 配下のプロジェクトとして運営されています。

2025 年 6 月にリリースされた MapLibre GL JS 5 は、v4(2024 年)に続くメジャーバージョンで、主な変更は次の通りです。

- Globe Projection 正式サポート — Mapbox の Globe にほぼ同等の品質

- 3D 地形(Terrain 3D)安定化 — v4 でベータだった機能が GA

- ベクタータイルスタイル仕様 — Mapbox Style Spec 1.x と互換、加えて独自拡張

- WebGL2 をデフォルト化 — WebGL1 フォールバックを廃止、レンダリング高速化

- TypeScript 全面リライト完了

- WebGPU 実験的サポート — 一部のレイヤから WebGPU バックエンドが可能

const map = new maplibregl.Map({

container: 'map',

style: 'https://demotiles.maplibre.org/style.json', // 無料のデモスタイル

// またはセルフホスティングのスタイル

// style: 'https://your-cdn.example.com/style.json',

center: [126.978, 37.566], // ソウル市庁

zoom: 12,

projection: 'globe', // MapLibre 5 の新オプション

})

// Mapbox GL JS のコードとほぼ互換

map.on('load', () => {

map.addSource('points', {

type: 'geojson',

data: '/poi.geojson',

})

map.addLayer({

id: 'points-layer',

type: 'circle',

source: 'points',

paint: {

'circle-radius': 6,

'circle-color': '#3b82f6',

},

})

})

MapLibre の真価は「タイルサーバーを分離できる」点です。Mapbox はクライアントライブラリとタイルサーバーが一体ですが、MapLibre はクライアントのみを提供し、タイルはどこから持ってきても構いません。

タイルホスティングの選択肢は次の通りです。

- MapTiler Cloud — MapLibre 親和型 SaaS、韓国 / 日本の地図も含む

- Stadia Maps — Mapbox 代替の第一候補、OpenStreetMap ベース

- ProtoMaps PMTiles — セルフホスティング(次章)

- AWS Location Service — AWS ネイティブ

- 自前運用 — tileserver-gl、Martin、t-rex などの OSS タイルサーバー

2026 年に新規プロジェクトを始めるなら、Mapbox がどうしても必要な理由(SF / NYC の詳細な 3D 建物データ、Standard Style のカートグラフィなど)がなければ、デフォルトは MapLibre + MapTiler または MapLibre + ProtoMaps です。

4. deck.gl 9 — WebGL/WebGPU 可視化

deck.gl は Uber(現在はメンテナンスの多くを Carto が担う)が 2016 年に OSS 公開した大規模データ可視化ライブラリです。一般的な地図ライブラリは「地図上にマーカー数個」が限界ですが、deck.gl は「数十万点、数万ポリゴンを 1 フレームで GPU レンダリング」を目標にしています。

2025 年リリースの deck.gl 9 の主な変更は次の通りです。

- WebGPU 正式サポート — 対応レイヤで WebGL 比 2 〜 4 倍高速

- React 18 並行モード対応

- Layer モジュール分割でツリーシェイキング改善(バンドル 30% 縮小)

- 新しい GeoArrow 統合 — Arrow データの直接描画

代表的なレイヤ:

- ScatterplotLayer — 点

- HeatmapLayer — ヒートマップ

- HexagonLayer — ヘキサゴン集計

- ArcLayer — 2 点間のアーク(配送、移動)

- TripsLayer — 時系列パスのアニメーション

- TerrainLayer — 3D 地形

- TileLayer — スリッピー地図タイル

- MVTLayer — Mapbox Vector Tiles

- H3HexagonLayer — Uber H3 インデックスのヘキサゴン

最も多いパターンは MapLibre や Mapbox の上に deck.gl をオーバーレイすることです。

const INITIAL_VIEW_STATE = {

longitude: 127,

latitude: 37.5,

zoom: 11,

pitch: 45,

bearing: 0,

}

const layers = [

new HexagonLayer({

id: 'hexagon-layer',

data: '/taxi-pickups.json',

getPosition: (d) => [d.lng, d.lat],

radius: 200,

elevationScale: 4,

extruded: true,

pickable: true,

coverage: 0.88,

}),

]

export function MapView() {

return (

)

}

deck.gl 単独でも動きますが、通常はベース地図(MapLibre / Mapbox / Google Maps)の上に乗せます。Google Maps Platform も v9 から deck.gl の GoogleMapsOverlay を公式サポートしています。

deck.gl を選ぶべきとき — 点が 1000 個以上、または時系列・3D 押し出し・ヘキサゴン集計など可視化要件が厳しいとき。マーカー 10 個程度なら Leaflet で十分です。

5. Leaflet 1.9 — クラシックの定位置

Leaflet は 2011 年に Volodymyr Agafonkin(当時 Mapbox 社員、現在は OSM フルタイム)が作った OSS 地図ライブラリです。最も小さく、最もシンプルで、依存も最も少ない選択肢。最後のメジャーは 2022 年 6 月リリースの 1.9 で、2025 年 10 月の 1.9.5 パッチも届き、2026 年でも問題なく動きます。

Leaflet の中心的な特徴:

- 39 KB(gzip)— 最軽量

- 依存ゼロ — 純粋な JS

- ラスタータイル(画像タイル)中心 — ベクタータイルはプラグイン

- プラグインのエコシステムが圧倒的 — 数百個

const map = L.map('map').setView([37.5665, 126.978], 13)

L.tileLayer('https://tile.openstreetmap.org/{z}/{x}/{y}.png', {

maxZoom: 19,

attribution: '© OpenStreetMap contributors',

}).addTo(map)

L.marker([37.5665, 126.978])

.addTo(map)

.bindPopup('ソウル市庁')

.openPopup()

(上記の z, x, y は標準的なスリッピー地図タイル URL テンプレートのプレースホルダで、Leaflet が自動的に埋めます。)

Leaflet を選ぶべきとき — マーカー 100 個以下、普通の OSM デザインで十分、バンドルサイズ最小、依存最小化。政府サイト、学校の事務ページ、小規模事業者の店舗検索などには 2026 年でも Leaflet が第一候補です。

Leaflet を避けるべきとき — 3D、Globe Projection、ベクタータイルの動的スタイリング、数万以上のデータポイント。これらは MapLibre や deck.gl の出番です。

6. Google Maps Platform — 一般用途の標準

Google Maps Platform は 2026 年でも一般用途の一強です。「このカフェはどこ」のような一般消費者向け地図、自動運転を除く一般経路案内、ストリートビュー、POI(関心地点)データの精度 — この 3 点で他ツールの追随を許しません。

2024 〜 2026 年の主な変更は次の通りです。

- Maps JavaScript API v3 — デファクトスタンダード

- Maps API for Web Components(2024)— `gmp-map` のような Web コンポーネント

- Photorealistic 3D Tiles(2023 〜 2026)— 衛星 + 航空写真ベースのフル 3D 都市(ソウル、東京、ニューヨークなど主要都市)

- AI Place Details(Gemini 統合)— POI の AI 要約

- deck.gl GoogleMapsOverlay 公式サポート

<!-- 新しい Web コンポーネント方式 -->

価格は最も高い部類です。2026 年時点で月 \$200 の無料クレジット、以降 Map Load 1,000 回あたり \$7、Place Details 1,000 回あたり \$17、Directions 1,000 回あたり \$5。小規模サイトは無料ですが、大規模トラフィックでは月数万ドルにも届きます。

Google Maps を選ぶべきとき — 一般消費者向けサービス(デリバリー、不動産、店舗検索など)で POI 精度が売上に直結する場合。それ以外では、ほぼ常に MapLibre のほうが安く自由です。

7. OpenStreetMap + OSRM / Valhalla / GraphHopper — オープンデータ + ルーティング

OpenStreetMap(OSM)は 2004 年から続く「地図の Wikipedia」です。2026 年時点で約 1100 万人の登録マッパーと、数十億のノード / ウェイ / リレーションを持つ世界最大のオープン地理データセットです。

OSM データそのものは ODbL(Open Database License)で自由に利用でき、次のような形で活用されます。

- タイル — OSM.org のデフォルトタイル / Stadia / MapTiler / セルフホスティング(PMTiles)

- ルーティング — OSRM、Valhalla、GraphHopper などのエンジン

- ジオコーディング — Nominatim、Pelias、Photon

- 分析 — Overpass API、QGIS、GeoPandas

ルーティングエンジン三強の比較は次の通りです。

| エンジン | ライセンス | 特徴 | ホスティング |

|----------|------------|------|--------------|

| OSRM | BSD-2 | C++、最速、車中心 | osrm.org 無料(レート制限) |

| Valhalla | MIT | Mapbox / Tesla 出身、マルチモーダル、標高反映 | Stadia Maps、FOSSGIS |

| GraphHopper | Apache-2.0(コア) | Java、自転車 / 徒歩 / トラック、欧州で強い | GraphHopper.com SaaS |

OSRM の簡単な立ち上げ例は次のようになります。

Docker で韓国データ + OSRM をセットアップ

docker run -t -v $PWD:/data ghcr.io/project-osrm/osrm-backend osrm-extract -p /opt/car.lua /data/south-korea-latest.osm.pbf

docker run -t -v $PWD:/data ghcr.io/project-osrm/osrm-backend osrm-partition /data/south-korea-latest.osrm

docker run -t -v $PWD:/data ghcr.io/project-osrm/osrm-backend osrm-customize /data/south-korea-latest.osrm

docker run -t -i -p 5000:5000 -v $PWD:/data ghcr.io/project-osrm/osrm-backend osrm-routed --algorithm mld /data/south-korea-latest.osrm

ルーティングクエリ

curl "http://localhost:5000/route/v1/driving/126.978,37.566;127.045,37.501?geometries=geojson"

Valhalla は自転車 / 徒歩 / トラック / 自動車を一つのエンジンで扱い、標高(elevation)を反映したルーティングも可能です。GraphHopper は欧州で強く、自転車ルーティングが秀逸です。

OSM + オープンルーティングエンジンの組み合わせは、「Google Maps の価格は重いが自前インフラは捌ける」中〜大規模サービス(物流、デリバリー、B2B 車両追跡)で人気です。

8. Felt — コラボ地図エディタ(2024 シリーズ B)

Felt は 2021 年に Sam Hashemi(元 Carbon Five、18F)が創業したコラボ地図エディタです。「地図界の Figma」を標榜し、2024 年 4 月にシリーズ B として 3600 万ドルを調達しました(Felicis リード、Andreessen Horowitz など)。

Felt の中心的な価値は次の通りです。

- ブラウザ内ですぐコラボ — リンク共有、同時編集、コメント

- GIS 機能を SaaS で — シェープファイル / GeoJSON / KML / CSV をアップロードして即可視化

- Anchors 機能 — テキスト + 地図のインタラクティブストーリー

- API + 埋め込み — 作った地図を 1 行のコードでサイトに埋め込める

width="100%"

height="600"

frameborder="0"

title="Felt Map"

src="https://felt.com/embed/map/Your-Map-Slug-AbCdEf123"

allow="fullscreen"

></iframe>

ターゲットユーザーは都市計画家、NGO のデータ分析者、大学の研究者、ジャーナリストなど「GIS の学位はないが地図で物語を作りたい人」たちです。ArcGIS / QGIS の学習曲線が急すぎる層の受け皿になっています。

価格は 2026 年時点で、個人は無料(パブリックマップ)、Pro は \$15/月(プライベート + 大容量ファイル)、Team / Enterprise は別途見積。米国の自治体や環境 NGO が主要顧客です。

Felt を選ぶべきとき — コードを書かずに地図 + データ分析 + 共有を素早く回したい非開発者チーム、または埋め込みだけで済ませて開発時間を節約したいマーケティングページ。

9. ProtoMaps — 単一ファイル静的ベクタータイル(PMTiles)

ProtoMaps は 2022 年に Brandon Liu が始めた OSS プロジェクトで、「PMTiles」という単一ファイルベクタータイル形式を定義しました。2024 〜 2025 年で PMTiles は事実上のセルフホスティング標準となり、2026 年には Cloudflare が R2 統合として公式サポートを提供しています。

中心的な価値は次の通りです。

- 単一ファイル — 全世界 OSM データ(zoom 0 〜 15)でおよそ 100 GB が 1 つのファイル

- HTTP Range Request で部分ダウンロード — クライアントが必要なタイルだけ取得

- 静的ホスティング可能 — S3、R2、GitHub Pages、Vercel など Range Request 対応ならどこでも

- サーバーインフラ ゼロ — DB、キャッシュ、ロードバランサ すべて不要

基本ワークフローは次の通りです。

1. PMTiles CLI をインストール

brew install protomaps/tap/pmtiles

または GitHub Releases からバイナリをダウンロード

2. 全世界 / 地域別 PMTiles をダウンロード

pmtiles download world.pmtiles \

--bbox=126.5,37.4,127.5,37.8 \ # ソウル広域圏

--maxzoom=14 \

--source=https://build.protomaps.com/world.pmtiles

3. R2 または S3 にアップロード

aws s3 cp seoul.pmtiles s3://your-bucket/

4. CORS 設定 + Range Request 有効化を確認

// PMTiles プロトコルを登録

const protocol = new pmtiles.Protocol()

maplibregl.addProtocol('pmtiles', protocol.tile)

const map = new maplibregl.Map({

container: 'map',

style: {

version: 8,

sources: {

protomaps: {

type: 'vector',

url: 'pmtiles://https://your-cdn.example.com/seoul.pmtiles',

attribution: '© OpenStreetMap, © Protomaps',

},

},

layers: [

/* ProtoMaps のデフォルトスタイルをインポートして使う */

],

},

center: [127, 37.5],

zoom: 11,

})

ProtoMaps の最大の魅力はコストです。全世界タイルを月 1 TB 程度のトラフィックで配信するなら、Cloudflare R2 で月 \$15 程度(R2 はエグレスが無料なので、実質ストレージ代だけ)。同じトラフィックを Mapbox で配ると月 \$5,000 以上が普通です。

セルフホスティングの参入障壁が一気に下がったため、2026 年では新規プロジェクトのデフォルトが「MapLibre + ProtoMaps PMTiles + R2」へ変わりつつあります。

10. Stadia Maps / Carto / Kepler.gl / Datawrapper — 分析 + ジャーナリズム

分析 + ジャーナリズム用途のツール群を一気に整理します。

Stadia Maps — 2018 年スタートの Mapbox 代替 SaaS。OpenStreetMap ベース、MapLibre / Leaflet 親和。価格は Mapbox の 1/3 〜 1/2 程度で、GDPR / EU データガバナンスに親和的なので欧州顧客が多いです。2025 年からは Stamen Design のクラシックスタイル(Toner、Watercolor、Terrain)を無料提供しています。

const map = new maplibregl.Map({

container: 'map',

style: 'https://tiles.stadiamaps.com/styles/alidade_smooth.json',

// または alidade_smooth_dark、outdoors、osm_bright、stamen_toner、stamen_terrain

})

Carto — 2012 年スペイン発の分析 + 地図 SaaS。deck.gl のメインメンテナでもあります。クラウドデータウェアハウス(Snowflake、BigQuery、Databricks、Redshift)の中で地理分析を回すのが核となる機能。不動産、通信、リテールの立地分析で強い。2024 年に IPO 観測が出ましたが 2026 年現在も非公開です。

Kepler.gl — Uber が 2018 年に OSS 公開した大規模地理データ探索ツール。CSV や GeoJSON をアップすればすぐ deck.gl ベースで可視化、コード不要。https://kepler.gl のブラウザで直接、または Jupyter / Streamlit に埋め込みも可能です。

Jupyter で Kepler.gl を使う

from keplergl import KeplerGl

map_1 = KeplerGl(height=600)

map_1.add_data(data=df, name='taxi')

map_1

Datawrapper — ドイツ発のチャート + 地図 SaaS。ニューヨーク・タイムズ、ガーディアン、シュピーゲル、韓国の SBS データジャーナリズム部などがコロプレス(階級区分図、choropleth)を作るときの第一候補。価格は無料(月 10,000 表示まで)〜 Custom(大手メディア)。コード 0 行、自動的なデザイン一貫性、完璧なアクセシビリティ(スクリーンリーダー対応)。

Datawrapper ワークフロー:

1. CSV アップロードまたは Google Sheets 連携

2. 地域を選択(韓国の道、日本の都道府県、米国の州、世界など)

3. 色 / 凡例 / ツールチップを設定

4. パブリッシュ → iframe または SVG エクスポート

ジャーナリストとデータ分析者が「地図で物語」を最も速く作るツールです。

11. Mapeo — オフライン地図(Digital Democracy)

Mapeo は非営利団体 Digital Democracy が 2018 年から開発しているオフライン地図ツールです。アマゾンの先住民コミュニティが自分たちの領域の違法伐採 / 鉱山 / 河川汚染を直接マッピングし、証拠を収集するために作られました。

中心的な価値は次の通りです。

- 完全オフライン — インターネットがないジャングル、砂漠、僻地の山でも動作

- P2P 同期 — Wi-Fi Direct、ローカルネットワークでデバイス間データ交換(Hypercore Protocol ベース)

- データ主権 — クラウドなし、データはユーザーのデバイスのみ

- iOS / Android / デスクトップ — マルチプラットフォーム

技術スタックは Electron + React Native + Hypercore + osm-p2p-db。2025 年に新世代の Mapeo Next がベータ公開され、より軽い React Native 単一コードベースで書き直されました。

次のようなシナリオで使われています。

- アマゾン / コンゴ / インドネシア先住民コミュニティの領土モニタリング

- 紛争地域の人権モニタリンググループ

- 環境 NGO の野外データ収集

- インターネットのない野生動物保全活動

Mapeo は商用ツールではありませんが、「インターネットのない環境でのマッピング」というカテゴリでは事実上唯一の選択肢です。同じカテゴリの OSM ツールには OsmAnd(オフライン OSM ビューワ)、OpenMapKit(オフラインデータ収集)、KoBoToolbox(オフラインアンケート)があります。

12. QGIS 3.40 / ArcGIS Pro — デスクトップ GIS

デスクトップ GIS の二大巨頭は引き続き QGIS(OSS)と ArcGIS Pro(Esri 商用)です。

QGIS 3.40 — 2024 年 10 月にリリースされた長期サポート(LTR)バージョンです。2026 年でも最も推奨される安定版で、2026 年後半に 3.46 LTR が予定されています。

QGIS 3.40 の主な機能:

- 処理アルゴリズム 800+(ベクター / ラスター / メッシュ / 点群)

- PostGIS / Oracle Spatial / SQL Server / SpatiaLite ネイティブ対応

- Python コンソール + PyQGIS API でフル自動化

- 3D ビューワ(Qt 3D ベース)

- モバイル相棒 — Mergin Maps、QField

- クラウドデータ — Cloud Optimized GeoTIFF(COG)、STAC、PMTiles 直接サポート

PyQGIS の例 — 2 レイヤの交差を計算

from qgis.core import QgsProcessingFeedback

result = processing.run(

'native:intersection',

{

'INPUT': '/path/to/layer1.gpkg',

'OVERLAY': '/path/to/layer2.gpkg',

'OUTPUT': '/path/to/intersection.gpkg',

},

feedback=QgsProcessingFeedback(),

)

ArcGIS Pro — Esri の 64 bit 次世代デスクトップ GIS。2026 年時点のバージョンは 3.5。米国 / カナダの連邦政府、軍、自治体、大手エンタープライズが標準として使用しています。

QGIS と ArcGIS Pro の比較:

| 基準 | QGIS 3.40 | ArcGIS Pro 3.5 |

|------|-----------|----------------|

| ライセンス | GPL(無料) | 年 \$700 〜 \$5,000 |

| 処理速度 | 良い | 非常に良い(大容量) |

| 3D / 可視化 | 良い | 非常に良い |

| プラグインエコシステム | 1500+(OSS) | Esri マーケットプレイス |

| サポート / 教育 | コミュニティ | Esri 公式 |

| クラウド統合 | STAC、PMTiles、COG | ArcGIS Online 統合 |

学生 / 研究者 / 非営利は QGIS が事実上の標準、政府 / 軍 / 大手エンタープライズは ArcGIS Pro が事実上の標準です。

13. Mapillary — Meta のストリートビュー

Mapillary は 2013 年スウェーデン発のオープンストリートビュープロジェクトです。2020 年 6 月に Meta(当時 Facebook)に買収され、買収後もコアデータは CC BY-SA でオープンに維持されています。

中心的な価値は次の通りです。

- 誰でも車 / 自転車 / 徒歩 / ヘルメットカメラで街路写真をアップ可能

- AI が標識 / 車線 / 道路設備を自動抽出

- OSM マッパーがこのデータを参考に OSM を更新

- API で写真と抽出データを無料利用可能(利用量制限あり)

2026 年時点で約 30 億枚の写真がアップされており、特に OSM コミュニティが強い欧州、日本、韓国の一部地域で街路データが豊富です。Google Street View のオープン代替であり、自動運転企業が学習データに使うこともあります。

// Mapillary JS Viewer の埋め込み例

const viewer = new Viewer({

accessToken: 'YOUR_MAPILLARY_ACCESS_TOKEN',

container: 'mly-viewer',

imageId: '498763468214164',

})

OSM + Mapillary の組み合わせは「Google Street View がない、または古い地域」で特に強みを発揮します。

14. 韓国 — カカオマップ / NAVER 地図 / TMAP SDK

韓国市場は Google Maps が一強ではありません。韓国の地図法(空間情報の構築及び管理等に関する法律)により精密地図データの海外搬出が制限されているため、Google は韓国内のルーティングや一部データで制限が大きいのです。そのため韓国のサービスはカカオ / NAVER / TMAP SDK を使います。

カカオマップ(Kakao Maps SDK)— カカオの地図 API。JS / Android / iOS すべて対応。経路案内、場所検索、座標変換に強い。無料(トラフィック制限)〜 有料(大量呼び出し)。不動産、飲食店検索、デリバリーサービスの事実上の標準です。

const container = document.getElementById('map')

const options = {

center: new kakao.maps.LatLng(37.566, 126.978),

level: 3,

}

const map = new kakao.maps.Map(container, options)

NAVER 地図 API — NAVER Cloud Platform の一部。検索 / 経路案内 / 座標変換。カカオと並ぶ韓国二大巨頭。NAVER 不動産、NAVER Place との連携が強いです。

TMAP SDK — SK テレコムのナビゲーション一強。自動車経路案内では韓国一位(特にリアルタイム交通情報)。一般的な地図表示よりも車両ルーティングと公共交通ルーティングが強みです。

韓国 3 社の比較表:

| 機能 | カカオマップ | NAVER 地図 | TMAP |

|------|-------------|-----------|------|

| 一般地図表示 | 非常に良い | 非常に良い | 良い |

| 場所検索(POI) | 非常に良い | 非常に良い | 良い |

| 自動車経路案内 | 良い | 良い | 非常に良い(一位) |

| 公共交通経路案内 | 非常に良い | 非常に良い | 良い |

| 徒歩経路案内 | 非常に良い | 非常に良い | 良い |

| 価格 | 無料(制限)+ 有料 | 無料(制限)+ 有料 | 有料 |

| グローバルデータ | 韓国中心 | 韓国中心 | 韓国中心 |

選択基準はシンプルです。

- 一般ユーザー向けサービス → カカオマップまたは NAVER 地図(好み + ユーザーの慣れ)

- 自動車ルーティングが核 → TMAP

- グローバル + 韓国の併用 → MapLibre + ProtoMaps、韓国部分はカカオマップに委任

なお、公共データは V-World(韓国国土交通部)が無料提供する航空写真、行政区域、地番データがあります。

15. 日本 — 地理院地図 / Yahoo!地図 / ZENRIN / MapFan

日本市場は韓国とまた違う様相です。Google Maps は強いですが、日本特有の道路体系と住所体系、そして自前の巨大プレイヤーたちのため複数のツールが共存します。

地理院地図(GSI Maps)— 日本の国土地理院が運営する公式地図。東京 23 区の航空写真、標準地図、色覚バリアフリー地図、標高(elevation)データを無料公開。学校、政府、研究機関が標準として使用。タイル URL をそのまま MapLibre / Leaflet に接続可能です。

const map = new maplibregl.Map({

container: 'map',

style: {

version: 8,

sources: {

gsi: {

type: 'raster',

tiles: ['https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/std/{z}/{x}/{y}.png'],

tileSize: 256,

attribution: '地理院タイル',

},

},

layers: [{ id: 'gsi-layer', type: 'raster', source: 'gsi' }],

},

center: [139.692, 35.689], // 東京・新宿

zoom: 12,

})

(上記の z, x, y も標準的なスリッピー地図タイル座標のプレースホルダです。)

Yahoo!地図 — Yahoo Japan の地図サービス。日本国内の検索量は Google Maps と互角。YOLP(Yahoo! Open Local Platform)の一部として API も提供されています。

ZENRIN — 日本の住所情報企業。Google Maps Japan も ZENRIN の住所データをライセンスして使っています(2019 年から一部自前収集を開始)。ホテル / 不動産 / 保険など、正確な住所が売上に直結する業種は ZENRIN データをライセンスして自社システムに組み込みます。

MapFan / NAVITIME — 自動車 / 公共交通の経路案内 SaaS。日本は公共交通の乗り換え情報(時刻表、運行情報)が複雑なため、NAVITIME のような専門 SaaS が強いです。

選択基準は次の通りです。

- 一般消費者向けサービス(飲食店、不動産)→ Google Maps Japan または Yahoo!地図

- 精密住所が売上に直結 → ZENRIN ライセンス

- 公共交通経路案内 → NAVITIME API

- 公共 / 学術 / 研究 → 地理院地図

- オープン + コスト削減 → MapLibre + ProtoMaps + 一部 GSI タイル

16. 誰が何を選ぶべきか — 一般 / 分析 / ジャーナリズム / オフライン

最後にユーザー別の推奨スタックを整理します。

一般 Web/アプリ(マーカー表示、簡単な検索):

- グローバル → Google Maps Platform(POI データが重要なら)または MapLibre + ProtoMaps(コストが重要なら)

- 韓国 → カカオマップまたは NAVER 地図

- 日本 → Yahoo!地図または Google Maps Japan

- 最小依存 → Leaflet 1.9 + OSM タイル

大規模データ可視化(点 1000+、ヒートマップ、時系列):

- MapLibre + deck.gl 9(OSS、無料、最速の WebGPU パス)

- または Mapbox GL JS v3 + deck.gl(Mapbox のカートグラフィが必要なら)

- 分析ワークフロー全体 → Carto(Snowflake / BigQuery 内で分析)

データジャーナリズム / コロプレス:

- Datawrapper(コード 0 行、自動デザイン、完璧なアクセシビリティ)— 第一候補

- Felt(インタラクティブ + コラボ)— 次点

- Observable + d3 + topojson(カスタマイズが多いとき)— 第三候補

デスクトップ GIS / 空間分析:

- QGIS 3.40 LTR(OSS、無料)— 学生 / 研究者 / 非営利 / スタートアップで第一候補

- ArcGIS Pro(政府 / 軍 / 大手エンタープライズ)— 標準

- GeoPandas + Jupyter(コード分析)— データサイエンティスト向け

経路案内 / ルーティング SaaS:

- セルフホスティング + コスト削減 → OSRM(最速)または Valhalla(マルチモーダル)

- グローバル SaaS → Mapbox Directions、Google Directions、Stadia Routes、GraphHopper SaaS

- 韓国自動車 → TMAP SDK

- 日本公共交通 → NAVITIME

オフライン / インターネットなし環境:

- Mapeo(Digital Democracy)— 人権モニタリング、環境 NGO、先住民マッピング

- OsmAnd — 一般用オフライン OSM ビューワ

- OpenMapKit + KoBoToolbox — 野外アンケート + マッピング

ストリートビュー / 街路データ:

- Google Street View — 一般用途で一位

- Mapillary(Meta)— オープンデータ、OSM 統合

- カカオロードビュー / NAVER 街路ビュー — 韓国

- Yahoo!地図写真 — 日本

セルフホスティング / コスト最適化:

- MapLibre GL JS 5 + ProtoMaps PMTiles + Cloudflare R2 — 2026 年の新しいデフォルト

- コスト試算: 月 1 TB トラフィックで R2 \$15、同トラフィックの Mapbox は \$5000+

2026 年の地図ツールは 5 年前よりも豊かに、安く、自由になりました。Mapbox のライセンス強化が逆説的に MapLibre + ProtoMaps というオープンエコシステムを育て、deck.gl の WebGPU 対応でブラウザで可能な可視化の天井がさらに上がりました。自分のプロジェクトに合うツールを選んで、2026 年の地図の上にデータを描いてみてください。

参考 / References

- Mapbox GL JS — https://docs.mapbox.com/mapbox-gl-js/

- Mapbox ライセンス変更アナウンス — https://www.mapbox.com/blog/standard-core-style

- MapLibre GL JS — https://maplibre.org/maplibre-gl-js/docs/

- MapLibre ガバナンス — https://maplibre.org/governance/

- deck.gl — https://deck.gl/

- deck.gl 9 リリースノート — https://deck.gl/docs/whats-new

- Leaflet — https://leafletjs.com/

- Google Maps Platform — https://mapsplatform.google.com/

- Google Photorealistic 3D Tiles — https://developers.google.com/maps/documentation/tile/3d-tiles-overview

- OpenStreetMap — https://www.openstreetmap.org/about

- OSRM Project — https://project-osrm.org/

- Valhalla — https://valhalla.github.io/valhalla/

- GraphHopper — https://www.graphhopper.com/

- Felt — https://felt.com/

- Felt シリーズ B 発表 — https://felt.com/blog/series-b

- ProtoMaps — https://protomaps.com/

- PMTiles 仕様 — https://github.com/protomaps/PMTiles

- Stadia Maps — https://stadiamaps.com/

- Carto — https://carto.com/

- Kepler.gl — https://kepler.gl/

- Datawrapper — https://www.datawrapper.de/

- Mapeo(Digital Democracy)— https://www.mapeo.app/

- QGIS — https://qgis.org/

- ArcGIS Pro — https://www.esri.com/en-us/arcgis/products/arcgis-pro/overview

- Mapillary — https://www.mapillary.com/

- カカオ地図 API — https://apis.map.kakao.com/

- NAVER 地図 API — https://www.ncloud.com/product/applicationService/maps

- TMAP API — https://tmapapi.tmapmobility.com/

- V-World(韓国国土交通部)— https://www.vworld.kr/

- 地理院地図(日本国土地理院)— https://maps.gsi.go.jp/

- Yahoo!地図 API — https://developer.yahoo.co.jp/webapi/map/

- NAVITIME for Developers — https://api-sdk.navitime.co.jp/

- ZENRIN — https://www.zenrin.co.jp/

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