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エラートラッキング & モニタリング 2026 — Sentry / Bugsnag / Honeybadger / GlitchTip / Highlight / LogRocket / Hyperdx 徹底比較

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1. 2026年のエラートラッキング地図 — 商用 / OSS / セッションリプレイ 3 陣営

2026年のエラートラッキングは「Sentry を入れれば終わり」という時代を抜けました。Sentry が事実上のリーダーであることは変わりませんが、その周りに3つの明確なカテゴリが育っています — クラシックな商用ツール、セルフホスト可能なオープンソース、そして「エラーだけでなくその直前60秒のユーザー行動」を見せるセッションリプレイ陣営です。

全体像を整理するとこうなります。

  • 商用エラートラッキング — Sentry (2024年 Codecov 買収、AI 機能拡張)、Bugsnag (2021年 SmartBear 買収、エンタープライズ)、Honeybadger (インディー向き)、Rollbar (ロングテール)、Raygun (古参、.NET / モバイル向き)
  • オープンソースエラートラッキング — GlitchTip (Sentry SDK 互換)、Highlight.io (セッションリプレイ+エラー)、Hyperdx (OpenTelemetry ネイティブ)、Sentry セルフホスト (Business Source License)
  • Elixir/Ruby 特化 — AppSignal (Elixir 第一、Ruby/Node/Python も対応)
  • ログ + エラー + ステータスページの束 — BetterStack (Better Uptime + Logtail を統合)
  • セッションリプレイ第一 — LogRocket (プロダクト分析 + エラー)、FullStory (UX 分析の代表)、OpenReplay (オープンソース)
  • APM 統合型 — Datadog Error Tracking、New Relic Errors Inbox
  • 標準 — OpenTelemetry Logs/Errors シグナル、W3C trace context

2026年のキーになる変化は3つ。第一に、Sentry が2024年に Codecov を買収したことで「エラー → 影響を受けたコード → 影響を受けた PR → 誰の変更か」のフローが一社内で完結するようになりました。第二に、OpenTelemetry の Logs シグナルが GA から2年目に入り、ベンダーロックインなくエラーを送る道が実用的になりました。第三に、AI グルーピング / AI トリアージが Sentry、Datadog、Bugsnag すべてで標準機能になりました。

この記事は上記のツールを2026年5月時点で機能 / 価格 / セルフホスト可否 / データレジデンシーの観点から駆け足で見ていくガイドです。


2. Sentry — リーダー、Codecov 買収 (2024)、AI 機能

Sentry は2008年に David Cramer が作ったオープンソースエラートラッカーから出発し、いまやエラートラッキングの事実上の標準です。2024年最大の出来事は Codecov の買収でした — コードカバレッジツールの Codecov を取り込むことで、「エラーが起きた行のテストカバレッジ」と「エラーを引き起こした変更の PR 番号」を一画面で見せる構図が完成しました。

2026年5月時点で Sentry がカバーする領域はこうです。

  • Error Monitoring — JS/Node/Python/Ruby/Go/Java/.NET/モバイルほぼ全ランタイム対応
  • Performance Monitoring — トランザクション / 分散トレース
  • Session Replay — エラー直前 N 秒の DOM 再生 (マスキング可)
  • Profiling — CPU プロファイリング (Continuous Profiling に拡張)
  • Cron Monitoring — スケジュールジョブが回らないとアラート
  • Crons / Uptime — 外部エンドポイントヘルスチェック
  • User Feedback — エラーページでユーザーコメントを受け付け
  • Sentry AI — 自動エラーグルーピング、根本原因推定、Autofix PR 提案
  • Codecov 連携 — 影響行のカバレッジ表示

JavaScript クライアントの基本セットアップはこんな感じです。

import * as Sentry from '@sentry/nextjs'

Sentry.init({
  dsn: process.env.NEXT_PUBLIC_SENTRY_DSN,
  release: process.env.SENTRY_RELEASE,
  environment: process.env.NODE_ENV,
  tracesSampleRate: 0.1,
  replaysSessionSampleRate: 0.0,
  replaysOnErrorSampleRate: 1.0,
  integrations: [
    Sentry.replayIntegration({
      maskAllText: true,
      blockAllMedia: true,
    }),
  ],
})

コアになるパターンをいくつか。

  • リリーストラッキング — release フィールドに git SHA かセマンティックバージョン、ソースマップをアップロード
  • 環境分離 — environment: 'production' | 'staging' | 'development'
  • サンプリング — tracesSampleRate でコスト制御 (0.1 = 10%)
  • リプレイ — 平常時は0%、エラーセッションだけ100%
  • PII マスキング — maskAllTextbeforeSend フックでトークン削除

価格は2026年5月時点で Team プラン月 26から、Business26 から、Business 月 80 から。セルフホストも可能ですが、2024年から Sentry 本体は Business Source License (BSL) に移行しました — ホスティングサービスとして再販はできませんが、社内利用は無料です。


3. Bugsnag (SmartBear) — エンタープライズ

Bugsnag は2013年に作られたエラートラッカーで、2021年に SmartBear が買収しました。SmartBear は BitBar / Cucumber / SoapUI / TestComplete といった QA ツールチェーンを持つ会社で、買収後の Bugsnag はエンタープライズ / コンプライアンス / SDLC 統合の方向にさらに振れました。

Bugsnag の差別化ポイント。

  • Application Stability Score — 「エラーなく終わったセッションの割合」をトップに表示。SLO 管理に自然
  • Release Stages — staging / production の分離が一級
  • Error Inbox のワークフロー — Open / Snoozed / Fixed / Ignored のステートマシン
  • モバイル第一 — iOS / Android / Unity / React Native / Flutter すべて最上位
  • データレジデンシー — EU / US ホスト選択可 (GDPR / コンプライアンス用)
  • SAML SSO、SCIM、監査ログが標準

Bugsnag の日本 / 韓国市場シェアは Sentry より小さいですが、グローバルエンタープライズ (特にモバイルゲーム / フィンテック) ではいまも第一候補です。

価格は非公開 — セールス問い合わせベース。一般にシート単価と従量課金のミックスです。

JavaScript クライアントのセットアップは Sentry とほぼ同型。

import Bugsnag from '@bugsnag/js'
import BugsnagPluginReact from '@bugsnag/plugin-react'

Bugsnag.start({
  apiKey: process.env.NEXT_PUBLIC_BUGSNAG_KEY,
  appVersion: process.env.APP_VERSION,
  releaseStage: process.env.NODE_ENV,
  enabledReleaseStages: ['production', 'staging'],
  plugins: [new BugsnagPluginReact()],
})

4. Honeybadger — インディー向き

Honeybadger は2012年に Ben Curtis / Joshua Wood / Starr Horne の3人で始めたブートストラップ会社です。VC 資本なしで運営され、「インディーハッカー / Rails コミュニティの友達」のポジションを保ち続けています。

特徴を整理するとこうなります。

  • エラートラッキング + Uptime Monitoring + Check-ins (cron 監視) + Insights (ロギング) を1プランに
  • Ruby on Rails / Django / Laravel / Phoenix といったフルスタックフレームワークに強い
  • 1人開発者の無料プラン — 個人サイドプロジェクトに最適
  • 価格が単純で公開 — Solo 26/monthSmallTeam26/month、Small Team 79/month、Production $199/month
  • インディー / ブートストラップ / 小規模 SaaS の第一候補
  • データレジデンシーは US 中心

Honeybadger の魅力は「チームが小さくても、決済が単純でも、コンプライアンスが軽くても気軽に使える」点です。Sentry の機能幅が重い、Bugsnag のセールスサイクルが重い、と感じる1人 / 小規模チームの選択肢です。

Ruby のセットアップは1行に近いです。

# Gemfile
gem "honeybadger"

# config/honeybadger.yml
api_key: 'xxx'
env: <%= Rails.env %>

5. Rollbar — ロングテール

Rollbar は2012年に作られ、Sentry とほぼ同時期にスタートしたエラートラッカーです。かつては Sentry と二強でしたが、2020年代に入って機能幅 / コミュニティ / 価格競争で押されてシェアが縮みました。2026年も生きていますが「ロングテール」のポジションです。

Rollbar のいまも残る強み。

  • RQL (Rollbar Query Language) — SQL ライクなクエリでエラーデータを直接照会
  • Automation Rules — ルールベースの自動分類 / エスカレーション
  • Telemetry — エラー直前のユーザー行動記録 (Sentry の breadcrumb に近い)
  • 安定した SDK — 10年以上のメンテナンス
  • 価格 — Essentials 21/monthAdvanced21/month、Advanced 83/month、Enterprise セールス

既存の Rollbar ユーザーは続けて問題ありませんが、新規導入で Rollbar を最初に検討するケースは減りました。


6. GlitchTip — オープンソース Sentry 互換

GlitchTip は2020年に Burke Software が始めたオープンソースエラートラッカーです。最大の特徴は Sentry の SDK / ワイヤープロトコルと互換であること — つまりクライアントコードで DSN だけ差し替えれば、そのまま GlitchTip に送れます。

GlitchTip が狙う位置は明確です。

  • Sentry が BSL に切り替える前 (そして後も) 「完全なオープンソース (MIT)」でセルフホスト可
  • 小規模企業 / 非営利 / 学校 / セキュリティ要件が厳しい環境向けの「エラートラッキングミニマム」
  • 機能は Sentry のおよそ30% (エラートラッキング / アラート / リリース / ソースマップ) に集中
  • ホスティング SaaS も提供 — $15/month から、「Pay what you can」オプションもあり

Docker Compose 一発でセルフホストできます。

git clone https://gitlab.com/glitchtip/glitchtip-backend.git
cd glitchtip-backend
docker compose up -d

既存の Sentry クライアントの DSN だけ差し替えればそのまま動きます。

import * as Sentry from '@sentry/browser'

Sentry.init({
  // Sentry 本体ではなく GlitchTip ホストへ
  dsn: 'https://yourkey@glitchtip.example.com/1',
})

GlitchTip は Sentry のすべての機能を追いません (特に Performance / Replay / Profiling はなし)。ただ「エラーさえちゃんと拾えればよい、そして自社データセンターで回したい」というニーズには最も軽い答えです。


7. Highlight.io — オープンソース + セッションリプレイ

Highlight.io は2022年に始まったオープンソースの可観測性プラットフォームです。エラートラッキング + セッションリプレイ + ログ + 分散トレースを一画面に束ねるのが特徴。Apache 2.0 ライセンスで、GitHub とセルフホストとの互換性を優先します。

特徴を整理するとこうです。

  • セッションリプレイ — エラー直前 N 分の DOM / コンソール / ネットワーク再生
  • エラートラッキング — Sentry に近いグルーピング / アラート
  • ログ — ClickHouse バックエンド、検索が速い
  • OpenTelemetry 互換 — OTLP でトレースを受け付け
  • ホスティング SaaS + セルフホストの両方提供
  • 価格は単純 — Free 1万セッション/月、それ以上は従量

Highlight が面白い位置は「オープンソースなのに LogRocket 級のセッションリプレイが付く」点です。LogRocket のライセンス / 価格が重いインディー / 小規模チーム / 非営利によい候補です。

import { H } from 'highlight.run'

H.init('YOUR_PROJECT_ID', {
  environment: 'production',
  version: 'commit:abcdefg12345',
  tracingOrigins: true,
  networkRecording: {
    enabled: true,
    recordHeadersAndBody: true,
    urlBlocklist: ['/api/auth/login'],
  },
})

8. AppSignal — Elixir/Ruby 特化

AppSignal はオランダの会社で、2012年に Ruby on Rails の APM としてスタートし、現在は Elixir / Node.js / Python / Ruby を第一級で支援するフルスタック可観測性ツールです。特に Elixir コミュニティでは事実上の標準です。

特徴。

  • APM + エラー + ログ + ホストメトリクス + アラートをすべて1プランに
  • Elixir / Phoenix / LiveView 第一級 — ライブラリは Elixir チームが直接書いている
  • Ruby on Rails / Sidekiq / Hanami も第一級
  • 価格が単純 — 月250万リクエストで $19/month から
  • データレジデンシー — EU (オランダ) ホスト選択可 (GDPR フレンドリー)
  • Apdex / ホストモニタリングといったクラシック APM 機能が充実

AppSignal は「Elixir / Rails 系のダイナミック言語を使い、単一ツールで APM + エラーを片付けたい」ユーザーに最適です。JS / Java / Go がメインのチームには合いません。

Elixir のセットアップ。

# mix.exs
defp deps do
  [
    {:appsignal_phoenix, "~> 2.4"}
  ]
end

9. BetterStack — ログ + エラー + ステータスページ

BetterStack はスロバキアの会社で、Better Uptime (2021) と Logtail (2022) を統合した可観測性プラットフォームです。2026年現在は Uptime / Logs / Telemetry (メトリクス+トレース) / Incidents / Status Pages を1つの SaaS に束ねています。

特徴。

  • 価格が単純 — Uptime Free + Logs $25/month から
  • ClickHouse バックエンド — 1秒粒度のログ検索
  • Status Pages が第一級 — インシデント発生時に自動公開可
  • インシデント管理 — オンコール / エスカレーション / ルール
  • OpenTelemetry 互換 — OTLP ログ取り込み
  • Slack / Discord / Microsoft Teams アラートが第一級

BetterStack の差別化は「1社で Uptime + Logs + Status Page まで束ねる」点。小規模 SaaS / インディー / スタートアップが PagerDuty + Datadog + statuspage.io といった3つを糊で貼らずに1か所で始めるよい候補です。

エラートラッキングの「専用ツール」ではないですが、ログベースでエラーを検知 / アラートするワークフローは十分に組めます。Sentry の領域と部分的に重なります。


10. LogRocket / FullStory / OpenReplay — セッションリプレイ

セッションリプレイは「エラーが出たときその直前 N 分のユーザー画面 / クリック / ネットワーク / コンソール」を動画のように再生してくれる機能です。クラシックな「バグが再現しない」問題を解きます。2026年の3強は LogRocket、FullStory、OpenReplay です。

LogRocket — 2016年スタート、最も有名なセッションリプレイツール

  • エラートラッキング + セッションリプレイ + プロダクト分析 (ファネル / リテンション) を統合
  • React / Vue / Angular SDK すべて第一級
  • Galileo AI — セッション自動要約、「ユーザーがどこで詰まったか」を自動検知
  • 価格はセールス問い合わせ、一般にはセッション単位の従量
  • データレジデンシー — US / EU 選択可

FullStory — UX 分析の代表

  • クリックマップ / ヒートマップ / フラストレーション行動 (rage click、dead click) を自動検知
  • プロダクト分析 / マーケティング分析の側面が強い
  • エラートラッキングは補助的 — 別ツールと組み合わせるのが一般的
  • エンタープライズ価格、セールスサイクル

OpenReplay — オープンソースのセッションリプレイ (Elastic License)

  • セルフホスト第一候補 — Kubernetes Helm chart 提供
  • エラートラッキング + セッションリプレイ + バックエンドトレースを統合
  • ホスティング SaaS もあり — 1000セッション/月無料
  • PII マスキング第一級 — クライアントでマスキングしてから送信

セッションリプレイは PII / GDPR 問題が常に伴います。入力値 / クレジットカード番号 / トークンをクライアントでマスクしてから送るのが標準です。

// LogRocket 例
import LogRocket from 'logrocket'

LogRocket.init('your/app-id', {
  network: {
    requestSanitizer: (request) => {
      if (request.url.includes('/api/auth')) return null
      delete request.headers['Authorization']
      return request
    },
  },
  dom: {
    inputSanitizer: true,
    textSanitizer: false,
  },
})

11. Hyperdx — OpenTelemetry ネイティブのオープンソース

Hyperdx は2023年に始まったオープンソースの可観測性プラットフォームです。最大の特徴は OpenTelemetry ネイティブ — つまり OTLP が第一級の入力で、ClickHouse がバックエンドです。2024年に ClickHouse が Hyperdx を買収したことで、現在は ClickHouse Observability の1コンポーネントとして位置付けられています。

特徴。

  • OpenTelemetry / OTLP 第一級 — 専用 SDK なしで OTel SDK だけで使える
  • ClickHouse バックエンド — ペタバイト規模も検索可能
  • ログ + トレース + メトリクス + セッションリプレイ + RUM を一画面
  • Apache 2.0 オープンソース — セルフホスト自由
  • ホスティング SaaS もあり
  • 価格 (SaaS) — データ量ベース、ユーザー数無制限

Hyperdx の位置は明確です。「ベンダーロックインなしで OpenTelemetry 標準の上にセルフホストしたい、なおかつ Sentry のような UX もほしい」チームです。ClickHouse 買収後、「ClickHouse + Hyperdx + OTel」スタックは Datadog / New Relic の強力な代替になっています。

// OpenTelemetry SDK の設定だけで Hyperdx に自動送信
import { NodeSDK } from '@opentelemetry/sdk-node'
import { OTLPTraceExporter } from '@opentelemetry/exporter-trace-otlp-http'

const sdk = new NodeSDK({
  traceExporter: new OTLPTraceExporter({
    url: 'https://in-otel.hyperdx.io/v1/traces',
    headers: {
      authorization: process.env.HYPERDX_API_KEY,
    },
  }),
})

sdk.start()

12. Datadog / New Relic — APM との統合

Datadog Error Tracking と New Relic Errors Inbox は「APM に組み込まれたエラートラッキング」です。別ツールではなく APM の1タブとしての位置付け。

Datadog Error Tracking の特徴。

  • APM トランザクションと同じ trace_id で自動連携
  • RUM (Real User Monitoring) のセッションリプレイとも自動連携
  • Watchdog AI — 異常なエラー急増の自動検知
  • 価格 — APM ホスト単価 $31/month + Error Tracking 別課金
  • 全言語 / ランタイム第一級 SDK

New Relic Errors Inbox の特徴。

  • 2024年に価格モデルを単純化 — ユーザー単価 + データ量ベース
  • APM + Browser + Mobile + Synthetic のエラーを一画面
  • Codestream 連携 — IDE から直接エラーを参照
  • 無料プラン — 月100GB、ユーザー1名無料

「すでに Datadog / New Relic を APM として使っている」チームは、Sentry を別途導入する前にこの機能を有効化するのが合理的です。追加ツールなしで APM + エラーを一画面で解けます。


13. OpenTelemetry Logs/Errors シグナルの成熟

OpenTelemetry は2019年に OpenTracing と OpenCensus が統合してできた可観測性標準です。最初は Traces のみ GA でしたが — Metrics が2023年、Logs が2024年に順次 GA になりました。2026年時点では「OpenTelemetry でログ + トレース + メトリクス + エラーを1つの SDK で送り、バックエンドだけ差し替える」シナリオが実用的です。

OpenTelemetry でエラーを送る標準形はこうです。

  • Span 状態を ERROR に設定 (span.setStatus({ code: SpanStatusCode.ERROR }))
  • Exception を Span のイベントとして記録 (span.recordException(err))
  • または Logs シグナルで別途送信して trace_id で連携
import { trace, SpanStatusCode } from '@opentelemetry/api'

const tracer = trace.getTracer('my-app')

async function fetchUser(id: string) {
  return tracer.startActiveSpan('fetchUser', async (span) => {
    try {
      const user = await db.user.findUnique({ where: { id } })
      span.end()
      return user
    } catch (err) {
      span.recordException(err)
      span.setStatus({ code: SpanStatusCode.ERROR, message: err.message })
      span.end()
      throw err
    }
  })
}

こうして作られたエラーは OTLP でどこにでも送れます — Sentry (OTLP 入力ベータ)、Datadog、New Relic、Hyperdx、Grafana、または自社バックエンド。これが2026年の「エラーは標準、ベンダーは交換可能」シナリオの基盤です。

ただ実際にはすべてのベンダーが OTLP を第一級で受けるわけではありません。Sentry / Datadog / New Relic はいずれも自社 SDK のほうが機能が多く (自動コンテキスト / 自動グルーピング / 自動 PII マスキング)、OTLP 経路はそれよりミニマムです。「ベンダーロックイン」と「最大機能」のトレードオフがあります。


14. 韓国 / 日本 — トス、カカオ、メルカリ、LINE、freee

韓国 / 日本の大規模企業が実際にどんなエラートラッカーを使っているかを見ると、グローバルトレンドと近いながらも地域色があります。

韓国の事例

  • トス (Toss) — Sentry 利用を公開。エンジニアリングブログ / カンファレンスで Sentry 活用事例に言及。モバイル / Web 両方
  • カカオ (Kakao) — 自社ツール + Sentry の併用。一部サービスは自社エラートラッカー、一部は Sentry。大規模サービスのコスト / データレジデンシー要件で自社比率が大きい
  • ネイバー (Naver) — 社内自社ツールが大きい。一部子会社 / 新規プロジェクトでは Sentry
  • ウアハン兄弟 (出前のミン) — Sentry 利用を公開。バックエンド / フロントエンド両方
  • 当根 (Daangn) — Sentry 利用を公開
  • LINE Plus (LINE Korea) — LINE 本体と同じ自社ツール
  • 11st / Coupang — Datadog / New Relic 統合型の利用比率が大きい

日本の事例

  • メルカリ — Sentry 利用を公開。モバイル (iOS / Android) 第一級
  • LINE — 社内自社ツール (LINE Observability) が中心。一部子会社は Datadog
  • freee (会計 SaaS) — Sentry 利用を公開。Bugsnag も一部で使用
  • サイバーエージェント (CyberAgent) — Sentry + Datadog の併用
  • pixiv — Sentry 利用を公開
  • 楽天 (Rakuten) — 自社ツール + Sentry の併用
  • DeNA / GREE — 自社ツール比率が大きい

共通パターンが見えます。ユーザーデータ量が一定規模を超える (月数億イベント以上) と、自社ツール / セルフホストを再検討します。コストもさることながら、韓国の個人情報保護法、日本の個人情報保護法のデータレジデンシー要件が大きいのです。だから小規模企業は Sentry SaaS、大規模企業は Sentry セルフホスト or 自社ツールに割れる形がよく見られます。


15. 誰が何を選ぶべきか — 1人 / スタートアップ / エンタープライズ / セルフホスト

最後にシナリオ別の推奨を整理します。

1人 / インディー / サイドプロジェクト

  • Sentry Developer (無料) または Honeybadger Solo $26/month
  • BetterStack で Uptime + ステータスページ (無料スタート)
  • セルフホストの負担を取れるなら GlitchTip のホスティング SaaS

小規模スタートアップ (10名以下)

  • Sentry Team $26/month — ほぼあらゆるシナリオの第一候補
  • または Honeybadger Small Team $79/month (Rails / Phoenix メインなら)
  • セッションリプレイが重要なら + Highlight.io または LogRocket
  • すでに Datadog を使うなら Datadog Error Tracking を活用

成長期スタートアップ (10〜100名)

  • Sentry Business $80/month — Replay / Profiling / ユーザー無制限
  • または Bugsnag — モバイルゲーム / フィンテックのコンプライアンス中心
  • BetterStack — Uptime + Status Page + Incidents の束
  • OpenTelemetry SDK で送り、バックエンドは Sentry / Datadog のような複線運用

エンタープライズ (100名以上、コンプライアンス重要)

  • Sentry Enterprise — SAML / SCIM / データレジデンシー / 監査
  • または Bugsnag (SmartBear) — SAML / SCIM / SOC 2 / GDPR / HIPAA
  • または Datadog / New Relic — APM の一部として
  • データが大きければ Sentry セルフホスト or 自社ツール

セルフホスト / データ主権

  • ミニマム — GlitchTip (MIT)
  • フルスタック — Highlight.io または Hyperdx (どちらも Apache 2.0)
  • Sentry 本体セルフホスト (BSL) — 社内利用は無料
  • OpenTelemetry + ClickHouse + Hyperdx — ベンダーロックイン最小化

言語 / ランタイム別第一候補

  • JavaScript / TypeScript — Sentry、Highlight.io、LogRocket
  • Python / Django — Sentry、GlitchTip
  • Ruby / Rails — Sentry、Honeybadger、AppSignal
  • Elixir / Phoenix — AppSignal 第一、Sentry 第二
  • iOS / Android — Sentry、Bugsnag
  • Go — Sentry、Hyperdx (OTel)
  • Java / Spring — Sentry、Datadog APM
  • .NET — Sentry、Raygun

2026年のベストセットアップは「Sentry」か「OpenTelemetry + バックエンド」のどちらかです。Sentry は即時の価値、OpenTelemetry は長期の自由を与えます。小さなチームは Sentry、大きなチームは OTel の上に Sentry / Datadog / Hyperdx を載せる両面戦略が一般的になっています。


16. 参考 / References

Sentry

Bugsnag

Honeybadger

Rollbar

GlitchTip

Highlight.io

AppSignal

Raygun

BetterStack

LogRocket / FullStory / OpenReplay

Hyperdx

Datadog / New Relic

OpenTelemetry

韓国 / 日本のエンジニアリングブログ