- Authors

- Name
- Youngju Kim
- @fjvbn20031
- はじめに
- 本記事が優劣をつけない理由
- 画像でいま実際に争われていること
- 読む価値のある技術レポート11本
- Scaling Rectified Flow Transformers for High-Resolution Image Synthesis
- Visual Autoregressive Modeling: Scalable Image Generation via Next-Scale Prediction
- Emu3: Next-Token Prediction is All You Need
- SANA: Efficient High-Resolution Image Synthesis with Linear Diffusion Transformers
- Janus-Pro: Unified Multimodal Understanding and Generation with Data and Model Scaling
- FLUX.1 Kontext: Flow Matching for In-Context Image Generation and Editing in Latent Space
- Qwen-ImageとQwen-Image-2.0
- Seedream 4.0: Toward Next-generation Multimodal Image Generation
- Z-ImageとMage-Flow
- InternVL3: Exploring Advanced Training and Test-Time Recipes for Open-Source Multimodal Models
- Qwen-Image-Bench: From Generation to Creation in Text-to-Image Evaluation
- 著者が自ら述べている限界
- 実務者は何から読むべきか
- 確認の方法と時点
- 自分で試す
- 参考資料
はじめに
シリーズ第5回は画像です。この領域はレポートの読み方がとりわけ歪みやすい場所です。論文に載るサンプル画像は著者が選んだものであり、オンラインで出回る比較画像もたいていプロンプトが統制されていません。
そこで本記事はサンプルではなく設計を読みます。トークナイザの圧縮比、テキストエンコーダの選択、学習に費やした計算量、何ステップでサンプリングを終えるか。これらの値が、そのモデルを実際に使うときにぶつかる制約を決めます。
論文情報は2026-08-12に原文で直接確認しました。この分野は速く変わるため、最新の状態はご自身で確認してください。
本記事が優劣をつけない理由
画像生成の評価は人の選好実験に大きく依存し、プロンプト集合と評価者構成で結果が動きます。自動指標も狭い軸しか見ません。さらに最近のレポートは自前の評価ベンチマークを併せて出すことが多く、そのベンチマーク上の数値は定義上、著者が定めた基準に合わせた値です。
したがって本記事はどのモデルが優れているとは書きません。各レポートが何を可能にし、その代わりに何を手放したかだけを整理します。
画像でいま実際に争われていること
[画像レポートが争う軸]
トークナイザ : 圧縮比がディテールと学習速度を同時に決める
条件付け : テキストエンコーダに何を使うか
統合 : 生成と理解と編集を一つのモデルに入れるか
ステップ数 : 何回のサンプリングで終えるか
文字 : 画像の中の文字を正確に描けるか
最後の行が最近のレポートで急に大きくなった軸です。スライドやポスター、インフォグラフィックのように文字が要となる成果物を狙い始めたからです。
読む価値のある技術レポート11本
Scaling Rectified Flow Transformers for High-Resolution Image Synthesis
arxiv.org/abs/2403.03206 — 2024-03-05登録。
拡散の代わりに整流フローを使う提案と、知覚的に重要なスケールに重みを置くノイズサンプリング手法を併せて示します。テキストと画像の二様式に別々の重みを持たせ、双方向に情報を流すトランスフォーマー構造が、以後の多くのレポートの出発点になります。検証損失と合成品質が予測可能に連動するというスケーリングの観察も含まれます。
Visual Autoregressive Modeling: Scalable Image Generation via Next-Scale Prediction
arxiv.org/abs/2404.02905 — 2024-04-03登録、v2は2024-06-10。
自己回帰的な画像生成を、ラスタ順の次トークン予測ではなく粗から細への次スケール予測として定義し直します。ImageNet 256でFIDが18.65から1.73へ、ISが80.4から350.2へ変わったと報告します。著者らはLLMで観察される性質を初期的に再現したという表現を用い、結果が初期段階であることを自ら示しています。
Emu3: Next-Token Prediction is All You Need
arxiv.org/abs/2409.18869 — 2024-09-27登録。
画像とテキストと動画をすべて離散トークンにし、次トークン予測だけで扱います。拡散も複数モジュールの組み合わせも使わないという点が主張の核心です。性能の主張としてではなく、マルチモーダル設計を単純化する方向の代表例として読むのが良いでしょう。
SANA: Efficient High-Resolution Image Synthesis with Linear Diffusion Transformers
arxiv.org/abs/2410.10629 — 2024-10-14登録、v3は2024-10-20。
効率を正面の目標に据えたレポートです。従来の8倍ではなく32倍で圧縮する深圧縮オートエンコーダ、拡散トランスフォーマーのアテンションを線形に置き換えた構造、T5の代わりにデコーダ専用LLMをテキストエンコーダに使う選択が核心です。16GBのノートPC向けGPUで1024x1024の画像を1秒未満で生成すると報告します。
Janus-Pro: Unified Multimodal Understanding and Generation with Data and Model Scaling
arxiv.org/abs/2501.17811 — 2025-01-29登録。
学習戦略の最適化とデータ拡大、モデル規模の拡張により、理解と生成を併せて押し上げたという報告です。テキストから画像への生成安定性の改善にも言及します。なおarXivの管理者注記に先行論文との本文重複の表示があるため、先行論文と併せて読むのが正確です。
FLUX.1 Kontext: Flow Matching for In-Context Image Generation and Editing in Latent Space
arxiv.org/abs/2506.15742 — Black Forest Labs、2025-06-17登録、v2は2025-06-24。
生成と編集を一つのフローマッチングモデルにまとめ、系列連結によりテキストと画像の文脈を併せて入れます。著者が名指しする問題は明快です。既存の編集モデルは複数ターンを経るうちに人物や物の一貫性が崩れるという点です。併せて公開されたKontextBenchは画像とプロンプトの対1,026件を五つの課題カテゴリに分けます。
Qwen-ImageとQwen-Image-2.0
arxiv.org/abs/2508.02324 (2025-08-04登録)とarxiv.org/abs/2605.10730 (2026-05-11登録)。
前者のレポートは画像内の文字レンダリングを正面から扱います。収集とフィルタリングと合成をつなぐパイプライン、易しい文字から複雑な文字へ進む段階的学習が核心で、アルファベット系と表語文字系の双方を狙います。後者は最大1Kトークンの指示で、スライドやポスター、インフォグラフィックのような文字中心の成果物を作る方向へ広げます。トークナイザを別に扱うQwen-Image-VAE-2.0(arxiv.org/abs/2605.13565)も同系列です。
Seedream 4.0: Toward Next-generation Multimodal Image Generation
arxiv.org/abs/2509.20427 — Team Seedream、2025-09-24登録、v3は2025-12-10。
テキストから画像、編集、複数画像合成を一つの枠に収めます。画像トークン数を減らすVAEにより1Kから4Kまでのネイティブ解像度に対応し、2K画像を最大1.8秒で作ると報告します。
Z-ImageとMage-Flow
arxiv.org/abs/2511.22699 (2025-11-27登録、v5は2026-07-06)とarxiv.org/abs/2607.19064 (2026-07-21登録、v2は2026-07-22)。
二つのレポートはいずれも規模を拡大する流れに逆らって立ちます。前者は60億パラメータの単一ストリーム拡散トランスフォーマーでH800 GPU時間31.4万を使い、蒸留した変種はVRAM 16GB未満の民生機器で1秒未満の推論が可能だと述べます。後者は40億パラメータで、一段階の拡散エンコーディングを使う軽量トークナイザと整流フロートランスフォーマーを組み合わせ、A100で1024x1024の生成0.59秒、編集1.02秒を報告します。
InternVL3: Exploring Advanced Training and Test-Time Recipes for Open-Source Multimodal Models
arxiv.org/abs/2504.10479 — 2025-04-14登録、v3は2025-04-19。
理解側の項目です。視覚能力と言語能力を事後の整合ではなく最初から一緒に学習するネイティブ・マルチモーダル事前学習を提案します。780億パラメータの変種がMMMUで72.2を報告しており、この値は著者測定です。
Qwen-Image-Bench: From Generation to Creation in Text-to-Image Evaluation
arxiv.org/abs/2605.28091 — 2026-05-27登録、v2は2026-06-25。
評価側の項目であり、本記事で最も長く有効であり続ける項目かもしれません。既存のベンチマークが基礎的な基準にとどまり、実際の創作現場で重要な能力を捉えられていないという問題意識から出発します。1,000のプロンプトを五つの柱と23の下位能力、56のルーブリックへ分解し、一つの不透明なスコアではなく細分化された診断を出します。
著者が自ら述べている限界
- VARの著者らは、LLMの性質を初期的に再現したという表現で、結果が初期段階であることを示しています。
- Janus-ProのarXivページには、先行論文との本文重複に関する管理者注記があります。
- FLUX.1 Kontextが指摘した複数ターンでの一貫性低下は、この系列全体の未解決問題です。
- Qwen-Image-Benchの著者らは、既存ベンチマークが実際の創作実務で重要な能力を捉えられていないと認めています。自前のベンチマークを併せて出すレポートの数値を読むときは、この点を覚えておくべきです。
- 上記の性能記述はすべて著者の自己測定であり、多くは著者自身が作ったベンチマーク上の値です。
実務者は何から読むべきか
原理から押さえたいなら、整流フロートランスフォーマーのレポートが出発点です。最近のレポートの多くはこの構造の変形です。
費用が制約なら、SANAとZ-Image、Mage-Flowをまとめて読んでください。三本とも規模ではなくトークナイザとサンプリング段数に答えを求めています。
編集ワークフローを作るならFLUX.1 Kontextです。複数ターンの一貫性という問題定義そのものが製品設計に直結します。
画像内の文字が重要ならQwen-Image系列です。この軸を明示的に扱ったレポートはまだ多くありません。
評価を組み立てる必要があるなら、Qwen-Image-Benchの分解の仕方を参考にしてください。一つのスコアではなく能力別の診断へ進む方向が実務には合います。
確認の方法と時点
本記事に登場するレポートはすべて、2026-08-12にarXivのアブストラクトページを直接開いて確認しました。開けなかった候補は引用していません。引用した数値はすべて著者報告です。
自分で試す
- ニューラルネットワーク構造エクスプローラー — 拡散トランスフォーマーの変形を追うには、基本ブロックの構造が手に入っている必要があります。
- ML学習データエクスプローラー — 画像生成モデルがどんな形のデータを食べるかを例で確認できます。
シリーズ前回: 音声認識・合成の技術レポート、何を読むか
シリーズ次回: リーダーボードとベンチマークの読み方
参考資料
- Scaling Rectified Flow Transformers for High-Resolution Image Synthesis (arXiv 2403.03206): arxiv.org/abs/2403.03206
- Visual Autoregressive Modeling: Scalable Image Generation via Next-Scale Prediction (arXiv 2404.02905): arxiv.org/abs/2404.02905
- Emu3: Next-Token Prediction is All You Need (arXiv 2409.18869): arxiv.org/abs/2409.18869
- SANA: Efficient High-Resolution Image Synthesis with Linear Diffusion Transformers (arXiv 2410.10629): arxiv.org/abs/2410.10629
- Janus-Pro: Unified Multimodal Understanding and Generation with Data and Model Scaling (arXiv 2501.17811): arxiv.org/abs/2501.17811
- InternVL3: Exploring Advanced Training and Test-Time Recipes for Open-Source Multimodal Models (arXiv 2504.10479): arxiv.org/abs/2504.10479
- FLUX.1 Kontext: Flow Matching for In-Context Image Generation and Editing in Latent Space (arXiv 2506.15742): arxiv.org/abs/2506.15742
- Qwen-Image Technical Report (arXiv 2508.02324): arxiv.org/abs/2508.02324
- Seedream 4.0: Toward Next-generation Multimodal Image Generation (arXiv 2509.20427): arxiv.org/abs/2509.20427
- Z-Image: An Efficient Image Generation Foundation Model with Single-Stream Diffusion Transformer (arXiv 2511.22699): arxiv.org/abs/2511.22699
- Qwen-Image-2.0 Technical Report (arXiv 2605.10730): arxiv.org/abs/2605.10730
- Qwen-Image-VAE-2.0 Technical Report (arXiv 2605.13565): arxiv.org/abs/2605.13565
- Qwen-Image-Bench: From Generation to Creation in Text-to-Image Evaluation (arXiv 2605.28091): arxiv.org/abs/2605.28091
- Mage-Flow: An Efficient Native-Resolution Foundation Model for Image Generation and Editing (arXiv 2607.19064): arxiv.org/abs/2607.19064