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RSSリーダー & あとで読む 2026 — Reeder / NetNewsWire / Inoreader / Feedbin / Miniflux / FreshRSS / Karakeep 徹底ガイド

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プロローグ — Pocketが消えた夏とその後

2025年5月、MozillaがPocketを7月8日付で終了すると発表したとき、インターネットの一角がざわついた。Pocketは2007年にRead It Laterとして始まり、2017年にMozillaが買収した、「あとで読む」カテゴリーの事実上の元祖だった。Firefox統合と無料ティアのおかげで数千万人のカジュアルユーザーを抱えていた。それが一行のお知らせで終わった。

ほぼ同じ時期、別の一角でもっと静かな出来事があった。2024年10月、Omnivoreが運営を停止した。オープンソースでセルフホストもできた「あとで読む」分野の新星だった。コアチームがElevenLabsに移籍したことで自然消滅した形だ。その前の春にはRead.cvがPerplexityに買収されてサービスを終えた。Matterは生き残ったが価格モデルを変えて少し重くなり、その空隙をReadwise Readerが素早く埋めた。

これで終わりではない。RSS側では逆の信号があった。Silvio Rizziは、Reeder 5のメンテナンスを止めないまま、まったく新しいReeder(25年モデル)を併走させ始めた。NetNewsWireは6.x系を磨き続け、本物の無料オープンソース選択肢を守った。Inoreaderはプロユーザー向け機能を増やし、FeedlyはLeo AIをさらに深く統合した。セルフホスト側ではMiniflux 2とFreshRSSが安定期に入った。RSSは2013年のGoogle Reader終了時に一度死んだと宣告されたが、13年後の今、むしろ多様で安定した生態系になっている。

この記事はその風景を一枚に整理する。17のツールを同じ軸で比較し、最後に「あなたが何を選ぶべきか」を4タイプで答える。本文中の価格は2026年5月時点のもので、価格ポリシーは頻繁に変わるので、決める前に公式サイトを確認してほしい。

RSSの死が宣告された回数:少なくとも5回。RSSが実際に死んだ回数:0回。


1. 2026年RSS復活 — Pocket終了(2025.7)後の風景

Pocketユーザーは2025年夏、どこへ行ったか。非公式な統計だが、Readwise Reader側の発表によれば6〜8月だけで利用者がおよそ4倍に増え、Matterも同じ時期に新規登録が急増した。Karakeep(旧Hoarder)はGitHub Starが2か月で倍増し「オープンソースの代替」の名刺を手に入れた。Wallabagも小幅に伸びた。Instapaperはほぼ変わらず — Pinterestから分社化されて以降は長い停滞期にあり、Pocket終了のニュースで特段動かなかった。

RSSリーダー側はもっと興味深かった。Pocketユーザーの相当数が「ついでにアルゴリズムフィードも切ろう」と決断したのだ。Reeder、NetNewsWire、Inoreader、Feedlyすべてで新規登録が同時に上がった。Feedbinは有料定額制にもかかわらず無料トライアル登録が倍増した。MinifluxとFreshRSSのセルフホスト記事はHacker Newsに再浮上し、韓国では「Daum RSS Reader追憶」のような記事が再び回り、奇景が広がった。

なぜRSSが生き残ったのか。アルゴリズム疲労だ。X(Twitter)の推薦アルゴリズムはとうの昔に信頼を失い、Threadsは新規性で一瞬引き寄せたが定着しなかった。LinkedInは仕事用と割り切る人が多数派だ。結局「どこで何を読むかは自分が決める」というRSSの古い約束が再び魅力的に響き始めた。そこにLLM時代がもう一つの変数を加えた — 人々は今、自分の情報ダイエットを「アルゴリズムに任せず」「AIにも任せず」自分でキュレーションしたいと考えている。RSSはその欲望に最も合った道具だ。


2. RSSはどう生き延びたか — Google Reader終了(2013)以後

2013年7月1日にGoogle Readerが終了した。当時、Google ReaderはRSSの事実上の標準バックエンドだった — ほぼすべてのクライアントがGoogle Readerの同期APIを使っていた。終了発表が出るとRSSは死んだという訃報記事が殺到し、一部はそれを受け入れた。

しかしその出来事は逆説的にRSS生態系の プロバイダ多様化 を引き起こした。FeedlyがGoogle Readerの代替の座を素早く取り、Feedbin・NewsBlur・The Old Readerが本格的に成長した。同時期にReederは独自同期バックエンドの選択肢を増やし、止まっていたNetNewsWireの開発が再開された。Inoreaderがブルガリアから新登場して急成長した。結果として2014年頃にはRSSクライアントとバックエンドの数が、2013年6月よりむしろ増えていた。

セルフホスト側も同じ時期に活気づいた。Tiny Tiny RSSは以前からあったが利用者が増え、2013〜14年頃にPHP製のFreshRSSが誕生した。Minifluxは2014年にGoで出発し、シンプルさと速さの代名詞になった。「selfhosted」という単語が流行る前から、RSSはセルフホストのお手本だった。

13年後の2026年から振り返ると、 単一プロバイダ(Google Reader)依存の時代は終わり 、RSSは小さくも非常に多元的な生態系になった。Pocketが消えてもReadwise/Matterがあり、Omnivoreが消えてもKarakeep/Wallabagがある。RSSは本質的に分散型プロトコルなので、ある会社が死んでもOPML1ファイルですべて移行できる。このシンプルさこそRSSの本当の生存術だ。


3. Reeder 5 + Reeder (25) — Silvio Rizziの新アプリ

Silvio Rizziが作るReederはmacOS・iOSのRSSクライアントの設計基準点だ。2026年時点で面白いのは、Reederが2つのアプリに分かれて並走していることだ — Reeder 5 (今では「Classic」とも呼ばれる)と Reeder (25年モデル、しばしば「新Reeder」と表記)

Reeder 5 (Classic)

2021年リリースの第5世代。買い切り、macOSで約15ドル、iOSで約5ドル(通貨により変動)。フォルダー・購読ツリー + 記事リスト + 本文の伝統的な3ペイン設計。Feedbin・Feedly・Inoreader・Miniflux・FreshRSS・NewsBlur・iCloud・ローカルなど、ほぼすべてのバックエンドに対応。揺るがない安定感が強みだ。Silvioは5を殺さず、セキュリティとOS互換性のメンテナンスを続けると明言している。

Reeder (25年モデル、新Reeder)

2024年登場のまったく新しいアプリ。設計哲学が違う — タイムラインビュー が中心だ。すべてのソースを時系列順に一本の流れで眺めるコンセプト。RSSだけでなくMastodon・Bluesky・YouTube・ポッドキャストなど多様なソースを一つのタイムラインに混ぜられる。iCloudで端末間同期。価格はサブスクリプション — 月約1ドル、年約10ドル。一部のユーザーは「これはもうRSSリーダーではなくインフォアクアリウム(情報水槽)だ」と評した。

どちらを選ぶか

伝統的なフォルダ/未読カウント/スター中心のワークフローが好きならReeder 5が答え。アルゴリズムなしで全ソースを時系列で流して気になるものだけ拾うのが好きなら新Reeder。両アプリは同じデータ(Feedbin・Inoreaderなど同期アカウント)を同時に使えるので、両方インストールして比べてもよい。


4. NetNewsWire — Mac/iOSのオープンソース無料

NetNewsWireはRSSクライアントの歴史そのものだ。2002年にBrent Simmonsが最初に作り、何度かオーナー交代を経た後、再びBrent主導でオープンソース(MIT)として復活した。macOS・iOS・iPadOSで完全無料。広告なし、サブスクリプションなし。

技術スタックと同期

Swift製で、macOS 13+/iOS 16+対応。独自同期バックエンドはないが、Feedbin・Feedly・Inoreader・iCloud・BazQux・FreshRSS・NewsBlurなど外部バックエンドとよくつながる。自データはSQLiteに保存。iCloud同期は無料オプションとして十分機能する。

設計哲学

極めて保守的。3ペイン設計、キーボードショートカット中心、アルゴリズム類は一切なし。広告ブロックや本文抽出機能はあるが、AIや推薦のような機能は皆無。「RSSリーダーはRSSリーダーの仕事だけする」という立場。これがある人には窮屈で、ある人には天国だ。

コミュニティと将来

GitHubで活発に開発中。2026年5月現在の安定版は6.x。iOS用7.0ベータが進行中。コントリビューターが一定数以上を維持しており、メンテナー1人依存のリスクが比較的小さい。

弱点

Windows・Linux非対応。Apple生態系専用。iCloud同期が時々遅くなることがある。モバイル通知機能が限定的。


5. Inoreader — プロ向け最強

InoreaderはブルガリアのInnologicaが2013年から作っているWebベースのRSSサービスだ。無料ティアがかなり寛大(150ソースまで)で、有料はProが月約9.99ドル。無料に広告はあるが許容範囲。

なぜ「プロ向け最強」なのか

機能の深さが違う。キーワードモニタリング(特定の語がどのフィードに出ても通知)、ルールベースの自動分類・タグ付け・ハイライト、過去全記事のグローバル検索(全文)、ニュースレター受信(Inoreaderが付与するメールアドレスで購読してRSS化)、Reddit/X/Bluesky/YouTube/ポッドキャストなどをRSS的に受信、チーム共同作業(共有フォルダ)。ジャーナリスト・研究者・競合分析担当が好む理由。

モバイル/デスクトップ

自前のiOS・Androidアプリがあり、WebもPWAとしてよくできている。外部クライアント(Reeder、Fluent Readerなど)とも互換。デスクトップはWebが基本だがElectronベースのアプリもある。

弱点

UIが少し複雑。無料ユーザーには広告がやや気になる。Pro価格が他オプションと比べてやや高め — 年間およそ100ドル。しかし真のヘビーユーザーにはその価値がある。


6. Feedbin — クラシックな有料

Feedbinは2013年にBen UboisがつくったWebベースの有料RSSサービスだ。価格は月5ドルまたは年50ドルとシンプル。無料ティアはなく、30日間の無料トライアルのみ。

なぜ人々はFeedbinを好むか

ミニマリズム。広告は一切なく、アルゴリズムもなく、AIもない。ただ綺麗なRSSリーダー。ニュースレター受信機能(Inoreaderのようにメールアドレスを付与)、Twitter/X・YouTubeのRSS化、自前のモバイルアプリ(iOS)を提供。外部クライアント(Reeder、NetNewsWire、よく作られたサードパーティ)との互換性が非常に良い — Feedbin APIは事実上、RSSリーダー同期の標準の一つになった。

技術的信頼性

10年以上ほぼ一人で運営しているのに安定している。ダウンタイムがほとんどなく、データバックアップやメールダイジェストなど地味な機能がよく作り込まれている。「独立開発者がつくる信頼できるSaaS」の手本。

弱点

価格がやや高め — 無料オプションが多い時代に月5ドルはライトユーザーには負担になりうる。キーワードモニタリングやルールのようなプロ機能はない、あるいは弱い。UIがあまりにシンプルで最初は「機能不足に見える」が、それが魅力点。


7. Feedly (Leo AI) — かつての強者

Feedlyは2008年に出発し、2013年のGoogle Reader終了後にユーザーが急増して事実上の市場1位となった。2026年時点でFeedlyはもう「個人用最高のRSSリーダー」ではないが、依然として巨大なユーザーベースを持ち、 Leo AI というAIキュレーションを武器にエンタープライズ市場へピボットしている。

無料/有料/エンタープライズ

無料は100ソースまで。Proが月6ドルまたは年60ドル。Pro+が月12ドルでLeo AIなどのAI機能を追加。Enterpriseティアは価格非公開、脅威インテリジェンス(Threat Intelligence)市場に特化 — Feedlyの売上のコアはこちら。

Leo AI

自然言語ルールでフィードを絞り込むAI。例えば「この会社関連のニュースだけ見せて」「M&A関連だけ」「PoCコードが公開されたCVEだけ」のような自然言語指示でシグナルを抽出する。Pro+以上で動作。

弱点

無料/Proユーザーは次第に優先度が下がっている印象。UIが重く、モバイルアプリには広告があり、「RSSだけきれいに見たい」というユーザーにはもはや第一候補ではない。しかしセキュリティ・インテリジェンスチームにとってはLeoが十分魅力的。


8. Miniflux — Goでセルフホスト

MinifluxはFrédéric Guillotが2014年からGoで作るセルフホスト型RSSリーダーだ。2026年5月現在2.x安定版。ライセンスはApache-2.0。真のミニマルの定義。

設計哲学

機能を意図的に絞る。広告なし、推薦なし、キーワード通知なし。RSSリーダーの本質だけをやる。UIはテキスト中心のミニマル設計。モバイルでもPWAとしてよく動く。

技術スタック

シングルバイナリのGoアプリケーション。バックエンドはPostgreSQL。Docker1行で立ち上げ可能。メモリ100〜200MBでRaspberry Piや小型VPSでも動く。Fever・Google Reader互換APIを提供するのでReeder・NetNewsWireなど外部クライアントとよくつながる。

インストール例

version: "3"
services:
  miniflux:
    image: miniflux/miniflux:latest
    ports:
      - "8080:8080"
    depends_on:
      - db
    environment:
      - DATABASE_URL=postgres://miniflux:secret@db/miniflux?sslmode=disable
      - RUN_MIGRATIONS=1
      - CREATE_ADMIN=1
      - ADMIN_USERNAME=admin
      - ADMIN_PASSWORD=changeme
  db:
    image: postgres:16-alpine
    environment:
      - POSTGRES_USER=miniflux
      - POSTGRES_PASSWORD=secret
    volumes:
      - miniflux-db:/var/lib/postgresql/data
volumes:
  miniflux-db:

弱点

機能が少なすぎると感じる場合がある。ニュースレターを直接受信する機能なし(メールゲートウェイの自前運用が必要)。モバイルプッシュ通知は外部ツール(ntfyなど)との組み合わせが必要。


9. FreshRSS — PHPでセルフホスト

FreshRSSは2013〜2014年にPHPで作られたオープンソースRSSリーダーだ。2026年時点で最も人気のあるPHPベースのセルフホスト型RSS選択肢。AGPL-3.0。

設計哲学

Minifluxより機能が豊富。カテゴリ・タグ・フィルタ・統計・Webhook・OPML import/export・APIマルチプロトコル(Fever、GReader、Google Reader互換)がすべて入っている。UIはやや古めかしいが安定している。

技術スタック

PHP 8.x + SQLite/MySQL/PostgreSQL。共有ホスティングにも入る点が強み — Hostinger・NameCheap・DreamHostなどPHPホスティング環境に慣れた人には非常になじみやすい。Dockerイメージも公式提供。

拡張

拡張(extension)システムがあり、軽いプラグインを挿せる。広告ブロック・ダークモード派生・本文抽出(Mercury Parserバックエンド)などの機能を挿す形。

弱点

PHPベースなのでセキュリティパッチ適用に他より気を遣う場面がある。UIがモバイルでやや窮屈になることがある。モバイルは外部クライアント(Reeder、FluentReaderなど)とGReader APIでつなぐのが定番。


10. Tiny Tiny RSS / NewsBlur — 別のセルフホスト

Tiny Tiny RSS (TT-RSS)

Andrew Dolgovが2005年から作っているPHPベースのセルフホスト型RSS。一時はセルフホスト型RSSの事実上の標準だった。2026年時点ではFreshRSSとMinifluxに大きくシェアを奪われている。ライセンスはGPL。メンテナーの強い意見(特にユーザーサポートのポリシー)が好き嫌いを分ける。それでも安定性・機能の深さは依然として良い。

NewsBlur

Samuel ClayがつくるNewsBlurはSaaS(Web/モバイルアプリ)も運営するが、コードがオープンソース(MIT)なのでセルフホストも可能。セルフホストはDocker Composeでインストール可能。システムがやや重い — MongoDB・Redis・PostgreSQLを全部使う。小型VPSでは少し負担になりうる。

NewsBlurのシグネチャは Intelligence Trainer だ — 好き/嫌いなキーワード・著者・タグを学習させて推薦スコアをつける。AI以前の時代の推薦システムに近いが、よく動く。SaaSは無料(64サイトまで)/年36ドルのPremium。誠実な価格帯。

TT-RSS vs FreshRSS vs Miniflux vs NewsBlur セルフホスト比較

項目MinifluxFreshRSSTT-RSSNewsBlur (self-host)
言語GoPHPPHPPython
DBPostgresSQLite/MySQL/PostgresMySQL/PostgresMongoDB+Redis+Postgres
リソース負荷非常に軽い軽い中程度重い
機能の深さ最小中〜上中〜上中〜上 (Intelligence込み)
モバイルアプリ外部クライアント外部クライアント外部 + 自前自前 (iOS/Android)
外部APIFever, GReaderFever, GReader, Google Reader自前 + Fever自前

小型VPSに軽く入れたい → Miniflux。PHPに慣れていて機能を多少使いたい → FreshRSS。古参のセルフホスターでワークフローが固まっている → TT-RSS。SaaSとセルフホストの両方を持つ道が良い → NewsBlur。


11. Pocket sunset (2025.7) — ユーザー移動の様子

Pocketの正確なスケジュールは、2025年5月22日に新規登録終了、2025年7月8日にサービス完全終了、2025年10月8日にユーザーデータ永久削除だった。MozillaはOPML/CSVエクスポートツールを提供し、「ブックマークURL + 追加メタデータ」の形で受け取れるようにした。

移動の様子 (2025年6〜12月)

非公式な観察だが、大きな流れはこうだった。

  1. Readwise Readerへ: 最大の流れ。有料(月約10ドル)だが強力なハイライト・同期・RSS・メール統合。既存Readwiseユーザーには自然な経路。
  2. Matterへ: デザインが良く無料ティアがあったのでカジュアルユーザーが多く流れた。その後Matterも価格ポリシーを一部変えて少し重くなったが依然人気。
  3. Instapaperへ: 最古の代替。無料ティアがあり、UIが馴染みのある形。ただし停滞期で新機能は少ない。
  4. Karakeep(旧Hoarder)へ: オープンソースセルフホストオプションを求める人々。技術志向ユーザー中心。
  5. Wallabagへ: オープンソース + セルフホスト + SaaSオプションすべてある点が気に入ったユーザー。
  6. RSSへそのまま移行: 一部のユーザーは「あとで読む」という概念自体を捨ててRSSリーダーのスター機能に統合。Reeder/NetNewsWire/Inoreaderの登録が増えた一因。

Pocketの本当の教訓

Mozillaのような企業でも買収したサービスを終了できる。自分のデータの統制権を持ちたいなら オープンソース + セルフホスト + 標準フォーマット の組み合わせが最も安全。次は OPML/CSV/JSONできれいにエクスポートできるSaaS 。最も危険なのは自分のデータを閉じたフォーマットで囲い込むSaaS。


12. Readwise Reader / Matter — あとで読むの新鋭

Readwise Reader

Readwise(2019年出発のハイライト同期サービス)が2022年にローンチしたフルスタックの読書アプリ。2026年時点で「あとで読む」カテゴリーの事実上の最高級オプション。月約10ドル(9.99ドル/月)または年約100ドル(99.99ドル/年)。

機能:RSSリーダー、Webクリッパー、PDFリーダー、EPUBリーダー、YouTubeトランスクリプト、メールニュースレター受信、AIハイライト・要約(Ghostreader)、TTS音声読み上げ、Readwise同期でRoam/Obsidian/Notion/Logseqにハイライトを自動転送。

強みは 総合性 だ — 一つのアプリ内でRSS + あとで読む + 書籍ノートがすべて処理される。弱みは価格とやや重いUI。

Matter

スウェーデン発。2021年スタート。ベータ期は無料、2024年頃に正式有料化。月約8ドルまたは年約60〜70ドル。無料ティアも一部残っている(読書機能は無料、一部の高度機能は有料)。

特徴:TTSの品質が良い(音声が自然との評価が多い)。デザインが綺麗でモバイルが特に滑らか。ニュースレター受信、ハイライト、グラフビュー。RSSも一定範囲対応。

Readwise Reader vs Matter

項目Readwise ReaderMatter
価格(月)約10ドル約8ドル(無料ティアあり)
RSS強力標準
PDF/EPUB強力標準
TTS良い非常に良い
ハイライト同期強力(Roam/Obsidian/Notion等)標準
デザイン機能重視ミニマルで上品
モバイル体験良い非常に良い

知識ノート(Obsidian等)と深く連携しRSS・PDF・YouTubeを一箇所で見たい → Readwise。モバイルで綺麗に読みTTSで聴きながら散歩したい → Matter。


13. Karakeep(旧Hoarder) — オープンソース ブックマーク + 読書

Karakeepは2023年にHoarderという名で出発したオープンソースのブックマーク + あとで読むアプリだ。2025年に商標/ネーミングの問題でKarakeepに改名された。ライセンスはAGPL-3.0。TypeScriptで書かれていてNext.jsベース。

機能

Webページ保存、本文の自動抽出、自動タグ付け(埋め込みベースのクラスタリング)、AI要約(LLM API keyが必要)、全文検索、RSSフィード取り込み。iOS・Androidアプリとブラウザクリッパー拡張がある。

技術スタックとインストール

version: "3"
services:
  karakeep:
    image: ghcr.io/karakeep-app/karakeep:release
    ports:
      - "3000:3000"
    environment:
      - NEXTAUTH_SECRET=changeme
      - NEXTAUTH_URL=http://localhost:3000
      - DATA_DIR=/data
      - OPENAI_API_KEY=$OPENAI_API_KEY
    volumes:
      - karakeep-data:/data
  chrome:
    image: gcr.io/zenika-hub/alpine-chrome:123
    command: --no-sandbox --disable-gpu --remote-debugging-address=0.0.0.0 --remote-debugging-port=9222
  meilisearch:
    image: getmeili/meilisearch:v1.13.3
    environment:
      - MEILI_NO_ANALYTICS=true
      - MEILI_MASTER_KEY=changeme
volumes:
  karakeep-data:

3つのコンテナで構成される — アプリ、ヘッドレスChrome(本文抽出用)、Meilisearch(検索用)。小型VPSでも動く。

Pocketユーザーに魅力的な理由

OPML/CSV importがよく整備されており、Pocketから受け取ったデータをそのまま移せる。AIタグ・要約はLLM API keyさえあれば動くので「ただ集めたブックマーク」が「整理された知識の山」に自動変換される。そしてコードがすべてあるので会社が潰れても自分のデータはそのまま残る。

弱点

インストールは難しくはないが、セルフホストに慣れていないユーザーには負担。マネージドSaaS(公式ホスティングオプションを提供中だが現時点でベータ)が安定すればもっと楽になる。AI機能はLLM API費用をユーザー負担。


14. Omnivore(RIP、2024.10) — 短い栄光

Omnivoreは2023年春に登場したオープンソース(AGPL)のあとで読むアプリだった。iOS・Android・Web・メールニュースレター受信・本文自動抽出・ハイライト・Logseq/Obsidian同期 — Pocketを置き換える最も真剣なオープンソース候補だった。

成長が非常に速かった。GitHub Starが2024年春に1万を超え、セルフホストのガイドが活発に共有された。無料SaaSも運営していたが、インフラ費用がかなりかさんだ。

そして2024年10月、Omnivoreのコアチームが ElevenLabsに合流するという発表と共にSaaSの終了が通知された。ユーザーはデータを受け取って他の場所(主にReadwise Reader、Wallabag、Karakeep)に移さなければならなかった。

Omnivoreが残した教訓

オープンソースであっても会社の意思決定でSaaSは消えうる。ただし、コードとデータエクスポートがよく定義されていれば、ユーザーは少なくとも移行する道がある。Omnivoreの終了は比較的きれいだった — 約2か月の猶予期間、OPML/JSONエクスポート、セルフホストガイド。きれいに閉じられた事例として記録されるだろう。

もう一つの教訓は「オープンソースSaaS」の経済学だ — 無料ユーザーが多くインフラが重いサービスはマネタイズなしには持続不可能。同じ運命を避けるためにKarakeepのような後継者はSaaSマネタイズや後援モデルを最初から組まなければならない。


15. 韓国/日本 — Daum RSS、livedoor Reader 終了の歴史

韓国 — Daum RSSリーダーの短い全盛期

2007〜2008年頃、Daumは「Daum RSSリーダー」というWebベースのRSSサービスを運営していた。ハングルのエンコーディング処理がよく、韓国のブログ・新聞社フィードと深く統合されていた。Hangame・Naverブログ RSSもよく受信し、モバイルページも速かった。

しかしモバイル時代への転換期にトラフィックが落ち、2010年代初頭に静かに終了された。正確な終了日は記録が曖昧だが2013〜2014年頃と推定。韓国のRSSユーザーはその後Google Reader(2013年7月終了)とFeedlyに移り、モバイル時代に韓国産RSSリーダーはもはや登場しなかった。

韓国でRSS文化の決定的な分岐点は2つだ — まず、Daum・Naver・Tistoryが自プラットフォーム内の購読メカニズム(ブログご近所さん、カフェなど)を育てたためRSSの必要性が下がった。次に、2010年代後半にKakaoTalkニュース・Naverニュースのアルゴリズムフィードが一般人の情報消費を吸収した。RSSは開発者/ジャーナリスト/研究者の道具へ狭まった。

興味深いのは2020年代に入って韓国の開発者コミュニティでRSSが再び語られ始めたこと。SlowNews・EO・テック日記・Yozm ITのような韓国のIT媒体がRSSを正常に提供し、Outstanding・rsshubのようなツールで韓国サイトのRSSを作って使うケースもある。RSSは韓国でも死なず小さく生き残った。

日本 — livedoor Reader (Live Dwango Reader)

日本ではlivedoor Readerが一時代を築いた。2006年にlivedoorがリリースしたWeb RSSリーダーで、キーボードショートカット中心の速いUIで大いに愛された。「ldr」の愛称で呼ばれ、一時は日本のIT従事者の事実上の標準だった。

2014年にlivedoorがNHNからLINEへ、LINEからDwangoへと移籍するなかで、サービス名がLive Dwango Readerに変わった。その後もしばらく運営されたが、2017年8月31日に終了した。終了発表後、日本のインターネットでは追悼記事が爆発し、後継クローン(Fastladderなど)も登場したが、原本の使い心地には追いつかなかった。

現在の日本ではInoreaderが最も人気だ。UIが日本語によく翻訳されており、キーボードショートカットがldrユーザーに馴染みやすい面がある。Feedly・Feedbinも使われるが、日本のユーザーにはInoreaderが事実上の標準位置。ReederはAppleユーザーに人気。

日韓共通点

両国とも自国RSSリーダーが消え、グローバルサービスに依存する構造になった。ただしセルフホスト文化は日本のほうがやや積極的だ — FreshRSS・Minifluxの日本語ガイドが豊富。韓国はセルフホストよりSaaS(Inoreader、Feedly)やApple生態系ツール(Reeder、NetNewsWire)の使用がより一般的。


16. 誰が何を選ぶべきか — Apple派/セルフホスト派/読む聴く統合派/完全無料派

ここで結論。4タイプで答える。

タイプ1 · Apple生態系派

  • Reeder 5 (買い切り) + Feedbin (月5ドル)またはInoreader 無料/Pro。
  • 新しいデザインが好きなら Reeder (25年モデル) + Feedbinの組み合わせも良い。
  • 真の無料が良いなら NetNewsWire + iCloud同期。
  • あとで読むを別途持ちたいなら Readwise Reader または Matter を追加。

タイプ2 · セルフホスト派

  • 軽さ優先 → Miniflux (Go、シングルバイナリ)。
  • 機能豊富さ優先 → FreshRSS (PHP、拡張あり)。
  • ベテラン・既存ワークフロー維持 → Tiny Tiny RSS
  • SaaSとセルフホスト両方 → NewsBlur
  • モバイルは外部クライアント(Reeder、NetNewsWire、Fluent Reader)とGReader APIで接続。
  • あとで読むは Karakeep または Wallabag

タイプ3 · 読み + 聴き統合派

  • Readwise Reader (月約10ドル) — RSS、PDF、EPUB、YouTube、ニュースレター、TTS、AI要約、Obsidian/Roam連携まで一つのアプリ。
  • Matter (月約8ドル) — モバイル重視、TTS品質が非常に良い、カジュアル読書に良い。
  • 両アプリとも無料トライアルがあるので両方を一か月ずつ試して決めるのもよい。

タイプ4 · 真の無料派

  • NetNewsWire (Apple) + iCloud同期 = 完全無料。
  • 他のOSなら Feedly無料 (100ソースまで)または Inoreader無料 (150ソースまで)。
  • セルフホストのリソースがあれば Miniflux または FreshRSS を自前運用 = 完全無料 + データ統制。
  • あとで読むは Wallabag セルフホストまたは Instapaper無料ティア

プロユーザー(ジャーナリスト、研究者、セキュリティ)

  • Inoreader Pro (月10ドル) + Reeder 5または新Reeder。
  • キーワードモニタリング、ニュースレター受信、ルール自動化、チーム共有をすべて行う。
  • セキュリティインテリジェンスなら Feedly Enterprise + Leo AIを検討。

最終推奨:自分のOPMLファイルを管理せよ

どのサービスを使っても定期的にOPMLエクスポートを受け取って自分のディスクに保管せよ。RSSの最大の強みは、OPML1ファイルで全購読を他のサービスへ移せること。Pocketが消えたように、次に消えるサービスが何かは分からない。自分のデータは自分で持ち運べなければならない。


RSSは死んでいない。ただ「すべての人の道具」ではなく「 自分の情報ダイエットを自分で統制したい人の道具 」へと居場所を移しただけだ。その人の数がアルゴリズム疲労とともに再び増えている。2026年春、RSSの第二の春だ。今回はすべてのツールがより多様で、より堅実だ。

参考 / References