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AI 料理 & レシピアプリ 2026 完全ガイド — Whisk (Samsung) · Plant Jammer · Picnic · Allrecipes AI · SideChef · Mealime · 万家のレシピ · 私たちの食卓 · ヘモッナムニョ · クックパッド · 楽天レシピ · DELISH KITCHEN · クラシル 徹底解説

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プロローグ — 2026、台所に AI が入ってきた年

2025年1月、Whirlpool は一行のメールでユーザーを揺らした。"We are sunsetting Yummly on January 16, 2025." 2017年に約 4,500 万 USD で買収したレシピアプリが、わずか7年で実質的に消えた。同じ四半期に Samsung は Bespoke AI Family Hub 冷蔵庫に Whisk(Samsung Food)を深く統合すると発表した。家電メーカーがレシピアプリを閉じる一方で、別の家電メーカーがレシピアプリを大きく育てている。

2026年5月時点、AI 料理アプリ市場の4つの大きな流れ。

  • GLP-1 食事調整の日常化 — Ozempic、Wegovy、Zepbound、Mounjaro の米国ユーザーが 1,500 万人を超え、彼らは高タンパク・少量・低炭水化物の献立を必要とする。
  • マルチモーダル パントリー認識 — カメラで冷蔵庫を映すと一枚の写真から食材 12〜20 種を認識し、その組合せでレシピを推薦するシステムが Whisk・Samsung Family Hub・Google Gemini に入った。
  • 短い動画レシピのグローバル化 — 日本の DELISH KITCHEN・クラシル・macaroni が作り上げた60秒縦動画フォーマットが、米国の TikTok・Instagram Reels に逆輸出された。
  • 食料品との1クリック接続 — 米国の Instacart、韓国の Coupang Rocket Fresh・Marketkurly・SSG.com、日本の楽天西友・Oisix が、レシピ画面からそのまま買い物カゴに食材を入れてくれる。

本稿はその 50+ のツール・プラットフォーム・DB を一度に比較する。


1章 · Yummly 終了が意味するもの — 2017-2024 を振り返る

まず 2024 年末の出来事を押さえたい。Yummly(yummly.com)は 2009 年に立ち上がった、米国最大のレシピ検索 + 推薦アプリ。

  • 2017 年 5 月 — Whirlpool が約 4,500 万 USD で買収。
  • 2018-2022 年 — Whirlpool のスマート家電(JennAir、KitchenAid)に Yummly Guided Cooking を統合。カメラ + 温度計付きの Yummly Smart Thermometer を発売。
  • 2023 年 11 月 — Whirlpool が家電本業への集中を理由に Yummly 事業の縮小を発表。
  • 2024 年 12 月 — Yummly Smart Thermometer 製造終了。
  • 2025 年 1 月 16 日 — Yummly アプリ・ウェブが実質終了。1 億人を超える登録ユーザーに対し「30 日以内にデータをダウンロードしてください」と通知。

家電会社にとって、ソフトウェアを並行事業として運用することがどれほど難しいかを示した事例。同じ時期に Samsung は正反対の道を取った。


2章 · Whisk(Samsung Food) — 家電 + レシピ + 献立の統合

Whisk(whisk.com、現在は Samsung Food)は 2014 年にロンドンで始まった。2019 年に Samsung が買収。

  • レシピインポート — どのウェブサイトのレシピでも一括取り込みし、標準フォーマットに整理。
  • AI 献立(Meal Plan) — 「家族 4 人、うちビーガン 1、低炭水化物 1」のような複雑な制約を受けて、一週間の献立を組む。
  • Bespoke AI Family Hub 統合 — Samsung の 2026 年モデル冷蔵庫は内部カメラで食材を自動認識し、Whisk がそのデータでレシピを推薦。
  • SmartThings + Bixby — "Bixby、昨日買ったナスで作れる韓国料理は?" の一言で音声検索。

2024 年 9 月、Samsung はアプリを "Samsung Food" にブランド統一した。Whisk の名はバックエンドに残るが、ユーザーの入口は Samsung Food になった。


3章 · Plant Jammer — 香り(フレーバー)AI の野心

デンマーク、コペンハーゲン。Plant Jammer(plantjammer.com)は 2017 年にスタート。シェフの Michael Haas が創業。

  • Flavor Pairing AI — ナス + 味噌 + ごまが調和する理由を分子レベルの香りマッチングで説明。
  • Generative Recipe — 「冷蔵庫のキャベツ、豆腐、ライムでビーガン丼を」のような要望に対し、5 分以内に新しいレシピを作る。
  • Sustainability Score — 各レシピの炭素・水フットプリント。

2024 年に IKEA と協業し、IKEA Food のビーガンメニュー開発に Plant Jammer AI が使われた。小さな企業だが、香りデータセットの深さは業界トップ評価。


4章 · SideChef · Mealime · Eat This Much — 米国の献立ビッグ 3

米国の一般家庭の平日夜を支える 3 つのアプリ。

  • SideChef(sidechef.com) — 2014 年、サンフランシスコ。Guided Cooking が強み。各ステップで写真・動画・タイマーが自動表示される。Bosch、Hestan と家電パートナーシップ。
  • Mealime(mealime.com) — 2014 年、カナダ。4 人家族の 1 週間の献立を 5 分以内に組むミニマル UX。2026 年時点で累計 1,200 万 + 評価 4.8。
  • Eat This Much(eatthismuch.com) — 2013 年。カロリー・マクロの目標を入力すると自動で献立を作成。ボディビル・ランニングコミュニティで人気。

3 つとも食料品連携あり。SideChef は Walmart、Mealime は Instacart、Eat This Much は Amazon Fresh。


5章 · Picnic · HappyForks · Paprika 3 — 献立とレシピマネージャ

  • Picnic(picnicapp.io — ヘルスケア企業 Picnic Health とは別) — 2019 年、米国。献立 + 食材調達 + 栄養分析を一画面に。
  • HappyForks(happyforks.com) — ポーランド。ダイエット献立マネージャ。マクロ・カロリー・ビタミンを計算。
  • Paprika Recipe Manager 3(paprikaapp.com) — 2010 年に出た定番レシピマネージャの 3 世代目。Web クリッパー・献立カレンダー・買い物リストが強み。iOS・macOS・Windows・Android 全プラットフォーム対応。
  • Forks Over Knives(forksoverknives.com) — 2011 年のドキュメンタリーから生まれたプラントベース運動のアプリ。WFPB(全食物プラントベース)レシピ 1,500+ 件。

Paprika 3 は 2026 年でも 1 回購入モデル(約 5 USD)を維持しており、サブスク疲労を訴えるユーザーに愛されている。


6章 · 万家のレシピ — 韓国レシピ市場の絶対王者

万家のレシピ(マンガエレシピ)(10000recipe.com)は 2009 年スタート。累計登録レシピ 100 万件、MAU 700 万 + の韓国 1 位レシピアプリ。

  • 2018 年 — フィンテックの Bezant Foundation が約 100 億ウォンで買収したが、合併紛争で騒動に。
  • 2022 年 — Coupang が事実上の運営権を確保。Rocket Fresh の買い物カゴがレシピ内から直接つながる。
  • 2024 年 — AI 推薦モジュール「今日の食卓」をリリース。過去の検索・お気に入り・購入データから平日夜のメニューを毎日違う形で推薦。
  • 2025 年 — GPT ベースの「冷蔵庫整理」機能ベータ。一枚の写真から食材を認識しレシピを自動生成。

海外韓国料理コミュニティでも検索量 1 位。英語版はないが、Google 翻訳統合で外国人ユーザーが増えた。


7章 · 白種元のレシピ · 私たちの食卓 · ヘモッナムニョ — 韓国インフルエンサー + キュレーション

万家のレシピが百科事典なら、他の韓国アプリはキュレーション + インフルエンサー路線。

  • 白種元のレシピ(ペク・ジョンウォン)(YouTube チャンネル "백종원의 요리비책" + 同名アプリ) — 2018 年に YouTube で始まる。2026 年現在の登録者数 700 万 +。アプリは動画のレシピをテキスト・材料・動画でまとめる。
  • 私たちの食卓(Wtable)(wtable.co.kr) — 2018 年、Marketkurly(マーケットコーリー)子会社として始動。「健康な一食」コンセプト。Kurly の生鮮品買い物カゴと直結。
  • ヘモッナムニョ(Haemukja)(haemukja.com) — 2014 年。「一人暮らしでも作れる」コンセプト。1 人前分量レシピが強み。
  • Yoributankk(yoributankk.com) — 粉食・中華・日本食のようなカテゴリ別レシピライブラリ。
  • Jachisaengcoding — 2021 年スタートの一人暮らし向け YouTube + ブログ。「月 5 万ウォン食費」チャレンジで知られる。

韓国市場では、動画・SNS・アプリが分かれず一体として動く。


8章 · 韓国食料品 + レシピ統合 — Coupang · Marketkurly · SSG.com

レシピだけでは収益化が難しい。韓国市場は食料品と直結してこそ生き残る。

  • Coupang Rocket Fresh — 万家のレシピ + Coupang Play のフード系コンテンツと束ねられ、朝 7 時までの注文 → 当日未明に配達。
  • Marketkurly + Wtable — Kurly アプリ内の「今日の食卓」タブが Wtable のキュレーションをそのまま見せる。
  • SSG.com 未明配送 + E-Mart — E-Mart の自社レシピキュレーションが SSG カゴに直接入る。
  • GS Fresh · Lotte Mart 未明配送 — 後発として自社レシピコンテンツを育成中。

2026 年春時点、韓国の未明配送市場は約 12 兆ウォン。レシピアプリはその入口の一つになった。


9章 · クックパッド — 日本料理 SNS の元祖

クックパッド(cookpad.com)は 1997 年、東京で始まった。韓国・米国と違い、日本市場は早くから UGC レシピが爆発した。

  • 2009 年 — 東京証券取引所(現・東証)マザーズに IPO。日本インターネット会社 IPO 黄金期。
  • 2014 年 — グローバル進出を宣言。70+ ヵ国に 30+ 言語版。
  • 2020-2023 年 — コロナ禍で家庭料理が急増し、MAU 7,000 万 + に到達。
  • 2024 年 — グローバル事業を縮小し、日本本国に集中すると宣言。一部国でサービス終了。
  • 2025 年 — AI レシピアシスタント「Cookpad AI」をリリース。GPT-4o ベース。

UGC の強度が圧倒的。同じメニューでも 1,000+ 件のレシピが並び、人気 1 位は事実上の標準になる。


10章 · 楽天レシピ · DELISH KITCHEN · クラシル — 日本ビッグ 3 の競争

クックパッドの一強を崩した 3 つの後発。

  • 楽天レシピ(recipe.rakuten.co.jp) — 2010 年。楽天 ID 統合 + 楽天スーパーポイント。レシピ投稿でポイント還元。
  • DELISH KITCHEN(delishkitchen.tv、every 株式会社) — 2016 年。60 秒縦動画が主力。スーパー店内デジタルサイネージ 1 万 + 店舗に映像配信。
  • クラシル(kurashiru.com、dely 株式会社) — 2016 年。dely は LINE ヤフー子会社。短編動画 + 食材単価 + スーパーチラシ統合が特徴。
  • macaroni(macaro-ni.jp) — 2014 年。マガジンスタイル + 短編動画。
  • タベリー — 献立自動生成 + スーパー価格比較。
  • mineo COOKLET · 無印良品レシピ — 通信・小売ブランドの自社レシピコンテンツ。

DELISH KITCHEN とクラシルがスーパーマーケットの陳列棚 + デジタルサイネージをめぐって正面衝突中。2024-2025 年の間に、日本の食料品店の約半数がどちらかの映像を流している。


11章 · 日本の食料品 + レシピ統合 — イオン · Oisix · Pal System

日本でも食料品連携が肝。

  • イオン ネットスーパー(aeon.com/netsuper) — 日本 1 位の総合スーパー。クラシル・DELISH KITCHEN のレシピの食材を直接買い物カゴへ。
  • Oisix(oisix.com) — 2000 年創業。有機・生鮮の定期購入の強者。「Kit Oisix」 — 20 分以内で作れるミールキットが核。
  • Pal System — 生活協同組合。会員制食材配送。
  • 楽天西友ネットスーパー — 楽天 + ウォルマート日本法人 SEIYU の合弁。楽天 ID で束ねられる。
  • 生協(地域) — 全国の生協連合。会員 1,400 万 +。

米国・韓国が「当日配送」へ向かう一方、日本は「週 1-2 回の定期配送 + ミールキット」がより一般的。生活パターンの違い。


12章 · AI ビジョン + カロリー認識 — Foodvisor · Calorie Mama · MyFitnessPal Snap

一枚の写真から食事を認識し、カロリー・マクロを推定するツール。

  • Foodvisor(foodvisor.io) — フランス。2018 年。一枚の写真 → 食事の種類 + 分量推定。精度が業界上位。
  • Calorie Mama(caloriemama.ai) — 米国。類似コンセプト。
  • MyFitnessPal Snap — 2024 年リリース。既存 MyFitnessPal に画像認識を追加。
  • Lifesum(lifesum.com) — スウェーデン。ダイエット + カロリー。2024 年に写真認識追加。
  • MyNetDiary(mynetdiary.com) — 米国。カロリー・マクロ・糖尿病管理。
  • Cronometer(cronometer.com) — 米国。微量栄養素(ミネラル・ビタミン)まで追跡する精密型。

2024-2025 年の間に画像認識精度が大きく上がった。Foodvisor は 5,000+ 食品カテゴリで平均誤差約 15-20 %。


13章 · GLP-1 時代の献立 — Ozempic ユーザー向けアプリ

2024-2026 年の間に米国の GLP-1(セマグルチド・チルゼパチド)ユーザーが 1,500 万人を超えた。彼らの食事は違う。

  • 高タンパク強化 — 食欲低下で量が減るため、1 g あたりのタンパク質比率が重要。
  • 少量分割 — 一食の量が小さくなり、1 日 5-6 食に分けるパターン。
  • 低刺激 — 胃腸の副作用を抑えるため辛い物・脂っこい物を回避。
  • 水分 + 食物繊維 — 便秘副作用への対応。

この需要に応えたアプリ。

  • Lose It! GLP-1 モード — 2024 年追加。タンパク質 + 少量分割を自動献立化。
  • Noom + Weight Watchers Smart — 両社とも 2024-2025 年に GLP-1 モードを追加。
  • Healthie — 管理栄養士 + 患者連携 SaaS。GLP-1 患者ケース管理モジュール。
  • MealLogger — 管理栄養士が患者の食事を写真でレビュー。
  • Bariastric Buddy — 肥満手術後の食事管理 + GLP-1 食事。

米国食品小売もこれに反応した。Costco のプロテインシェイク棚、Walmart の "GLP-1 Friendly" ラベルがその結果。


14章 · スマートキッチン + 家電統合 — Hestan Cue · Anova · Brava

調理器具そのものがインターネットにつながる流れ。

  • Hestan Cue(hestancue.com) — 2017 年、カリフォルニア。IH + フライパン + アプリ一式。フライパン内のセンサーで温度を自動制御。
  • Anova Precision Oven(anovaculinary.com) — 2020 年。スチーム + 対流を同時に使う家庭用オーブン。アプリで多段プログラム。
  • Brava Smart Oven(brava.com) — 2018 年。赤外線ランプ 6 本で焼く・温める精密オーブン。
  • Drop Connected Cooking + Scales(getdrop.com) — アイルランド。Bluetooth スケール + アプリ。重量をリアルタイム計測し、レシピステップを自動で進める。
  • Thermomix TM6 + Cookidoo(thermomix.com) — ドイツ Vorwerk。万能調理器 + クラウドレシピ。
  • GE Profile + AI(geappliances.com) — 2024 年から GE Profile ラインにカメラ + AI 導入。オーブン内部カメラが食材を自動認識。
  • LG ThinQ Recipe AI — 2025 年に LG が発表。ThinQ アプリに韓国料理レシピ + 自動モード。

価格が下がり、2024-2025 年の間に米国家庭のスマート家電普及率が約 35 % に達した。韓国はさらに速い。


15章 · ワイン + ドリンク AI — Vivino · Hello Vino · Drizly

料理にペアリングするワイン + ドリンクにも AI が入った。

  • Vivino(vivino.com) — 2010 年、コペンハーゲン。一枚の写真でワインラベル認識 + 価格比較 + 評価。累計ユーザー 7,000 万 +。
  • Hello Vino(hellovino.com) — 食事メニューに合うワイン推薦が主軸。
  • Drizly(drizly.com) — 2012 年。2021 年に Uber が 11 億 USD で買収するも、2024 年にサービス終了。米国アルコール配達市場の整理を示すサイン。
  • Total Wine + AI Sommelier — 米国最大の酒類チェーンの自社レコメンダー。
  • CellarTracker(cellartracker.com) — ワインコレクション管理。

レシピアプリに「このメニューに合うワイン」ボタンが付き、Vivino や Hello Vino API に連携するパターンが増えた。


16章 · 音声アシスタントで料理 — Alexa · Google · Siri

手が汚れていると画面に触れない。声が答え。

  • Alexa Cooking Skills — Amazon Echo Show が米国家庭の 30 %+ に普及。「Alexa、次のステップ」の一言で進む。
  • Google Assistant + Recipe Mode — 2024 年の Gemini 統合でより自然になった。「玉ねぎを別の物に変えて」のような即席変更が可能。
  • Apple Siri + Apple Recipe Suggestions (iOS 18+) — 2024 年の iOS 18 で追加。Apple Wallet のレシート + Health のデータと交差参照。
  • Samsung Bixby + Whisk — 韓国で最強の音声 + 家電統合。
  • LINE Clova / 楽天マジック / ソニー系 — 日本は音声アシスタント普及が米国・韓国に比べて遅め。

スマートディスプレイは台所の小さな革命だった。2018 年の Echo Show 登場以降、台所の紙のレシピ本が急速に減った。


17章 · レシピ + 栄養データの公共インフラ

裏で全アプリが依存しているデータ。

  • USDA FoodData Central(fdc.nal.usda.gov) — 米国農務省。30 万 + 食品の栄養情報を公開する DB。無料。
  • Open Food Facts(world.openfoodfacts.org) — 2012 年、フランス。世界の加工食品ラベルをクラウドソーシングする DB。300 万 + 製品。
  • Edamam API(edamam.com) — 商用栄養分析 API。レシピテキストを受けて栄養 + アレルゲンを自動分析。
  • Spoonacular API(spoonacular.com) — 36 万 + レシピ + 86 万 + 食材。商用。
  • 韓国農村振興庁 国家標準食品成分表 — 韓国の韓食栄養公開 DB。
  • 日本食品標準成分表(MEXT 2020 7 訂) — 日本文部科学省。日本食品の栄養標準。

商用アプリが自前で DB を構築するのはコストが大きすぎる。公共 DB が産業基盤。


18章 · アレルギー · 食事制限 · ビーガン — Spokin · Fig · Happy Cow

特定の食事制限を持つユーザーには、一般アプリは危険。

  • Spokin(spokin.com) — 米国。食品アレルギー患者向け。飲食店・食品検索時にアレルゲンを表示。
  • Fig(foodisgood.com) — 米国。ダイエット・セリアック・糖尿など多様な制限を 1 つのアプリに統合。
  • Happy Cow(happycow.net) — 1999 年。世界のビーガン・ベジタリアン飲食店ディレクトリ。累計 18 万 + 店舗登録。
  • Vegan Cuisine Apps — 韓国の「ビーガンハブ」、日本の「Vegewel」のような地域ビーガンディレクトリ。
  • Yuka(yuka.io) — フランス。食品バーコード → 栄養 + 添加物スコア。

アレルギーは誤情報が救急室につながる境界なので、ここはデータの信頼性が他の何より重要。


19章 · ロボットキッチンの可能性 — Moley · Picnic Works · Chef Robotics

物理的なロボットが調理する試み。

  • Moley Robotics(moley.com) — 英国。2015 年デビュー。天井から降りてくるロボットアーム 2 本がシェフの動作を再現。価格 33 万 GBP+ で量産ではなくショールーム製品。
  • Picnic Works(picnicworks.com — 上記の献立 Picnic とは別社) — ピザ自動化ロボット。時間当たり 300 枚。
  • Miso Robotics(misorobotics.com) — Flippy ロボット。ファストフード店のグリル・フライヤー自動化。
  • Chef Robotics — 給食自動化。社員食堂・機内食工場向け。
  • Spyce — MIT 出身の創業。2018-2020 年運営後、Sweetgreen に吸収。

家庭用ロボットはまだ遠い。コスト・スペース・メンテナンスすべてが課題。商業厨房の自動化が先。


20章 · LLM が作る新レシピの限界とリスク

ChatGPT・Claude・Gemini が「材料 5 つでレシピを作って」の要請に答える時代。この時代の落とし穴。

  • 存在しないレシピ — LLM がもっともらしいが検証されていない比率・時間を作る。「鶏胸肉 200 g + 牛乳 1 カップ + ベーキングパウダー小さじ 1」のような非現実な組合せも、もっともらしく答える。
  • 食中毒リスク — 鶏・豚・海産物の調理時間・温度を曖昧に答える可能性。
  • アレルゲン漏れ — 「グルテンフリー」と答えながら、醤油(小麦)を含める例。
  • 単位の混同 — 米国カップ = 240 mL、英国カップ = 280 mL、日本カップ = 200 mL、韓国紙コップ = 180 mL。LLM が混同。
  • 著作権 — 人気シェフのレシピを実質的にコピーする可能性。

対処。

  • 検証済みの出典を優先 — Allrecipes、Cookpad、万家のレシピのようにユーザーレビューが厚い場所を 1 次で。
  • 肉の調理温度はガイドラインを — USDA / 韓国食薬処 / 厚生労働省の推奨値を覚えておく。
  • アレルゲンは人間がもう一度 — LLM の回答をラベルでもう一度確認。

21章 · Allrecipes AI 時代への適応 — 1997 年のレシピサイトが進化する

Allrecipes(allrecipes.com)は 1997 年スタートの米国を代表する UGC レシピサイト。Dotdash Meredith(IAC)傘下。

  • 2024 年 — AI Recipe Wizard リリース。材料・時間・人数を入力すると自動生成。
  • 2025 年 — Dinner Spinner アプリに音声 + 画像認識を追加。
  • 2025 年 — "Pro Cooks" 認証制度を導入。検証済みレシピだけに別ラベル。

米国で検索トラフィックが最大のレシピサイト。SEO の側面では Cookpad・Yummly よりさらに強い。


22章 · 韓国 · 日本の音声 + 動画レシピの進化

言語 + 文化でフォーマットも違う。

  • 韓国 — YouTube + 白種元効果 — 白種元のレシピチャンネルが、韓国家庭レシピ検索の 1 次入口になった。検索量では万家のレシピと同等かそれ以上。
  • 日本 — 短い動画優位 — DELISH KITCHEN・クラシルの動画が、店内デジタルサイネージ・LINE・YouTube Shorts・TikTok に同時配信される。
  • 米国 — TikTok Food Hashtag — "#TikTokRecipe" が 2020-2024 年の間に新しい検索入口になった。Allrecipes・Yummly のトラフィックの一部を奪った。
  • 中国 — 抖音美食(ドウインフード) — 中国本土は抖音 + 小紅書がレシピの主軸チャネル。本稿の日米韓スコープ外だが流れは同じ。

動画はより多く、より短く、より検索可能になっていく。


23章 · 学習資料 + 公式参考資料

  • USDA FoodData Central データセット — fdc.nal.usda.gov
  • 韓国農村振興庁 国家標準食品成分表 — koreanfood.rda.go.kr
  • 日本食品標準成分表(MEXT 2020 7 訂) — mext.go.jp
  • Open Food Facts API — world.openfoodfacts.org/data
  • USDA Safe Minimum Internal Cooking Temperatures — fsis.usda.gov

加えてアレルギー・食事制限の公的資料。

  • FARE(Food Allergy Research + Education) — foodallergy.org
  • Celiac Disease Foundation — celiac.org
  • 日本 消費者庁 アレルギー物質を含む食品の表示 — caa.go.jp
  • 韓国 食品医薬品安全処 アレルギー食品表示 — mfds.go.kr

エピローグ — 台所はもう一度メディアになる

2026 年の台所は 1996 年の台所と違う。

1996 年には「白種元のレシピ」が本で、1997 年に Allrecipes がウェブサイトで出発し、2009 年に万家のレシピが、2010 年に Yummly が、1997 年にクックパッドが同じ時代を生きた。それから 30 年。紙の本 → ウェブサイト → モバイルアプリ → 短い動画 → AI アシスタントへと 4 段階を越えた。

次の段階は何か。3 つの可能性。

  • 冷蔵庫がレシピの 1 次入口になる時代 — Samsung Bespoke AI Family Hub のように家電が直接推薦する流れが拡大。
  • GLP-1 + 精密栄養 + 遺伝子 — 個人単位で栄養・薬物相互作用を考慮した献立が標準になる。
  • ロボット + 自動調理 — 家庭用は遠いが、給食・ファストフード・機内食から自動化が浸透。

レシピアプリは「料理の作り方を教える道具」から「食事と人を媒介するインフラ」に変わった。1997 年のクックパッドがその第一歩なら、2026 年の Samsung Food・万家のレシピ・DELISH KITCHEN はそのインフラの中心にいる。

台所でもう一度、メディアが作られる。


参考資料(References)

  • Whirlpool, Yummly Sunset Announcement, 2024-12 — whirlpool.com
  • Samsung, Samsung Food (Whisk) — samsungfood.com
  • Plant Jammer — plantjammer.com
  • SideChef — sidechef.com
  • Mealime — mealime.com
  • Eat This Much — eatthismuch.com
  • Paprika Recipe Manager 3 — paprikaapp.com
  • Forks Over Knives — forksoverknives.com
  • 万家のレシピ — 10000recipe.com
  • Wtable — wtable.co.kr
  • Haemukja — haemukja.com
  • クックパッド — cookpad.com
  • 楽天レシピ — recipe.rakuten.co.jp
  • DELISH KITCHEN — delishkitchen.tv
  • クラシル — kurashiru.com
  • macaroni — macaro-ni.jp
  • Foodvisor — foodvisor.io
  • MyFitnessPal — myfitnesspal.com
  • Cronometer — cronometer.com
  • Hestan Cue — hestancue.com
  • Anova Precision Oven — anovaculinary.com
  • Brava — brava.com
  • Thermomix Cookidoo — cookidoo.com
  • Drop Kitchen — getdrop.com
  • Vivino — vivino.com
  • Allrecipes — allrecipes.com
  • USDA FoodData Central — fdc.nal.usda.gov
  • Open Food Facts — world.openfoodfacts.org
  • Edamam API — edamam.com
  • Spoonacular API — spoonacular.com
  • Moley Robotics — moley.com
  • Miso Robotics — misorobotics.com
  • Spokin — spokin.com
  • Happy Cow — happycow.net
  • Yuka — yuka.io